第14話 — 愛という名の檻
「優しさの仮面をかぶった執着は、
最も残酷な牢獄になる。」
ノゾミは、床に倒れているシンジの体に近づいた。
テーブルの上には、薬の山が乱雑に散らばっている。
なぜ彼がこんなことをしたのか——
その答えは、水のように透き通っていた。
だがノゾミは、すぐには気づけなかった。
彼女は膝をつき、シンジの胸に耳を当てる。
まだ心音があるかどうか、確かめようとした。
その瞬間——
シンジが突然、ノゾミの腕を強く掴んだ。
何の前触れもなく。
ノゾミは、衝撃で動けなくなる。
頭の中が混乱していた。
何が起きているのか、理解できない。
「シンジ…何が起きてるの?
あなたは大丈夫?
どうして私を呼んだの?
これは…罠だったの?」
シンジは笑い出す。
その笑いは次第に大きくなり、
顔に手を添えながら、満足げに微笑む。
「こんなにうまくいくとは思わなかったよ。
君は本当にバカだな。」
「僕が命を絶とうとするなんて、
本気で思ったのか?
君は僕のことを何もわかってない。」
「ノゾミ、僕は君を愛してる!
すべてを捧げた!
それなのに、君は僕を捨てる気か?」
「僕が欲しいものを手に入れられないなら——
君にも、何一つ与えない!」
ノゾミは、まだ状況を理解できずにいた。
腕を掴まれたまま、痛みを感じ始める。
「何なの…?
痛い…腕を離して…!」
必死に腕を引こうとするが、
すでに痕が残り始めていた。
そして、ノゾミは思わず口にしてしまう。
考える余裕もなく、衝動的に。
「私…何を間違えたの?」
その言葉を聞いた瞬間——
シンジの笑いが止まった。
口を開けたまま、顔が固まる。 目だけが、ノゾミを見つめていた。
彼は立ち上がる。
顔には、怒りが浮かんでいた。
ノゾミは恐怖で震えながら、腕を引こうとする。
だがシンジは、さらに強く握りしめる。
彼はノゾミを引きずりながら、玄関へ向かう。
ドアを閉め、鍵をかける。
次に、ダイニングの椅子を一つ持ってきて、
部屋の中央に置いた。
ノゾミをその椅子に押し込む。
勢いで椅子が後ろに倒れそうになる。
シンジはベルトを外し、
ノゾミの両手首を椅子の後ろで縛った。
そして、もう一つの椅子に座る。
ノゾミの正面で、満足げに微笑む。
「これで、ゆっくり話せるね。」
「こんなことまでしなきゃいけないなんて、
思ってもみなかったよ。」
「でも、君が僕に選択肢を与えなかった。」
ノゾミは涙を流すことすらできなかった。
ただ震えながら、腕を引こうとする。
だが、痛みが増すだけだった。
椅子を後ろに押そうとするが、
シンジがすぐに押さえつける。
「ダメだよ。
僕はただ、君と話したいだけなんだ。」
「いや、正確には——
“元”妻とね。」
「叫んだら…そうだな。
話し合いは、すぐに終わるかもね。」
ノゾミは部屋を見渡す。
逃げ道は、どこにもなかった。
口を開け、深く息を吸う。
叫ぼうとしたが、
その瞬間、最悪の結果が頭をよぎる。
彼女は、叫ぶのをやめた。
そして、シンジは最も恐ろしい質問を投げかける。
「ねえノゾミ。
君が寝た後、僕はいつも君のスマホを見てたんだ。」
「面白いことに気づいたよ。
朝、昼、夜——
いつも通知が来てた。」
「最初は仕事関係かと思った。
でも、ある名前がいつも出てくるんだ。」
ノゾミの目が見開かれる。
心臓が跳ねる。
その名前が、まさか——
「教えてよ、ノゾミ。
“レン”って誰?」




