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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
6章 遺失記録:8/30~8/32

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’11年8月30日18:33 東京都■■区■■■■丁目■■-■■ 「とよ子寿し」店内

 後片付けを手伝っていると、それだけでもうお客さんが全員帰ってしまうくらいの時間になって、すっかり陽も傾いていた。書道で使う墨の表面に血を一滴落としたような、へんな暗さとおかしなにじみ方がマッチしていて、忍び寄ってくるような不気味さを醸し出している。


「おつかれさま、二人とも。ずいぶん遅くまで頑張ってもらっちゃって、ごめんね」

「これもアルバイトのうちです。力仕事を苦にはしていられませんから」

「ですよー。スタッフさん、別のことで忙しそうですし」

「ええ、まあ……そうね。あっちはいいみたいだし」


 ご飯でも食べに行きましょうか、ということで駅に戻った。朝からずっと立っていたカウガール風のお姉さんがようやく引き上げようとしていて、これが鉄人か、と戦慄する。お客さんはほぼ帰ってしまっているから、電車に乗ろうとしているのはスタッフさんや参加者で、独特の連帯感があった。


 切符を買って改札を通り電車に乗り込んで、三人が立てるスペースに落ち着く。


「あー、……沿線のお店、ほぼほぼ全滅してるわね。予約状況が終わってるわ」

「ちょっと歩いたところはどうですか?」

「うー、ん……。この日のために事前に押さえてたとこも多いみたいだし。飲み屋も食堂もファミレスも、その他飲食店がほっとんどダメ」

「では、ホテル周りもでしょうか……」


 あそこ高いとこばっかりよ、と端末をいじりつつ地図をあれこれと探していたらしい佐藤さんは、ついに何か見つけたようだった。


「回転寿司、好き?」

「はい!」「よく行っていました」

「じゃあ、ここにしましょうか。大人らしくさっと奢りたかったんだけど、ちょっとお高めのとこだし、……お金だいじょうぶかしら」

「これは経費じゃないんですね……」


 ホテルの最寄り駅に着いて、ちょっと歩く。東京だからか、同じ道を歩いている人もけっこう多い。日が落ちてもこれほど人がいるのは、やっぱり都会だなと感じた。見慣れたというほどではないけど、何度か見たことのある四角い看板が目に入る。


「あ、「とよ子寿し」。あんまり行ったことないんですよね」

「「寿司王」にはよく行っていましたが、こちらは……」

「私もちょっと散財してね。ATM行く? 一人は着席しててほしいんだけど……」

「大丈夫そうなので、行ってきてください」


 指定された座席に行って、佐藤さんを待つ間に回ってくるお寿司を見る。


「麗香ちゃんは好きなのある? 私は白身系」

「光物が好きです。アジが美味しいお店がいいなと思っています」

「いいよねーアジのお寿司、めっちゃ美味しいし!」

「あっ、ちょうど来ましたよ!」


 珍しくはしゃいでいるレーネ……じゃなくて麗香ちゃんの分も取って、光物と白身って結局どう違うんだろう、なんて話し合う。あれこれと話が弾んでいるところに、不意に注文用端末の画面に映像が流れ出す。


「ん、このPVって『ストーミング・アイズ』じゃない? 2Dで見るとこんな感じなんだね」

「ここまで宣伝に力を入れているんですね。たしかに、広く広告を募っている企業だったような気もしますが……」


 いまどき、ダンス動画だってNOVAの3Dで見た方が練習をやりやすいし、端末で動画を見るより、没入型で体感する方がいい。一枚の紙にできることよりも、自分の体で体験できることの方が密度もあるから、そんなに2D動画は見ていな……いこともなかった。


 テレビは基本的に2Dのまんま進化していないし、特撮ヒーローも3D動画にはほぼ対応していない。没入体験の方が楽しいジャンルを除いて、映画も番組も3D動画になっているものはあんまりなかった。大昔は「立体テレビ」なんてものが未来に登場する、といわれていたようだし、実際登場はしたけど、そんなに売れていないらしい。


「プレイヤーをバイトさんにしてお渡し会するくらい、ほんとに力入れてるんだねー……」

「駅にも広告が出ていましたからね。もともと大手なのもありますが」

「ごめん、戻ったわ! もう食べ始めてる?」

「まだです」「一緒にいただきますしましょう、お寿司取ります!」


 イカめかぶとエンガワとふぐポン、佐藤さんは見事にぜんぶ白いやつを順々に取って、みんなで食べ始めた。


「アレルギーないのは偉いわね、好き嫌いは?」

「特にはありません。祖父は「旨いものを最初に食えば好きになる」といって、色々と美味しいものを食べさせてくれて……」

「あ、お父さんといっしょだ。教育のスタンダードだったりするのかな?」

「よく聞くわよね。素敵だと思うわ、私も子供を持ったらそうするつもり」


 みんなぜんぜん醤油もガリも付けていなくて、お茶とワサビだけで食べている。


「佐藤さんも麗香ちゃんも、お醬油使わないんですね」

「私はね、わりと高血圧とか気になってくるお年頃だから……」

「お魚だけで美味しいですよ。遠慮せず、どうぞ」

「や、私も付けないけど気になっちゃって」


 定番メニューをだいたい食べて、盛り合わせみたいなものも頼んで、ジュースやケーキまで平らげた。明日はもうちょっと抑えよう、と内心で焦りつつ、食事を終える。


「じゃ、あとはホテルで寝るだけね。フロントに荷物を預けてあるから、もろもろ任せてー。お会計でカッコつけられないから、そこでくらいカッコつけさせて……」

「あはは……」


 友達で食べに行くときみたいに、みんなでお金を出し合ってお会計を済ませた。

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