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前哨

 

 物語(ゲーム)運命(シナリオ)に添って支配(プログラム)されている。誰もが知っている事実だ。

 けれど、それが己に当てはまるとしたら?

 俺は小説の中の主人公達は凄いと思う。所詮、あらかじめ決められた運命(シナリオ)に添って進んでいく人生だ。それを知らずに、自分の意思だの、世界の命運だの言って、自分が頑張った結果、世界を救っただなんて思っていられるのだからある意味幸せだ。

 一生、幸せな夢だけを見させられて1度も目覚めることのない上にそれが夢だと知ることすらない植物人間な人生と、自分で普通に生きる人生ならどちらが幸せか、なんて哲学問題があるが、俺はどっちでも良いと思う。少なくとも、自分の人生が全て運命(シナリオ)通りに過ぎて行くのだと知っているよりはよっぽど良い。


「レイ!ボーッとしてないで手伝ってよね!」


 仲間のヴィクトリアに呼ばれて俺は我に返る。


「レイモンドは哲学で忙しいんですよね」


「うっせーよセオドア。あとヴィッキー、俺だけに言うな」


 笑顔で嫌みを述べてくれたセオドアは俺の苦情を柳に風と受け流し、ヴィクトリア(ヴィッキー)は半眼になった。この二人は俺の仲間、いわゆる旅の同行者(パーティーメンバー)だ。


「レイはちゃんと腕力があるのにサボるから言ってるのよ」


「腕力ならザンがいるだろ」


「ザンはサボってないでしょ」


「まあまあ、レイもヴィッキーも喋りながらやると舌噛むよ」


 俺達は黙って作業に戻る。アレクサン(ザン)ダーに言われた後にまだ続けていると碌なことにならないのはこれまでの経験で知っているからだ。ちなみに、アレクサンダーは旅の同行者(パーティーメンバー)の中で最も膂力が高く、武道家らしく鍛えられた体をしているが面倒見も頭もよく、ついでに性格も良い。

 俺達が何をしているかと言えば、倒れて道を塞いでいる石柱を片付けているところだ。ただしこの石柱、高さは4間ほどもあり、底面は綺麗な正方形で1辺が成人男性の背丈と同じくらいある。これをどかすのは正直、面倒だ。ちなみに、柱には細かい紋様が刻み込まれていて特殊な術が掛かっているらしく俺の剣でも、アレクサンダーの拳でもひびすら入らなかった。


「セラフィマ、魔法でどうにかなんないのか?」


「やだ!」


「なんのためにいるんだよお前は……」


 元気良く、さも当然のように即答したのは魔法少女セラフィマ。気分で魔法を使うため、やる気がある時とない時とで魔法の精度や威力の差が激しすぎるのが欠点で、親が大商人の我が儘お嬢様。


「セラ様、いかなセラ様でも出来ないときは正直に出来ないと理由を伝えておかなければ、信頼を失いかねませんよ」


「ちょ、バーバチカ!出来ないとか言ってないし!全然違うし!」


「レイモンド。お嬢様でもその石柱は破壊できない。その紋様はおそらく消失大地(ダークグラウンド)に連なる媒介魔法陣だ。攻撃は物理、魔法ともに無効化される」


「バーバチカってば!!」


 セラフィ(セラ)マの世話役、ベスティーリャ・バーバチカ。セラフィマにはとても丁寧かつ笑顔で、他の者には男口調でわりと雑に接する。実は非常に万能で、掃除洗濯値切りといった家事から、情報収集に戦闘、応急手当も出来る、来歴不明、ついでに年齢不詳。まだ若そうなんだが物静かな雰囲気が年齢不詳にしてる。みんなも俺もセラフィマにつられてか、名前でなく、ファミリーネームのバーバチカでしか呼ばない。


「レイ。セラちゃんはまだ小さいんだから苛めないの」


「ちょっとヴィクトリア、子供扱いしないでってば」


「実際ガキだろが」


「なによ、このレモン!!」


「あぁ?うっせーよチビ」


 セラフィマはまだ13歳である。頬を膨らませて睨み付けてくる様子は余計に幼く見えるんだが、それはそれで愛嬌があるので誰も指摘しない。


「レイモンド、煩いのは貴方ですよ。それに、ワタシに言わせればどちらも子どもです」


 そりゃあ28歳の中佐様からすれば子どもだろ。


「それにしても、この柱。全然動かないわね」


「ああ……」


「セオドア、入り口はここ以外にはないんだっけ?」


「ワタシの知る限りここだけですね。……死なずに入れるのは」


 どういう意味だそれ。


「はぁ……めんどくせえ」




はじめまして。

作者の灯橋 恵です。


この作品は、色々と逆行しつつお送りします。

初挑戦の素人ゆえ至らぬことばかりですが、どうぞよろしくお願いいたします。



以下、主人公達による次回予告です。

レイモンド→レイ

ヴィクトリア→ヴィ

アレクサンダー→ザン


『次回予告』


レイ「世界は全て決められた脚本通りに進んでいる。なんて、意味のわかんねえ言い伝えのお陰で俺の村は世間様から浮いてる。一方では教祖のように扱われ、一方では反逆者のように扱われる。村にも世間にもうんざりしていた俺の同じことの繰り返しな生活を終わらせるやつが現れた」

ヴィ「見つけたわ。貴方しかいない。一目で分かったわ。お願い。一緒に来て!」

レイ「...お前は、狂信者か?討伐隊か?」

ヴィ「貴方の言っている事はよく分からないけど、私はどっちでもない。転変の巫術師よ。お願い、一緒に来て、運命を変えて!」

レイ「運命を、変える...」





レイ「めんどくせえ。旅もそうだけどなんで次回予告とか...これ小説だろ。そもそも俺のこの台詞だって作者が決めてんだろが。」

ヴィ「あなた今、全世界を敵に回したわよ...」

ザン「次回、面倒くさがりのレイとお節介で純真なヴィッキーの出会いをお楽しみに!」


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