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願いの代償  作者: 神谷嶺心
第1章 — 姿を消すことの代償
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第12話 — 手の届くもの

「目の前にあるものは、答えを求める心では見えない。」






長い待ち時間の中、

シンジは床に横たわったまま、ポケットからスマートフォンを取り出す。

ノゾミからの通知は——何もなかった。


一瞬、怒りを見せる。

だがすぐに、悪意のある笑みを浮かべて笑い出す。

スマホをソファに放り投げ、再び演技に戻る。


その様子を見ていた魔女が、再びレンに語りかける。


「あなた、目の前にあるものに気づいた?」


レンは軽蔑の眼差しで魔女を見つめ、考えもせずに答える。


「今は謎かけの時間じゃないだろ…

見ての通り、状況は最悪だ。

俺には何もできない。

“手の届くもの”って、何のことだよ?」


魔女は静かに笑い、ソファに腰を下ろす。

そして、こう言った。


「そこまで盲目なら…

この結末を一緒に見届けましょう。」


レンの喉に、石のような塊が詰まる。

怒りと焦りが混ざり、魔女に罵声を浴びせたくなる。

だが、言葉にならない。


目に炎を宿したまま、レンは部屋を飛び出す。

しばらく廊下を歩き、気持ちを落ち着けようとする。


その時——

エレベーターの音が聞こえた。


レンは震えながら、独り言を漏らす。


「まさか…ノゾミ?

止めなきゃ…でも、どうやって?」


再び部屋に戻り、叫びながら魔女に詰め寄る。

魔女はソファに座ったまま、まるで何も気にしていない。

口元には、歪んだ微笑み。


「おい、あんた!

ノゾミを止める方法はあるのか?」


魔女は小さく笑い、咳をしながら答える。


「さっき言ったこと、考えた?

答えを求めるばかりで、

目の前にあるものに気づこうとしない。」


その時——

エレベーターが階に到着し、扉が開く音が響く。


レンは顔面蒼白。

動けない。

髪を引きちぎりそうなほど、泣きながら叫ぶ。


「どうすればいい…どうすれば…!」


魔女は、ぼそりと呟く。


「愚かな若者ね。」


廊下に、足音が響き始める。

ゆっくりと、確実に近づいてくる。


数秒後——

足音が止まる。


扉が、ゆっくりと開き始める。


ノゾミだった。


彼女はすぐに、床に倒れているシンジを見つける。

口を開けたまま、言葉が出ない。

テーブルに散らばった薬を見て、何かを考えようとするが——

頭が真っ白で、思考がまとまらない。


彼女はすぐにシンジに近づき、

心音を確認しようとする。


その瞬間——

シンジが彼女の腕を強く掴んだ。


「君は俺を捨てたりしない!」

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