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エンドリア物語

「ウィル&ムー 銀行に行く」<エンドリア物語外伝15>

作者: あまみつ

 オレは扉を力込めて押した。

 重い樫の扉がゆっくりと開く。

 建物の中はオレ達の未来を暗示するかのように、明るい光が溢れていた。

 大理石の床をオレはゆっくりと歩いた。

 ムーもオレの後についてくる。

 オレ達に気がついた客が争って店を出たが、気にはならなかった。

 いままで色々なことがあった。

 つらく、苦しく、貧乏で、無理難題の山が、いつもオレの肩にのしかかってきた。

 いまも肩は重い。

 でも、その重さが心地よい。

「お客様」

 奥から制服を着た壮年の男性が飛んできた。

「桃海亭のウィル・バーカー様ですよね?」

 オレは笑顔でうなずいた。

「申し訳ありません。当行は紹介のないかたにはご融資しておりません」

 ここは王宮の門を出たところにある銀行、セイヤーズ銀行エンドリア王国ニダウ支店。ルブクス大陸で権威ある老舗の銀行だ。

「融資じゃないんだ」

 首をかしげた男性に、オレが笑顔で言った。

「預金をしたいんだ」

 驚愕としか表現のしようのない顔で、オレをみた。

「桃海亭のウィル・バーカー様ですよね?」

 オレは笑顔で何度もうなずいた。

「お金、あるんですか?」

 失礼な質問だが、金を扱う銀行員としては当然かもしれない。桃海亭の貧乏っぷりはニダウでは有名だ。

 オレは肩の麻袋をおろした。袋の口を開けると燦然と輝く金貨がぎっしりと詰まっている。

「これは………」

 金貨の量に驚いていると、オレは嬉しくなった。

「……本物ですか?」

「本物に決まっているだろ」

 露骨に疑いの目。

「魔法協会エンドリア支部の支部長ガガさんに聞いてみてくれ。昨日、ガガさんから受け取った金貨だ」

 別の行員が扉から出て行った。

 確認に行ったのだろう。

「金貨1500枚ある。これを預金したい」

 昨日の夜、徹夜で何度も数えた。最初の1回でシュデルが離脱。3回数えたところでムーが寝た。オレは金貨が夢になりそうで、怖くて眠れなかった。何度も、何度も数えた。

 朝を迎えて、こうして銀行まで無事にたどり着けた。あとは預金できれば、しばらくは肉が食える。いや、肉だけじゃない、上着も買えるし、欠けた食器も新しくできるし、板より薄い布団も買いなおすことができる。

「このお金はどうされたのですか?」

「ある物を売った代金です」

 疑っている。

 ものすごく、疑っている。

 オレ達が盗みを働くとは思ってはいないだろう。

 疑っているのは、多分。

「錬金術ではないですよね?」

「だから、ガガさんに聞いてくれよ」

「ガガさんがお渡しした本物の金貨を、桃海亭が偽の金貨とすり替えたと可能性があるかもしれません。預金する前に、この金貨が偽物ではないという証明をぜひしていただきたい」

 肉屋のモールが、セイヤーズ銀行は金のない人間を人間として扱わないと言っていたが、これほどまでとは思わなかった。

 後ろにいたムーが、オレの前に出た。

「この金貨の金の含有量は95パーセントしゅ。桃海亭はまじめな古魔法道具店だから金貨は作りらないしゅ。でも、作るとしたら、99,9パーセントの金貨が作れましゅ」

 行員の目がせわしなく動いている。

 そして、オレ達に向かって微笑みかけた。

「失礼しました。ガガ様から金貨を受け取ったということがわかりましたら、預金の手続きにうつらせていただきます」

 1500枚の金貨の4,9パーセントは、笑顔を提供できる金額らしい。

 ガガさんの店はセイヤーズ銀行の数軒先だ。行員はすぐに戻ってきた。

ガガさんも一緒だった。

 丸い身体をゆらしながら、オレ達のところにやってきた。

 顔見知りらしい2人は挨拶の交わした後、本題にはいった。

「金貨1500枚ですが、ルブクス魔法協会本部よりの支払いで間違いありません。昨日、ウィル・バーカーに渡しました」

「それではこれは本物の金貨ですね」

 袋にはいった金貨を指した。

「この袋に入れて渡しました。本物であることは私が保証します」

 ガガさんが断言した。

「わかりました。預金の手続きにはいります」

 笑顔を浮かべていたが、頬が微妙にひきつっていた。

 4,9パーセントを本気で期待していたらしい。

「それではこれは私どもで預かります」

 若い男性の行員が2人、カウンターの奥からやってきて金貨の袋を奥に運ぼうとした。

「待ってくれ、ここで数えてくれ」

「こちらでは他のお客様の邪魔になります」

「誰もいないだろ」

「今はおりませんが、お客様はまた入ってこられます。ここは数えるのによい場所とは言えません。奥の方に外部から入りにくい部屋がございますので、そちらで数えさせていただきます」

「オレも一緒に行く」

 1枚でも数え間違えられたら大変だ。

「一般のお客様の入室はお断りしております」

「それだったら、ガガさんが一緒に入ってくれ」

 ルブクス魔法協会エンドリア支部長という肩書きは、それなりに地位があるはずだ。

 オレの悲痛な声は、ガガさんの心を動かしたらしい。

「よろしいですかな」

「わかりました。こちらにどうぞ」

 4人でカウンターの中に入り、別の部屋に入った。数分ででてきたときには、壮年の行員の手には金貨1500枚と記入された受取証があった。

「確かにお預かりしました。こちらの書類に口座名でサインをお願いします」

「口座名?」

「失礼しました。まだ、口座を開いておりませんでしたね。では、口座を開きますので、こちらの書類に住所と口座にするお名前を書いていただけますか」

 口座開設申込書という紙とペンを渡された。

 住所はすぐに書けた。

「この名前の欄は、桃海亭でいいのかな?」

「ダメです」

「ウィル・バーカーなら」

「ダメです」

「ムー・ペトリ」

「ダメです。先に言っておきますが、シュデル・ルシェ・ロラムもダメです」

「ええと、何ならいいのかな?」

「それはご自分で考えていただかないと」

「考えろと言われても、店名も名前もダメとなると」

 隣にガガさんがいることに気が付いた。

「ガガさんは口座名に何を使うんですか?」

「店の場合は店の名前。個人の場合は名前だな」

 考えた。

 考えたがわからなかった。

「あの」

「はい、何でしょうか?」

「桃海亭が店名で、オレの名前がウィル・バーカーだということは知っていますか?」

「もちろんでございます」

「なぜ、店名も名前もダメなんですか?」

「それは決まっています」

 行員は笑顔で答えてくれた。

「縁起が悪いからです」

「縁起が悪い……桃海亭とウィル・バーカーが?」

「考えてもご覧ください。桃海亭が預金している銀行に、自分の大切なお金を預けたいと思いますか?当行としましては桃海亭という口座名はご遠慮いただきたいのです」

 オレは唖然とした。

「ウィル・バーカーという口座名が当行にできた場合、少々言いにくいのですが、大量に不幸を呼びそうで怖いのです」

 なんだか、泣きたくなってきた。

「わかりました。他の銀行に頼みます。金貨を返してください」

「あの金貨はすでに当銀行の地下金庫に納めさせていただきました。大切にお預かりいたしております」

「ええと、それを返して欲しいのですが」

「ご返却をするには、口座を作りまして、それから、受取書にサインをしていただきまして、引き出す書類にサインをしていただくことになります」

 笑顔全開で、オレを見ている。

「わかりました。ここに口座名を書けばいいのですよね?」

「はい」

「ピーチでいいですか?」

「もちろんでございます。その際、返却のサインは桃からいただくことになりますが」

 桃にペンがもてるかと怒鳴りそうになるのをこらえた。

 名前以外で、オレ達だとわかるもの。

 オレはペンを走らせた。

 【エンドリア王国ニダウ、キケール商店街西15番住人】

「これならどうだ」

 書いた口座開設書をつきつける。

 行員は笑顔で、オレが渡した書類を丸めてゴミ箱に入れた。

「申し訳ありません。口座名は15文字以内でお願いいたします」

 新しい口座申込書が差し出された。

 オレはそれに住所と【キケール西15住人】と書いた。

 15文字以内だ。

「お預かりいたします。すぐに口座をひらきますので」

 口座開設書を後ろの別の行員に渡した。

「受取書にサインするから」

 オレが手を出したのに、渡してくれない。

「あの、受取書を」

「私が存じ上げているところでは、お客様はウィル・バーカー様でいらっしゃいます」

「そうだけど」

「キケール西15住人様ではないのでお渡しできません」

 オレはようやく理解した。

 この行員、金貨を返すつもりがない。

 靴屋のダップがセイヤーズ銀行の行員は拝金主義者で金の為ならなんでもするから気をつけろと言っていたが、まさか、屁理屈で金貨1500枚を善良な若者から巻き上げようとするとは思わなかった。

「支店長、ウィルは本当に貧乏なんだ。金を返してやってくれないか」

 見かねたガガさんが行員に言った。

「ガガ様とはこれからも良い取引をしたいと思っております。もちろんん、魔法協会様とのお付き合いも長く続くことを願っております」

 行員は恭しくガガさんにお辞儀をした。

 ガガさんはオレに向かって首を横に振った。

「ウィル、諦めた方がいい」

「銀行に金を巻き上げられて、黙っていろと言うことですか?」

「今回の金は、棚からぼた餅のようなものだろ。諦められないか?」

 ガガさんが、目で哀願してくる。

 セイヤーズ銀行と関係を悪くしたくないのはわかる。わかるが、オレは金貨1500枚をこんなことで失いたくない。

 そのときだった。聞き慣れた声が、広い銀行内に響きわたった。

「我はムー、我が声にこたえよ、きけーるにしじゅうごじゅうにん」

 数秒が経過した。

 現れたのは、身長約1メートル。長い布で作ったような服を着た直立しており、知的生命体だとひとめでわかる。

「成功しゅ」

「よくやった」

 オレはムーに向かって親指を立てた。逆の手を行員に出す。

「正真正銘のキケール西15住人だ。サインをするから受取書をくれ」

「見たところキケール西15住人様は人間ではないようですが」

 顔と手がモグラのことを言っているようだ。

「名前が【キケール西15住人】なんだから、いいいだろ。人間でないからダメなんて規則があるのか」

「そのような規則はございませんので、どうぞご安心してください。しかし、お客様のその手でペンはもてますでしょうか?」

 いかにも心配そうに行員が言った。

 毛むくじゃらの手から生えた4本の長い爪。密着していてペンはもてそうもない。

「爪にインクをつけて書ければ、問題ないよな?」

「問題ございません。こちらの受取書にルブクス公用文字でキケール西15住人とサインしていただければ結構です」

「ルブクス公用文字でないとダメなのか?」

「当店ではサインはルブクス公用文字のみとなっております」

 召喚獣とムーがなにやら話している。

 ムーがオレに向かって、親指を立てた。

「大丈夫しゅ。呼び出されたから数秒で、この世界の知識の多くを会得したそうしゅ」

「聞いたとおり大丈夫だそうだ。ルブクス公用文字でサインするから、受取書を渡してくれ」

「こちらにサインをお願いします」

 紙だけが差し出される。

「インク、爪につけるインクが見あたらないんですが」

「失礼しました。どうぞ、これを」

 インクが数滴のった小皿が出された。

 ここまでするのかと叫びたいのを我慢した。

「これで出来るか?」

 ムーに聞いてみた。

「頼んでみるしゅ」

 モグラの前に小皿と受取書を出した。

 モグラの爪が器用にインクに触れた。と、見えたが、突き抜けた。

「えっ!」

 小皿の向こう側に爪が突き抜けている。小皿も壊れていないし、爪もそのままだ。

「おや、まるで幽霊のようでございますね」

 行員が心底うれしそうに笑った。

「ムー…」

「ダメしゅね」

 あっさりと言うと召喚獣に礼を言って、元の世界に戻した。

「ウィルしゃん、大丈夫しゅ」

 絶望でうずくまったオレにムーが笑顔で言った。

「ボクしゃんの魔法で、地下金庫までおっきな穴をあけるしゅ」

 笑顔のまま、過激なことを言い出した。

「やめてくれ!」

 ガガさんが止めた。

「なぜしゅ?」

「私が説得してみるから、魔法はやめてくれ」

 必死の顔で支店長にすがりついた。

「支店長、頼むから、返してやってくれ。ムーが魔法を使ったら、私の店まで被害が及ぶ」

「ご安心ください。このセイヤーズ銀行ニダウ支店、魔法ごときではびくともしません。最高の魔法防壁、魔法障壁、魔法結界で守られており、ルブクス大陸最強の魔術師様の魔法でも決して破ることはできません」

「銀行は無事でも、私の店が壊れてしまう」

「その時は桃海亭様にご自身でご請求ください。当銀行の関知するところではございません」

 笑顔の行員からは金貨1枚たりとも返さないという気迫がひしひしと伝わってくる。

 泣きたい気分のオレに半泣きのガガさんが泣きついた。

「ウィル、ムーをとめてくれ」

「とめたら金貨1500枚が戻ってきません」

「私には妻も子供もいるんだ」

 ガガさんには悪いが、金貨1500枚を諦めることなどオレにはできない。

 銀行の扉が開いた。

「いらっしゃいませ」

 金色の髪をした青年が、扉をぬけて歩いてきた。

 行員がすばやく近づいた。

 見るからに高級そうなローブを着た青年は背が高く、整った顔立ちをしていた。

「預金でいらしゃいますか?それともご融資ですか?」

「ムー・ペトリがここにいると聞いてきたのですが」

 オレとムーは彼を知っていた。3日前に会ったばかりだ。

 今回の1500枚の金貨をガガさんは【棚からぼた餅】と表したが、その【ぼた餅】の関係者だ。

「いらっしゃます。ご案内いたします。どうぞ、こちらに」

 見える位置にいるのに、横に並んで歩いてくる。

「お客様は当銀行に口座はお持ちですか?」

「いえ、持っておりません」

「当店はいま新規のお客様に様々なサービスをつけておりまして」

 目で合図すると大量のパンフレットが持ってこられた。青年に渡そうとして、腕に抱えているものに気がついた。

「おお、これは可愛いドラゴンのぬいぐるみですね」

 その次の瞬間、銀行が炎に包まれた。




 3日後、ガガさんが桃海亭にやってきた。

「セイヤーズ銀行の建て直し費用はルブクス魔法協会が出すことになった」

「なぜ、魔法協会なんですか?」

「世の中には理解不能な出来事がたくさんあるんだよ」

 そういったあと、オレをジッと見た。

「ウィル。地下金庫にあった金貨1500枚は無事だった」

「いつ返してくれるんですか!」

「ルブクス魔法協会が桃海亭とセイヤーズ銀行との仲介をした手数料として金貨1500枚をいただくことにした」

「ちょっと、待ってくださいよ。いただくことにした?オレ、仲介を頼んだ記憶もないですし、セイヤーズ銀行が壊れたのはオレ達のせいじゃないですよね?」

「世の中には理解不能な出来事が…」

「銀行が善良な若者から金貨を巻き上げようとして、次は魔法協会がまじめな古魔法道具店から取り上げようとする。ひどすぎやしませんか?」

 はぁとため息をついたガガさん。

「ウィル、私だって心苦しいんだ。君がいつも肉なしのスープで飢えをしのいでいる姿を見ている。服だって私の店で働いていたときのものだ。雪が降っていても暖炉にくべる薪がないことも知っている」

「桃海亭に暖炉がありませんが」

「店は古くて壊れそうで」

「もう何度も壊れています。店の廃材で建て直しているので古く見えるだけです」

「売れる品物もない」

「あります!そりゃ、シュデルのせいで半分、いや半分よりちょっと多く売られるのを拒否して居座っていますけど、普通の古魔法道具も扱っているんですから」

「つまりだ、桃海亭がものすごく貧乏なのはわかっているが、金を取り上げざる得ないんだ」

「だから、何で、オレ達から取り上げるんですか?」

「今回の件を最初から考えてみればわかるだろう?」

「今回の件?」

「桃海亭がどうのようにして金貨1500枚を手にしたか、だ」

 オレ達が銀行に行った日の3日前、ゴールデンドラゴンのポチが金髪青年に化けたドラゴンに連れられて桃海亭に遊びに来た。ムーと楽しく遊んだ後、帰ろうとしたときに歯が1本落ちた。オレはムーが何かしたのかとビビったが、落ちたのは乳歯で、生えかわりで自然に落ちたものだった。いらないというので、オレ達がもらった。ムーがそれをニダウの魔法協会で見せびらかした。入手不能レベルのレアアイテムにすぐに魔法協会本部に連絡がいき、金貨1500枚で売れた。

「ゴールデンドラゴンの乳歯を売っただけですが」

「今回、セイヤーズ銀行が焼失したのは?」

「ゴールデンドラゴンが燃やしたからです」

「ウィルは、誰がが弁償するべきだと思うかね?」

「ドラゴンに話しかけたあの銀行員」

 腕に抱えていたポチをぬいぐるみと間違えたのだ。

 首長の大切な子供をぬいぐるみ呼ばわりされたとなると、世話係のゴールデンドラゴンとしては黙っていられない。ブレスを一吹きして懲らしめたというわけだ。

「違うんだ。弁償するのは桃海亭になるんだ」

「どうして、そうなるですか!」

「世の中には理解不能な…」

「それはもういいです。それに弁償金だというなら、なぜ、ルブクス魔法協会が仲介手数料の名目でとりあげるんですか?セイヤーズ銀行が直接桃海亭に弁償して欲しいというならわかりますけれど」

「それはセイヤーズ銀行の希望だ」

「銀行の希望?」

「桃海亭とは二度と関わりあいになりたくないそうだ。口座はすでに閉鎖。地下の金貨も魔法協会にすでに渡されている」

「渡されているなら返してくださいよ」

「別の金貨1500枚を建て直しの資金としてセイヤーズ銀行に渡すことになっている。だから、返すことができないんだ」

 金貨は戻らない。

 肉も上着も暖かい布団も手に入らない。

 オレはセイヤーズ銀行に復讐することを決意した。



 復讐は想像以上の成果を上げた。

 オレとムーはガガさんが桃海亭を訪れた翌日、ルブクス魔法協会ニダウ支部に行った。受付でガガさんを呼び出して、大声で言った。

「桃海亭はこの間、セイヤーズ銀行に口座をつくりましたよね!」

「そうしゅ!セイヤーズ銀行につくったしゅ!」

 それだけ言って、店に戻った。あとは待つだけで良かった。口座はすでに閉鎖されているが、作ったことは嘘じゃない。

 セイヤーズ銀行の総預金高は、あっという間に半分以下になった。

 人を呪わば穴二つ。

 オレ達も無事ではすまなかった。オレ達が魔法協会を訪ねた翌日、ニダウにあるすべての銀行に張り紙がされた。店内だけでなく、表にも大きく張り出されている。


【当銀行には桃海亭の口座はございません。安心してご利用になれます】


 オレとムーが銀行に行くことは、もうない。


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