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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第3章 — 絡み合う運命
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第41話 — 桜の下で響く歌

レンはノゾミと出会ってからの瞬間を思い返し、そこへ至るまでの選択を振り返っていた。

避けられぬ運命に縛られていると思っていた。

あり得ない出来事が愛する人を傷つけ、必要な時に手を差し伸べることもできず、ただ見守るしかなかった。


「どうして、ここがこんなにも懐かしく感じるのだろう。

ほんの少し前に“家”となった場所なのに、すべてが遠い。」


気づけば、魔女の姿はもう消えていた。

また新たな謎を残して。

だが今回は、不思議と理解できる気がして、苛立ちは覚えなかった。


涙が手のひらに落ちる。

その時、柔らかな風が桜の枝を揺らし、花びらが舞い上がる。

視線を追うと、偶然ノゾミが窓辺に立ち、頬杖をついて外を見ていた。


レンは慌てて涙を拭い、軽く歌い始める。

届かないと知りながら、せめて心だけでも彼女に届くように。

それは、願いが叶う前に彼女へ書いた歌。

未来を想い、共に歩む日を夢見て紡いだ旋律だった。


“影の中で呼んでいる

届かぬ声は夜に溶けて

君の瞳に僕はいない

それでも見つめている “


最初の一節を歌った瞬間、胸が強く締め付けられる。

思わず手を胸に当て、痛みに耐える。

その時、ノゾミが涙を流し、空を見上げながら何かを呟いているのに気づいた。


レンも同じ空を仰ぐ。

声には出さず、新たな願いを心に刻みながら。


桜の花びらが舞う中、歌は続く。


“同じ空の下

すれ違うふたり

見えなくても 消えなくても

愛はまだここにある

闇に咲く花のように

儚くても 美しい “


二番を歌い終え、再び窓を見上げると、ノゾミの姿はもうなかった。

レンは深く考える。


「今すぐ会いに行くべきなのか。

彼女の傍に留まるべきなのか。」


空の窓を見つめながら、時の流れを忘れる。

ただ彼女のことだけを思い、次の選択を迷う。


突然、車のクラクションが響き、軽い雨が降り始めた。

レンは我に返り、周囲を見渡す。


そこには、赤信号を無視して横断するノゾミの姿があった。

「彼女は…何をしようとしているんだ?」

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