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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第2章 — 繋がる影
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第30話 — 嘘の証言、祈りの声

「真実を隠す者と、真実にすがる者が、同じ場所に立っている。」




レンは、ノゾミの病室に近づく黒沢シンジと見知らぬ男の姿を見て、怒りに震えていた。

二人は病室の前で立ち止まり、シンジが焦った様子で話し始める。


「彼女が目を覚ましたら、訴えられるかもしれない…

最悪、刑務所行きだ。」


男は冷静な口調で答える。


「黒沢さん、ご心配なく。

私はあなたの権利を守るためにここにいます。

財産を手放すことで沈黙を得るという選択肢もありますが、いかがですか?」


シンジは顔を覆い、髪を掴んで引きちぎるような仕草を見せる。


「僕が築いたものを全部渡す?

そんなの絶対に無理だ!

彼女は生きてるだけで運が良かった。

医療費も僕が払ってるんだ、それだけじゃ足りないっていうのか?」


レンは拳を握りしめ、歯を食いしばる。

怒りが全身を支配していたが、ただ静かに見守るしかなかった。


男はさらに助言を続ける。


「医師や彼女に、“交通事故だった”と納得させるべきです。

監視カメラの映像は、私が処理します。

車の損傷も、事故らしく見せるようにしてください。

そうすれば、彼女が目覚めても証拠がなければ反論できません。」


その時、医師たちが定期検診のために近づいてくる。

シンジは髪を整え、表情を作り、医師に声をかける。


「おはようございます。

ノゾミは回復しますか?

私は夫の黒沢シンジです。

彼女の状態が心配で…

まさか交通事故に遭うなんて、悲劇です。

自分を責めずにはいられません。」


医師は穏やかに答える。


「おはようございます、黒沢さん。

患者さんの容態は不安定ですが、回復の可能性はあります。

重度の脳震盪を確認しており、現在も検査中です。

最悪の場合、意識が戻らない可能性もありますが、

良い方向に進めば、後遺症を抱えながらも目覚めるでしょう。」


シンジは唇を震わせながら、笑みを浮かべようとする。

それを察した男が前に出る。


「失礼します。私は黒沢さんの弁護士です。

彼は非常に動揺しており、失礼があればご容赦ください。

それでも、奥様が回復される可能性があるというのは朗報です。

彼は事故以来、眠れない日々を過ごしています。

唯一無傷だったことが、彼にとっては皮肉な“幸運”でした。」


レンは目を閉じ、見たくない現実を遮ろうとする。

それでも、耳はすべてを捉えていた。


医師は静かに言う。


「ご一緒に来ていただいても構いません。

これから処置に入りますので、失礼します。」


レンはもう限界だった。

その場を離れ、ノゾミの病室へと足を踏み入れる。


彼女はまだ眠っていた。

レンはベッドの横に立ち、彼女の閉じた瞳を見つめる。

そっと顔の傷に触れ、震える手で口元を覆いながら、声にならない叫びをこらえる。


涙が止まらない。


「ノゾミ…目を覚ましてくれ。

僕たちが交わしたメッセージ、

一緒に叶えようって言ってた夢、覚えてる?


君が目覚めてくれれば、それだけでいい。

たとえ僕が隣にいなくても——

君の夢が叶うところを、見たいんだ。」

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