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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第3章 — 絡み合う運命
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第37話 ー 夜明け前の選択

「夜明け前、選択は影のように揺らぐ。」




レンは、病院の中をさまよいながら送った曖昧なメッセージのことを思い返していた。

見知らぬ顔ばかり、誰ひとりとして知っている者はいない。

ノゾミの病室へ戻ると、彼女は眠っていた。


レンは自分自身に問いかける。


「彼女が目を覚ますまで待ち続けるべきなのか?

それとも、この携帯——唯一触れることのできる物——で何かできるのか?

ノゾミは、あのメッセージをシンジからだと思ったに違いない。俺はなんて愚かなんだ。」


思考は次々と押し寄せ、次の一手を決めかねていた。

視線は扉へ向かう。こういう時こそ、あの忌々しい魔女が現れるのではないかと。


数分待ち、足を落ち着きなく鳴らす。

——だが、何も起こらない。


「必要な時に限って現れないとは…くそ!

自分で考えるしかない。

もうすぐ夜が明ける、ノゾミも目を覚ますだろう。」


レンは携帯を取り出し、連絡先をスクロールする。

長いリストを眺めていると、見覚えのある名前が目に留まった。


『役立たず弁護士』。


「こいつに何か頼めるだろうか?

花を届ける?菓子を?…いや、手紙だ。」


すぐにメッセージを打ち始める。


「『こんばんは』…いや、形式ばりすぎる。シンジならそんな言い方はしない。

『おい、バカ』…いや、乱暴すぎる。シンジは最低だが、怒っていない時はこうは言わない。

『頼みたいことがある』…これだ。これなら通じる。」


レンは指を走らせる。


『頼みたいことがある。急ぎだ。ノゾミに手紙を届けてくれ。』


窓から朝の光が差し込み始める。

時間の流れに気づかぬまま、レンは送信を終えた。


『既読』。


「よし、これでうまくいくはずだ。」


送信直後、通知音が鳴る。レンは気づかない。

ノゾミが寝返りを打ち、目を覚まし始めていた。


レンはベッドの傍に立つ。

ノゾミは彼を見ず、窓の外を見つめている。


やがて看護師が入ってきて告げる。


「野々美さん、今日退院できますよ。」


続いてシンジと主治医が現れる。

医師はノゾミに言う。


「数時間後には退院可能です。ご希望ならすぐにでも。」


レンはシンジの存在に耐えられず、病室を出て外へ向かった。


しばらくして、シンジが病院の扉を抜ける。

表情は無機質だが、外へ出た途端、口元に歪んだ笑みが浮かぶ。

声を上げて笑い出しそうなほどの悪意を隠しながら。


レンはその様子を見つめる。

シンジは車に乗り込むが、動こうとしない。

その不自然さに、レンは眉をひそめた。


再び扉が開く。

今度はノゾミが一人で出てくる。

その背後に——老いた魔女ユノ。


レンは胸を張り、彼女に詰め寄る。


「今さら何の用だ?また謎めいた言葉を投げに来たのか!」


ユノはノゾミの背後に立ち、彼女には気づかれないままレンを見据える。


「ようやく正しい方向へ一歩踏み出したようだな。

だが、遅すぎたかもしれない。

運命は変わろうとしている…

お前は彼女に寄り添うのか?

それとも、自分の利己的な願いを手放すのか?」

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