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噂になる彼女

「やっぱりのんびりできるのは良いわね〜」


 私は中庭にいて、柔らかい午後の日差しの中で、食べれる赤い実の甘酸っぱい香りを吸い込む。


「お嬢様、最近お忙しかったですから、落ち着いて良かったです」


 平和が一番ですとアナベルが、ゆったりと言う。木陰に置かれた椅子とテーブルで、お茶を飲む。


「ウィルはまだ忙しそう……」


 国にいなかった分の仕事が山積みらしい。毎日、夜遅くまで仕事をしている。手伝えるといいのだが、さすがに執務室への出入りはできないし、王妃にはそんな権限もない。テーブルに頬づえをつく。


 まぁ、仕方ないわ。ここは怠惰を極めましょう。眠気が襲いそうなのんびりとした空気。お昼寝したいところだけど……。


 私の傍にトラスが静かに立ち、護衛してくれている。真面目にじーっと見ている視線がちょっと怠惰に過ごすには気になり、邪魔なのよね。


 その時、大変だ〜とちっとも大変じゃなさそうで、むしろ笑いを堪えてるような様子でやってきた人物がいた。


「エリック?どうしたんだ?」

 

 トラスが眉をひそめ、私とアナベルもエリックを見た。


「いやー、さっき、噂話を聞いたんだけどさー」


「噂話?どんな??」


 ここに来るということは私に関係ありそうねと嫌な予感がする。エリックは笑いを我慢できなくて、私とトラスの顔を交互に見てアハハハハと笑いだした。な、なんの笑いなの?


「おい、なんなのか、はっきり言え」


「トラス……アハハ!トラスとリアン様がっ………アーハハハ!恋仲だって!?王妃様が浮気してるってさ……そんなわけないだろー!」


 お腹痛いと涙まで出してるエリックに私とトラスとアナベルは『えっ!?』と声をあげた。


「ありえないわ」


 はっきり私は言い切った。


「もちろん。そんな事実はない」


 トラスも言い切る。


 トラスのことは、嫌いというわけではないが、合わない。真面目すぎて、すごく監視されてる気分になってしまうのよね。昼寝しようにもサボってるような悪いことしてるような気分にさせられる。


 それに、いちいち細かい。こないだ、廊下を歩いていて、花瓶がいつもより数センチずれていて違和感を感じると言ってメイドに直させていた。


 合わない……どちらかと言うと苦手な部類。きっとトラスも私のことは苦手だろう。時々苦い顔をしている。


「わかってる!二人共お互いに、そんな感情ゼロなのにって可笑しくて笑いが止まらなかったんだ!アハハ!!」


 大笑いするエリックに私とトラスは他人事だと思って楽しんでいる……と憮然としたのだった。


 しかしアナベルが頬に手を当てて、不安そうに言った。


「陛下は……まさか信じませんよね?」


「えっ!?当たり前じゃないのー!ウィルだって私とトラスが仲が良いなんて、微塵も思ってないわよ」


 トラスも頷いて言う。


「陛下もエリックのように笑ってるでしょう」


「まあ、ウケるよねぇー。これフルトンにも話してやろう」


 トラスが冗談でもこれ以上広めるな!とエリックに怒る。


「何とも思われていないのならば、よろしいのですが……」


 アナベルだけが、ウィルの心配をしているのだった。いらない心配ねと私は肩をすくめるのだった。

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