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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第1章 — 姿を消すことの代償
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第20話 — 願いの代償

「触れられたのは、希望か、それとも罰か。」




レンは、ノゾミを見つめていた。

彼女には自分が見えない。

そして、自分には彼女を救う力がない。

それでも、彼女が生きていることに安堵し、

胸が締めつけられるような痛みに耐えながら、

彼は静かに立ち上がり、背を向けた。


シンジを見つめる。 涙が止まらない。

怒りで震える。

今、何よりも望むのは——

彼を殴ることだった。


その憎しみに飲まれていた時、

隣の部屋から声が聞こえた。


「ここで起こることは変えられないと言ったでしょう。

でも、まだ終わっていない。

残されたものがある。

それをするかどうかは、あなた次第。」


レンは魔女を睨みつけ、 怒りのままに走り出す。

拳を振りかざし、全力で彼女に向かって殴る——

だが、拳は彼女をすり抜け、

彼はソファにぶつかって倒れ込む。


その時、足元に何かが落ちた。

シンジの携帯だった。


混乱の中、何も理解できなかった。

「これに触れた…?

これが、あの魔女の言ってたこと…?

でも、なぜシンジの携帯なんだ?」


涙に濡れた顔で、震える手を伸ばす。

また触れられないのではないかという恐怖がよぎる。

目を閉じて、ゆっくりと手を下ろす——

そして、携帯を掴んだ。


心臓が跳ねる。

目を見開き、携帯を見つめる。

魔女を見て、何度も確認するように携帯を握り直す。


魔女は静かに出口へ向かいながら言った。


「意味があるかどうかは、あなたが決めること。

さあ…どうする?」


レンは携帯を見つめながら考える。

「警察に電話できるか…?

でも、声が届くのか…?」


いくつもの可能性を考えるが、どれも確信が持てない。

再びノゾミを見つめる。

その姿は、あまりにも痛ましかった。

手首と首には痣。

美しい顔には、恐怖と悲しみが刻まれていた。


レンは静かに立ち上がり、

携帯をポケットにしまいながら、

ノゾミから目を逸らさずに言った。


「ごめん、ノゾミ。

今は何もできなかった。

でも、必ず君のそばにいる。

このすべてが終わった時には——」


彼はアパートを出て、階段を下りながら再び涙を流す。

頭の中には、ノゾミの顔しか浮かばない。

冷たい表情。

命の気配が薄れた瞳。

暴力の痕跡。

そのすべてが、レンの心を締めつける。


一階に着いた時、外に出る力も残っていなかった。

ただ、出口のドアを見つめて立ち尽くす。


その時——

足音が聞こえた。

よろめきながら走るノゾミの姿。


顔は腫れ、手首からは血が滲んでいた。

さっきよりも、さらに酷い状態だった。


そして、階段からシンジが現れる。

叫びながらノゾミを追う。


「ノゾミ!何してるんだ!」


レンはシンジの前に立とうとするが、

先にアパートの受付係が彼を止めようとする。

だが、シンジは彼女を突き飛ばし、

何も彼の前に立ちはだかることはできなかった。


ノゾミは外へ逃げる。

後ずさりしながら、シンジから距離を取ろうとする。


だが、予想外のことが起きる。


ノゾミが歩道でつまずく。


レンの心臓が跳ね上がる。

全身が鼓動で震える。


彼女が倒れるその瞬間——

一台の車が近づいていた。


運転手は携帯を見ていて、

目を道路に戻した時には、もう遅かった。


衝突音。

体が車の上を転がる。

急ブレーキ。

焦げたタイヤの跡。


ノゾミの体が、地面に倒れ込む。


シンジは立ち尽くし、

近づくこともできず、

そのまま逃げ出す。


受付係はすぐに救急車を呼ぶ。


レンはノゾミのそばに膝をつき、

彼女の体を抱きしめようとする——

だが、触れることはできない。


そして、魔女が再び現れる。


「その願いの代償——

本当に、それだけの価値があったのかしら?」




——第1章・終。

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