246 鎖も枷も攻撃力ある理論(謎)
どうぞ。
ライバーとしてはギリギリの、青いボンデージ姿の女性は「さっそくなんだがよ」と涼花に笑いかける。
「弾幕だ。バカみてーな勢いの弾幕を張れるようにしてくれ」
「意志は何やったっけ? 【愚者】やったら問題ないけど」
「ああ、【愚者】だぜ。アイテム作りまくれるんだったよな?」
「素材は必要やけどね。ほんま、フィエルはんはえらいお客さんばっかり連れて来はるわ」
ログイン頻度も時間も減っている〈ラフィン・ジョーカー〉「白バニーさん」こと「フィエル」は、『ストーミング・アイズ』におけるもっとも有名なプレイヤーである。四大陣営のパワーバランスを変えた人物でもあり、公式インフルエンサーとしてにごフェスでお渡し会やパフォーマンスを担当するほど、運営からも重用されている大きな存在だ。
彼女自身はそこまで自覚的ではなく、ひとまず思いついた名前として「タイトルタイルズ」を挙げているのだろう。しかしながらその宣伝効果は、世界規模の企業のCEOなりが「これしか身に付けていない」と腕時計のブランドを宣伝するかのごとき、恐るべき効力を発揮している。直接紹介を受けたという人物は、優先的にギルドマスターに会うことができ、直接相談することができる。
「すでに知れ渡っとるんやけど、投げ上げて【ひどい手癖】を発動するとやね、素材の性質をある程度引き継ぐっちゅうことが判明しとるんよ」
「あー、聞いたぜ……ただ、今のジョブもけっこう強いから、変更にはちょっと尻込みしてんだ。モノを揃えてから使わないと、損するんだろ?」
「それはそうやねぇ。あと、あれは一瞬で消えるから、ポーションなんかは何の役にも立たへんよ」
「実際、みんなどんなふうに使ってるんだ、ありゃ」
それはやねぇ、と涼花はメモを取り出す。
「まず、コストとして消費するアイテムが半数以上を占めとるみたいやで。フィエルはんは加速するのにカードを消費しとるやん? あれと同じように「瞬間的に消費するアイテム」なら、さっと作ってさっと使こてまうからええんやね」
「ほお。次はあるのか? これ以上思いつかないぜ」
「一瞬で壊れる武器にして、ばんばか使い捨てる方法やね。壊れやすい武器とか、そもそもからして弱いカテゴリやないとでけへんけど」
「あー……? 確か、二回目の「ブレイブ・チャレンジャー」だったかのあれか? 飾剣を投げまくってたやつ」
そうそう、と涼花はうなずいた。比較的構造が単純、かつ基礎的な耐久度が非常に低いアイテムでなければ変換で作ることはできない。そして、いくつか選択肢がある場合は、それらのうちいずれかのランダムなものに変換される。もっとも変換回数が多かったものが優先されるが、現在使えないものは候補として現れない。つまるところ、関係ないジョブのアイテムは出現しない……〈剣士〉が発動させても弾丸は出現しない、ということになる。
「っちゅうことは。弾幕なぁ……この世界の拳銃て、リボルバーしかあらへんで。まあ〈魔弾使い〉でどうとでもなるけど」
「じゃあ〈銃士〉と〈魔弾使い〉か」
弾倉には六発しか入れられないが、自動で素早く装弾できるジョブスキルのある〈魔弾使い〉に就いてしまえば、さほどの問題にはならない。
「相談料はタダやけど、買いたいものもあるんやろ? 商売人のとこに情報買いに来ても、「ミルコメレオ」行ったらええやんて言われるし」
「補助するモンジョブ、あるか?」
「……高ッ額いでー、ほんまに。TTはツケ受け付けてへんけど」
「買えなきゃ買えないで、自分で狙いにも行けるんだぜ、オレは。その場合は、情報料ってことにしてくれるよな?」
「ふふふ。まあええけど」
控えていた「トキリ」に連絡し、涼花はいくつかの「魂の魔石」を持ってこさせた。
「まとめて買ったら二百万くらいやね。どう?」
「ああ、なんだ……十倍くらいかと思ったぜ」
「なら、商談成立でええのん? ベストやのうて妥協枠やけど」
「オレがそんなことで止まるわけねーだろ。これでやってやる」
性能の噛み合い具合は、完璧ではない。いくつかのバフがそれほど有効に機能せず、伸びるステータスも微妙に違う。しかしながら、「後矢レイブン」というライバーは、「水銀同盟」のとっこと同じタイプのゲーマー……「鎖付き」と称される、縛りプレイをとくに好みそれを主な活動内容にする人物だった。
「フルバフ受け取れねーんなら、そいつも活かす方法を考えりゃいいんだろ? どうせジョブの枠は六つずつあるんだから」
ぎらりと光った目には、炎が宿っていた。
『SIs』における弾幕は今のところわりとカスで、弾数を重視して威力が落ちるか、威力を上げて数が減って物足りないかの二択。というわけなので、レイブンさんに弾幕してもらいます。二丁拳銃って面白いと思うし……でも六章のうちにやれるんだろうかこの話。




