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時は流れ、庭園は遠くなる

 王宮内はすべて安全ということはない。ネズミや虫は入り込める。


 オレが警備の目をくぐり抜けられるということは相手もできるということだ。


「……それでね、魔法の構成によっては面白い効果が得られるっていう理論があってね」


 楽しそうにオレの隣で談笑するリアン。相変わらず可愛い。図書室の本から得た知識を自分の考えと合わせて夢中で語る姿なんて最高にキラキラしてて良い!心の中でガッツポーズしてしまう!


 それなのに……邪魔するか?


 オレはすっと懐から細く鋭い小さな剣を取り出す。何本かいつも身につけてる物の中の一本を素早く手首を閃かせて投げた。廊下の分厚いカーテンすら鋭く突き刺し、その先にいる者にも刺さる。グッ!とくぐもった声。


「ウィルバート!?」


 リアンが驚く。ニッコリとオレは微笑む。


「リアン、気にしないでいいよ。話、続けて?ちょっと虫がいたんだ」


 勘の良いリアンは気づいてしまったようで、驚いた顔した後、ウィルバート?と名前を呼び、半眼になっている。ちなみに倒した虫はセオドアが速やかに静かに片付けてくれている。


 最近、間者が多いな。どこの国の者だ?……この国が狙われているのかもしれない。ザワザワと周りが騒がしい。それはこの国にも手を伸ばして来ているようだ。 


「えーと、続けにくいんだけど……今の……」


 オレは何事もなかったようにリアンの肩を抱き寄せて、スタスタと歩いて行く。リアンとの貴重な時間を邪魔するな!とすべての間者に言いたい!


 夜、待っていた手紙が届いた。オレとリアンの先生。師匠からだ。


 先日、オレは『リアンが暴走しそうな嫌な予感がします』というような手紙を書いた。


 師匠からの手紙は一言だった。


『少年は自由に駆ける』


 えええええ!?これだけ!?相変わらずだな。手紙を出したことを後悔した。どうせ答えをすべてくれないだろうとはわかってはいたんだ。


 フルフルと手紙を持つ手が震える。頼ろうと思ったオレが馬鹿だった!


 ハラリともう1枚小さな紙切れが落ちた。なんだ?


『忍耐』


 ………これ、なんの訓示だ?


 セオドアが気配なく、ドアを静かに開けて入る。


「どこの国の間者だった?」


「コンラッド王子の国でした」


「……そうか」


 オレが頷くと、セオドアが眉をひそめた。


「驚きませんね?友人の国だと言うのに」

 

 まあ、現実はそんなものだとオレはセオドアに笑って見せる。心から信頼できる友人など、なかなかできる立場ではない。それをオレもコンラッドも痛いほどわかっている。


 幼い頃、二人で走り回った庭園はもはや遠い。


 師匠の手紙をそっと燃やした。


 師匠の言葉の意味を少しずつオレは知ることになるだろう。リアンほど物事の全体図が見えてるわけじゃない。オレはぼんやりとした全体図しかまだ見えないが、気づいている。この先、何が起こるかを。

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