237【同伴0人】フェルニコラズをお散歩しますぞー!【呪い拾い】(2)
どうぞ。
タウルヴァンス大陸は「もっとも愚かな天才の多かった土地」……別の表現をするのならば、「倫理や躊躇がもっとも足りなかった土地」である。たくさんの技術が開発され、それらがためらいなく使用された結果、半分以上が滅びた。
もともと、安定した平地に「国家」という単位を築くことが難しかった「ハーダルヴィード」世界は、つねに敵を排除する手段を模索せねばならなかった。ただレベルアップする、ジョブを増やすだけでは人数も時間も足りない。それゆえに、新技の開発や兵器、人を超えた力の模索が急がれた。ジェロゥやレヴィロム、イニーズといった数々の鬼才が歴史に残っているが、歴史には記されていない才能も多い。
その理由は明白である――のちの歴史から見れば、それは失敗だったからだ。現実における核兵器が一種のゴールとなり、抑止力としてしか機能せず、使用をちらつかせた瞬間に国際世論から見放されるようになったように……「忌餓穴喰」や「偽神降臨法陣」は、それ自体を禁忌あるいは恐怖として避けることとなった。
「まったく、「再誕の偽神」は強敵でしたなー……。おまけに、囚われた人々も再誕できずに亡くなり、魔剣に頼った勇者さまも腕を失いましたし」
『ロスチル思い出したわ』『ほぼ邪神だもんねあれ』『なんでぽんぽん呼び出してたのかマジでわからん』『名前呼ぶでもなく覚悟決まってたはずなのに泣いてたんほんまかわいそう』『生えてきたからいいってもんでもないしな』『勇者がいい人だったのが唯一の救いなのほんとうにクソだと思う』
「間違いありませんな。地上に魔王虫がいたのも、ここの影響のようですし」
鉱竜の版図に街の基礎を作った結果として、フェルニコラズの住民は絶えずかれらとの生存競争に悩まされることとなった。とはいえ、定住に向いた土地がそう簡単に見つかるはずもなく、人はここへ住もうと頑として譲らなかった。
王たる宝玉の龍をさえ殺し、住民を保護できる手段はあった……「再誕の偽神」、ヒトという種族を別のものとして生まれ変わらせる、雌性内性器の形を模した姿をした「外なるもの」の一柱。これを呼び出した人間たちは、卵胞に包まれて再誕の準備に入り、偽神に戦いを一任した。龍との戦いの音を聞きつけた勇者は、偽神を止めるため「菌蝕の魔剣」を使ったが、力及ばずともに封じられることとなった。
(呪い装備ではありますが、使って壊れる系統は出力のわりにデメリットの方が大きいですし。ああいうものはお得にはなりませんぞ)
使われている石材には、金属鉱物を含んでキラキラと輝くスジ、いわゆる「金脈」が走っている。金属系の鉱竜と争いになるのも当然だ。こつこつと足音を立てながら歩いているが、死滅した街には何もいなかった。
「まるでホラーゲームのようですなー。鉱竜たちも、ここを忌み地にしているのでしょうか……喜ばしくはありませんし、平穏も続きはしないのでしょうな」
『ライオンの檻でキャンプするかのごとき愚行、ひたすらアホだっただけやろ』『ここまで擁護の余地ゼロな現地住民久々だね』『マジで巻き込まれただけで千年封印された勇者が哀れすぎる』『地上の港も撤退するんかな』『イニーズができた時点でもう価値ないやろ』『まあなくなってもええちゃうかな』
過去の住民に配慮するコメントはない。もともと強い生物の居住地だった場所に無理やり住み着き、敵を排除するためにと愚策に出たあげく、善意の人を巻き込んで自分たちだけ全滅して善人を泣かせた。それを愚行と言わずして、何が愚行と呼ばれようか。地上に魔王虫の出現を引き起こし、大陸のうち半分近くをめちゃめちゃにした原因ともなれば、責められぬ方が異様であろう。
「さて、さて。今日の〈悪縁のお守り〉は、何を見つけるのでしょうかな?」
『いつ聞いてもひっでぇ名前w』『アイテムだけでよかったね……』『NPCの知り合いがほぼいない時点でヤバいの確定ゾ』『初期好感度下がってる疑惑あるよねw』『ぶっちゃけ愚者補正よりアカンやろたぶん』『呪い引き寄せはセット効果やったっけ』
「そうそう。あたしは全身呪い装備で固めておりますので、特殊装備スキルの「血みどろ糸繰り杭つなぎ」が発動しておるのですなー。ほんとうに使えない装備はそうそうありませんので、じつは助かっておりますぞ!」
戦闘中にとつぜん、発動しようともしていない特技が発動したり、急にHPが減ったり、いっさいの前触れなく呪いのアイテムを獲得することがあるスキル。テキストを読み、実際に体感したのちもやはり最悪と言わざるを得ないスキルだが、コレクターにとってはありがたい。
狭い路地を歩き、大通りに出て、とっくに探索し終わった倉庫街に出る。
(このネタをやれるのはあと二回程度ですかなー。鉱竜たちの侵攻が予測されるのはともかく、歩いていないマップがもうほとんどありませんぞ)
あまり入っていなかった一般住宅の近くを、ひとつひとつ探していく……ぬるりと抜け出る髪の毛のようなしるべが、ある家に入った。
「おやおや……一般人の家に、ですか」
『いかんでしょ』『回収してあげんとね』『レアドロとか宝箱の方がマシって思ったの初めてかもしれんわ』『なんで住宅に呪い装備があんだよ、常識はどうなってんだ常識は!』『マジレスですまんけどほんそれとしか言いようがない』『不穏』『ガチでこの街おかしいだろ』『アイテムによってはまた胸糞が増すなあ』
「なんであれ変わらない気がしますが……。このタンスですか」
『えぇ……』『なんでこれ必要だったん?』『最悪』『うっわ』『見たくなかった』『これ赤い靴のおとぎ話のやつやんね』『いっしょに服入ってるのが最高にクソ』『嫁入り道具とでも思ってたんか家主』『よりによってこれか』
戦闘中、強制的に踊り系特技を使用してしまう〈紅玉のサンダル〉。よほど動きが洗練された人でなければ使いこなせない、身に付けた瞬間にほとんど死ぬことが決まるような靴である。こんなものを家に置いて、いったい何に使うつもりだったのか。
「遺品、でしょうか。知らなかったと思いたいですな……すでに持っておりますし、回収だけしておきましょう」
戦士の家に、切り札として命を削る武具があるのはよい。商人の家に富を偏らせる宝珠があるのも、仕方のないことであろう。しかし、一般人までもが積極的に呪いを扱っていたのならば、ラビウム島であれほど呪いや〈呪術師〉が嫌われる理由も、なんとなく察することができる。
「先人の失敗は、学んで終わらせなければなりませんからな……!」
呪い装備がある=家人が非業の死を遂げて、遺品の引き取り手がないという事実を指しています。戦士は帰ってこなかっただけだし、商人は欲かきすぎwで済まされるけど一般人はね……。そんだけ入手が容易で汚染がヤバかったってことでして。本作の呪い装備関連の設定は、放射能発見初期の「ラジウム水」やら”燐光時計”やらの超鬼激ヤバアイテム(知らない方が幸せでいられる。閲覧ガチ注意)をモデルにしていますので、そういう意味でも「なんで一般人が持ってんねん!!」になる。




