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彼は可愛いヤキモチをやく

 仕事を真剣にしているウィルの横顔を眺める。私の旦那様のカッコ良さ!仕事をする男の横顔って良いわ!


 なんて甘くときめいてる場合ではない。ヤキモチをやいたウィルは私の部屋に居座って、今日はリアンの傍で仕事する!と宣言している。


 私はソファーに腰掛けて、仕事の邪魔にならないように、静かに読書をしているふりをしているけど……。だめ!気になって仕方ないわ。


「陛下、この事案ですが、今年の収穫率が下がった地方がありまして……」


 バッと思わず、私は立ち上がる。


「ちょ、ちょっと!その書類を見せてほしいんだけど!?」


「リアン様、お静かにお願いします」


 トラスが私に注意する。ウィルは苦笑している。つい……つい……口を出してしまったわ。


「それから、こちらの事案ですが、ユクドール王国より賠償金の支払いが行われ、金品が届き、目録です」


「へぇ……」


 ウィルがどれどれ?と目を通す。私はソワソワしてくる。


「あのぅ……金額はどのくらいなのかしら?」


「リ・ア・ンさま?」


 ピシッとトラスが低い声で言う。トラスを叩き出して、ウィルの手から書類を奪いたい!


「リアン、見ても良いよ」


「陛下!王妃を政治に関与させることは慣習にございません」


「そうだけど、リアンは良い案を持っている」


 私は書類を手にし、すぐに計算する。……いける。


「このお金を元手に不作だった地方にダムを作れないかしら?」


『ダム!?』


 その場にいた執務官達、セオドア、トラスが驚きの声をあげる。ウィルだけはなるほどねと頷いた。


「そうだな。この地方は毎年水不足になる。お金も手に入ったことだし、良い案だ」


「人足も雇えるし、国の景気も上がるわよ!」


「ちょっと計算したものをこの紙に書いてもらえるか?メモでいいから」


 ウィルに言われて、だいたいの予算と完成までの日数などを割り出す。私が紙を渡すと真剣にウィルはしばらく見て考えていた。


「わかりやすいよ。ありがとう。うん。予算通せそうだ。作ってみるか!ダムを!」


 私はやったー!とガッツポーズをした。ウィルから許可を貰ったわ!前々からずっと気になっていたのだ。水不足の地方では頭を悩ませ、その年の天候によって収穫できないことから、貧しい地になっている。国を富ませるには国全体を良くしていく必要がある。


「この話題で、ガッツポーズする王妃は、なかなか世の中にいないですね」


「まるで宝石や高価な贈り物を貰ったかのような喜びようですね」


「楽しそうですね〜」


 気づけば、執務官達がなぜか微笑ましそうに私とウィルのやりとりを眺めていた。


「まったく解せない」


 トラスがブツブツと不服そうに、そう言うのをセオドアが笑う。


「陛下のヤキモチのせいで、ここに来ることになったんです。トラス殿、行動に気をつけてください」

 

「……身に覚えがまったくない。王妃の護衛はしているが、触れたことも近寄ったこともない」


 トラスの言葉に、ふと私も気づく。彼は私との距離もきちんと保っているし、そんな親しげに会話を楽しんだこともない。


「そうね。どちらかと言えば、まだセオドアとのほうが会話をしていた気がするわ」


 ウィルがえっ!?と言ってセオドアを見た。


「陛下、勘違いなさらないでください。リアン様の変な行動に突っ込みを入れずにはいられないときがあっただけです」


「ちょっと!?セオドア、なによそれ!?」


 フイッと明後日の方向を向いて、知らん顔をするセオドア。今、失礼極まりないことを口にしなかった!?


「やはり護衛はトラスで良いなっ!」


 ウィルが頼むぞ!とトラスに言う。私は問題はそこじゃないのよ!と額を抑える。ウィルはどうも……ヤキモチ焼いてて、本質を見失ってる。


「ウィル、問題は誰がこの噂を初めたのか?なのよ。面白くないわ。何か嵌めようとしている気がするのよ」


「確かにな。リアンから護衛を離そうとしている感じがするな」


 ウィルが真顔になり、やっと普通に頭を働かせ始めてくれた。


「噂の出所を探らせよう。リアン、どうも王宮内に微かではあるけれど、嫌な空気が漂ってる。気をつけてくれ」


「私よりウィルじゃないの?ウィルも気をつけてね」


 そう私は心配したが、彼はなにか考え込んでいた。……思い当たる事があるのね。それをまだ私には話してくれないウィル。


 でも今日のところは、問題を置いておき、ウィルのこの可愛いヤキモチを私は楽しみたいなと小悪魔的に思ってしまうのだった。

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