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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第3章 — 絡み合う運命
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第43話 — 見えない絆

ノゾミは記憶を取り戻した今、心を落ち着けるために部屋を出る必要を感じていた。

ゆっくりと着替えながら、病院で携帯に届いた一通のメッセージを思い出す。


「…あの時、誰からのメッセージだったのだろう?」


再び確認すると、それはシンジからのものだった。

だが、彼らしい言葉ではなく、妙に懐かしい感覚を呼び起こす内容だった。


「ノゾミ、君は僕を覚えていないかもしれない。

でも、振袖の写真をまだ覚えている?

君が最初に送ってくれた写真だ。

あの時まだ会ったことはなかったけれど、君の美しさは今も変わらない。

僕たちの繋がりはまだ生きている。どうか同じように感じてほしい。」


読み返すうちに、ノゾミの目に涙が滲む。

その言葉に当てはまるのは、レンしかいなかった。


「どうして…レンがシンジの携帯からメッセージを送っているの?」


声に出してしまい、混乱が深まる。

考えを整理できず、ノゾミは広場へ向かう決意をする。

今行かなければ後悔すると感じたからだ。


靴を履き、扉を閉め、階段を降りる。

管理人が「雨が降りそうですよ」と声をかけるが、耳に入らなかった。


外へ出ると、夕暮れと共に雨粒が落ち始める。

歩きながら、ここ数日の出来事を思い返す。

まるで何年も経ったかのように濃密な時間だった。


ユノの言葉が脳裏に響く。


「…愛する人を認識できなければ、二度と会えない。」


その言葉に囚われ、ノゾミは赤信号のまま道路を渡ってしまう。

クラクションの音に我に返り、慌てて走り抜けた。


雨脚は強まるが、戻る気はなかった。

広場に行けば、すべてが繋がる気がした。

そこには、見えない存在が待っている。


桜の木の下のベンチに近づく。

雨に打たれ、花びらはもう舞っていない。

心臓が高鳴る。だが、不思議と落ち着いていた。


ノゾミは腰を下ろし、携帯を開く。

レンとの最後のメッセージを見つめる。

「入力中…」の表示は、まだ残っていた。


彼女は新しい言葉を打ち込む。


「レン…元気でいてくれるといい。

振袖の写真も思い出した。

あの頃の私とは違うけれど、今の私を好きでいてくれて嬉しい。

私も同じ気持ち。すぐに会いたい。」


その瞬間、雷鳴が空を裂いた。

横を見ると、濡れた髪から滴を落とす影が座っていた。

気づかぬうちに、誰かが隣にいたのだ。


ゆっくりと顔を向ける。視線が交わる。


そこにいたのは、涙に濡れた瞳のレンだった。

言葉はなく、ただノゾミを見つめていた。


その瞬間、二人は理解した。

願いの代償は一方的ではなかった。

互いに選び、互いに失い、それでも繋がり続けていた。


赤い糸は、見えなくても途切れない。

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