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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
6章 遺失記録:8/30~8/32

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’11年8月30日22:32 東京都■■区■■■■丁目■■-■■ ■■ホテル■階■■■号室

「ほわふー……」

「ここまで来るともはやシュールね……」


 三人部屋だけあって、個室についているお風呂も、二人くらいなら入れる広さだった。こんなホテルあるんだ、とついつい修学旅行なんかで行ったホテルと比べてしまう。手足を伸ばして湯船にとっぷり浸かると、思ったより溜まっていた疲労がお湯に溶けていくような気がした。


「明日も同じ感じですか?」

「ええ、お渡し会じゃなくなって販売にはなるけどね。屋内での撮影会と、こっちのプロモーションに参加してくれてるタレントさんたちとのコラボよ」

「そういえば、屋内だとバーチャルな人も来られるんですよね」

「そうそう。いつもみたいに派手な動きはできないけど、お願いしちゃうわね」


 普通なら、リアルできちんと活動している人に依頼するんだろうけど、私もいちおうリアルで動ける人認定されている。あっちはNOVAにいるからすごくバーチャルな動きもできるけれど、私はあくまでリアル依存、どちらかというとコスプレイヤーみたいな立ち位置だから、浮いたり飛んだりはできない。


「さ、これ以上は服を着てから話しましょう。麗香ちゃんにも言っておかないといけないことだから」

「わかりました」


 衣装のためのインナーとして持ってきた下着と、着替えとして持ってきた下着は、面積とか穿き込みの深さがぜんぜん違う。……はずだったけど、この前勝負下着として買ってきたやつを持ってきてしまったようで、替えがひもパンしかなかった。微妙に片手落ちだったのか、アンナがちょこっといたずらしたのかは分からない。


「最近の子はすごいのね……」

「や、これは違いますから!」


 これで寝るのか、とは自分でも思ったけど、ただでさえ汗びっしょりになるインナーの方を、今穿いておくわけにもいかない。寝間着として持ってきた薄いシャツとドルフィンパンツに着替えつつ、自分にそんな言い訳をしていた。


「お二人とも。お待ちしておりました」

「ごめんね、あんまり長風呂しなかったつもりだけど」

「髪乾かしながらで悪いけど、明日の話をするわ」

「「はい」」


 ショートヘアをドライヤーで乾かしつつ、佐藤さんは「明日は屋内だからちょっとだけラクよ」と続けた。


「昨日みたいなお渡し会じゃなくて、ブースでの販売になるわ。近くで写真撮影に応えるくらいかしらね。あとは、あなたたちとコラボしたいっていう人が何人かいるから、……できるだけ備えゼロでサプライズ! みたいに言ってたけど、誰かが来るってことだけは覚えておいて」

「斬ればいいわけではなさそうですが。何をするのでしょう」

「麗香ちゃん、リアルでそんなに強い人いないから……」


 いるにはいるんだろうけど、そういう人はリアル鍛錬ばっかりしていて、VRゲームなんてやらないに違いない。という考えも古いかもしれないから、現代は魔境だ。


「注意事項として、その人は基本的にそこにいない、ってことがあるわ。バーチャルタレントさんは、99.99%ホログラムだから、あっちからは触れるけどこっちからは触れないの。つまり、あんまり激しく動いちゃいけないってこと」

「めり込んだり、あっちだけ吹っ飛んで見えなくなったりするとか……?」

「昔はドツキ漫才もやってたんだけど、ギミック付きのステージとかスペースが誤作動したりもしてね。予定されてないイベントが起きたら困るのよ」

「なるほどー。しかるべきタイミングで起動したいんですね」


 屋内スペースは、アンナの本業であるバーチャル・スペースデザイナーみたいな人たちが作ったものだ。ふつうの舞台でいう、せり上がってきて下から登場できる「奈落」みたいなギミックのもっと複雑で精密なやつも、かなりバリエーションを持たせて仕込んでいるらしい。照明さんがやるようなスポットライトもそうだし、舞台そのものの形が劇的に変わるような演出もある。バーチャルなら、幕間なんていらないのだ。


「もともと、NOVAにはゲームみたいなステータスなんて設定されてないから、思いっきり殴ってもそんなには飛ばないんだけどね。二人に限っては、ちょっと心配」

「そんなことはしません。斬れと言われれば斬ります」

「ダメだよー、とーまれー」

「むむぅ」


 ほっぺたを左右から互い違いもちもちして、できるだけ落ち着かせる。


「あ、そうだ。今日は二人は配信してるんですか?」

「とっこちゃんはフェルニコラズの呪い装備集め、サフォレちゃんは別のオフラインのゲームをやってるわね。テレビで映るけど」

「私はいいかなー……。麗香ちゃんは?」

「わたくしも、そろそろ寝る時間ですので……。思ったより疲労がありましたし」

「じゃ、寝ちゃいましょっか。夜食とか食べるタイプ?」


 いえ、と声が重なった。


「いい心がけね、アスリートだからかしらね。じゃあ電気消すわね」

「おやすみなさい、佐藤さん」

「お二人とも、おやすみなさいませ」

「ゆっくり休むのよ。アラームはチェックしたから、誰か寝てたら朝食までに全員起こすこと! 私は朝強い方だけど、大人だろうと容赦なく起こしちゃって。お願いね」

「「はーい!」」


 やっぱり引率の先生みたいだなー、と思いながら、私は眠りについた。

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