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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第3章 — 絡み合う運命
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第39話 ー 忘れられた部屋の記憶

「家は記憶を映す鏡。忘却の中でも、心は馴染みを探し続ける。」




ノゾミは父に付き添われ、自分のアパートへと戻ってきた。


「娘よ、ここがお前の住まいだ。自分のアパートを覚えているか?」


ノゾミは驚き、目を見開いた。


「えっ…私、ここに住んでいるの?頭が痛い…思い出せない。」


武志は心配そうに眉を寄せる。


「無理に思い出そうとするな。きっと少しずつ記憶は戻る。

持ち物の中に鍵はあるか?」


ノゾミはバッグを探り、見覚えのない物ばかりに戸惑う。

やがて一束の鍵を見つけ、驚いたように父へ見せた。


「これ…かしら?」


武志は頷く。


「試してみよう。もし違っても、お前が母さんと俺に渡してくれた合鍵がある。」


二人が建物に入ると、管理人がノゾミに声をかけた。

彼女は覚えていないが、相手は彼女を知っている様子で、その違和感に胸がざわめく。


階段を上り、ノゾミは自然と足を運ぶ。

理由は分からないが、ある扉へと導かれるように。


「ここだと思う…なぜか分からないけど。」


武志は驚き、目を細めた。


「そうだ、ノゾミ。ここがお前のアパートだ。必ず記憶を取り戻せる、俺は信じている。」


ノゾミは小さく微笑み、鍵を試す。

一つが錠に合い、扉が開いた瞬間、光が差し込んだ。


カーテンは開け放たれ、部屋全体が明るく照らされている。

質素ながら整った空間。埃もなく、物はきちんと配置されていた。


ノゾミは靴を脱ぎ、ゆっくりと部屋を歩く。

家具に触れながら一つひとつを確かめる。

しかし、強い頭痛が襲い、記憶の断片は掴めない。


武志は靴を脱いで入り、食卓に腰を下ろした。

ノゾミは部屋を見渡し、やがて食卓へ戻る。


目に留まったのは、テーブルの上の花瓶。

そこには枯れかけたマーガレットが飾られていた。


「この花…私の好きな花だ。」


武志は目を潤ませながら微笑む。


「そうだ。お前は毎週この花を買っていた。母さんにもそう話していた。」


ノゾミは額に手を当て、問いかける。


「父さん…本当に私、記憶を取り戻せると思う?

結婚していたなんて信じられない。

いつのことだったの?幸せな時間を思い出したい。」


武志は深く息を吐き、慰めるように言う。


「きっと思い出せる。

確かにお前は結婚していた。だが母さんには、離婚を考えていると話していた。

その理由は…お前自身が思い出すべきだ。俺たちには分からないことだから。」


ノゾミは静かに頷いた。


「ありがとう、父さん。母にも伝えてね。

少し一人で過ごしたいの。ここで自分を整理したい。」


武志は微笑み、優しく答える。


「分かった。お前は俺たちから離れて暮らしているが、困った時は遠慮なく連絡しなさい。

すぐには行けないかもしれないが、必ず力になる。

それと、職場へも顔を出して謝っておけ。事故のことはシンジが伝えているだろうが、自分で行って顔を見せるのがいい。」


ノゾミは頷いた。


「分かったわ、父さん。そうする。」

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