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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
6章 遺失記録:8/30~8/32

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’11年8月30日10:31  東京都江東区有明3丁目11-1 にごフェス会場・コスプレブース

 カンカン照りの太陽の下、そして日陰にミストシャワーが用意された涼しい場所を往復しながら、小道具を持って撮影会をしていた。あの子が戻ってこないから、わたしが代わりに声援に応えている。何より、ここにはモニターがあってコメントが流れているから、そっちも見なくてはいけない。


『日本の気温下がってきててよかったな……』『もっとも暑い時期も一日外にいた鉄人たちに敬礼』『カメコだいぶ抑えてんね』『パイプ爆弾持ってたやつ逮捕したってマジ?』『↑なんでそんなの紛れてんだよこえーよ』『危なすぎィ!!』『陰謀論者でしょ』『パトカー動いてない気がするけど』『BTLは動いてたゾ』『鬼ちゃんもうちょっと隠せ?』


「白バニーさん、次あれ、〈熔充送戯〉のポーズお願いします!」

「ふふふ、よく見てくれてるんだねー? クロスしてー、はっ!」


 いろんなところで切り札にしていたからか、かなり強い技だと知れていたからか。シャッターチャンスを用意して、パシャパシャと忙しく働くカメラをねぎらう。


「次は、さっきやってたあの、弓のポーズいいですか?」

「これだよね? “弓取”くんはこんなのかな、ってイメージしたポーズだよー」


 くん呼びしてるんだ、と笑顔を漏らすカメラマンの肩を見ながら、片手でシミターを二本握って上下に出し、弓のような形に構える。くっと親指に力を込め、内側に握り込んでくの字型に曲げてから、中指と薬指を使って逆に曲げる――撃ちだしたものが、肩にいた小物を落とす。


『なんか場慣れしてるよなあ』『しれっと祓ってて草』『横向きでもっかいやってくれるのほんまサービスええのう』『貫通力すごいっすね』『ソ連で生まれた新体操に日本的な見立ての文脈を足し込んでくれるのほんま感涙』『即興でだいたい何でも見せてくれるのすこ』『空気椅子でお靴履かせてくださるしてたのすごかったよね』『リアルがつよすぎる』


「鍛えてますからー。しゅっ」

「そういや特撮も見てるんですよね。お気に入りのやつってありますか?」

「えーと、やっぱり『キラ星選隊イチバンファイブ!!』かな? 最近『スペクトラMSr(ミザリィ)』も観たよ」

「おー、配信限定作品じゃないっすか! ハマってくれてて、同じファンとして嬉しい限りです」


 順番が回ってきたので、カメラマンに手を振って次の青年に回す。妙な熱を帯びた青年は、最初から「投げキッスっていいですか?」とトバしてくる。


「いいよー。ちゅっ」


『やさしい』『配信でもやってた気がする』『やってないぞ』『すべてチェックしてるけどない』『ガチ勢こわ』『そのカメラだいじょうぶ?』『あっ(察し)』『こいつあかんやつやんけ』『I字開脚ぅ!?』『いかんでしょ』『えっいいの?』『ん?』『しごとふやすのやめて???』『今なんかしなかった?』


 フェティシズムにもいろいろあるけど、衣装を透けさせて撮影したい、なんてことを考えている人もやっぱりいる。シャッターを切って撮れたそれを、“わたし”の近くにいる危ない子たちの写真に入れ替えてから、その場でくるっと回ってとかキックしてとか、タイツとレオタード二枚の下にあるものを見たがる注文に応えてみた。


「あ、ありがとうございました! へへ……」


 たたっと屋内に走っていく青年にハットをかぶせて、誰の目にも映らないように消す。


「撮れたッ、――げごっ、がぉあ、がっがっげぐぃ、うぶボっ」


 目がぐるんと回り、見ただけでも脳に侵入されるような感覚に耐えきれず、その場に倒れ込んで、震えながら嘔吐し続けていた。アルバイトの“鬼ちゃん”たちが抱え起こして連れて行く。


「さー、次の人は何が見たい? ちょっとくらいの無茶なら応えちゃうよー!」

「あっ、あのぉ……その仮面を付けてるところ、見たいですぅ」

「あ、Trさん。いいよー」

「ひとつ終わったら、もうひとつお願いしますぅ!!」


 いつもこめかみに付けている仮面をスライドして、解を使うポーズをとる。あの子のファンでいてくれていたのか、「はぁあああぁ」とうっとりしていた。


「こっちもだよね。ちょっとだけ待ってね」

「もちろんですぅ」


 聖堂とブーツとペンギンの仮面をこめかみの方に着けて、こちらもするっと回す。


「こっちはあんまり使われていませんよねぇ。キノコのときくらいでしょうかぁ」

「また配信で使うね。ちぇけらっ、だよー」

「あっああの、最後にちょっと……解を使ってるような、カッコいいポーズお願いします!」

「じゃ、ちょっとだけ移動してー……建物も画角に入るようにしてくれる?」

「はいっ」

「スリー、トゥー、わーん……それっ」


 いつもの「月泳流星のおもて」を使う「融の解:演景に理は溶ける、陽月の頂交わるごとくに」を建物全体に投影する。すさまじいどよめきが上がり、みんながパシャパシャと写真を撮りまくっている。


「え? ……え? どうやってるんですかぁ、これってぇ……」

「難しいことないよー、プロジェクションマッピング。協賛企業にファンの人がいて、作ってもらってたんだ」


『アッハイ』『※館内も塗り替わっています』『ここまでやれるのってどの企業??』『さすがにやるなあ』『どんだけ金かけてんだよwww』『これが本物かぁ』『笑いすぎて星割れたんだけどどうしてくれんの?』『コメ欄さっむ』『演技な方がマシなんだよなあ……』『なんかいつもとファン層違うね』『コミケなんてこんなもんやろ』




「やはり、“あなた”でしたか。何をしているんですか」

「あーあ、バレちゃった」


 ふわりと影をにじませた青年が――墨帖与市が、こちらへ歩いてきていた。

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