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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
6章 遺失記録:8/30~8/32

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’11年8月30日9:51  東京都江東区有明3丁目11-1 東京ビッグサイト野外ステージ

 屋内の企業ブースで、ゲームの公式グッズが入った紙袋を手渡していく。


「あっ、白バニーさん! マジで来てたんだ!?」

「リアル白バニーさんですよー! この後のパフォーマンスも、ぜひ見ていってくださいねー」


 視聴者らしい人もいるし、たぶん知り合いだなと思う人もいた。兄と義姉も夫婦で来ていて、「いつも応援してます!」と他人のふりをしていて、ちょっと笑ってしまった。


「意外と割れてるわね。知名度はあっても、推しのレイヤーさんからって人も多いし」

「いやぁ、ありがたいですぅ……。お二人がぜんぶ持って行っちゃうんじゃないかってぇ、ちょっと怖くてぇ……」

「さすがにそこまで自信ないです」

「やや、でもぉ……」


 お渡し会のアルバイトに来たコスプレイヤーの「Tr(ティーア)」さんは、ふんわりゆったり系のお姉さんだった。正教会のシスターの服装をしていて、私とは正反対の露出の少なさと清楚さをしている。


「ティーアさんは、ゲームの方はどのくらいなのでしょう」

「レーネちゃんほどじゃないよぉ。ただのモブだよ、信じてぇ……」

「その身のこなしを信じます」

「なぁんか悔しいよぅ……」


 まだ朝が早いけど、人が来るペースはけっこう早い。すでに百個以上の紙袋がはけていて、追加で配る小さめのグッズも開封されつつあった。


「おっ、これ「葬送の偽神」のアクスタ!? すっげぇ!」

「おめでとうございます! 強かったですよねー……めちゃくちゃ」

「応援あっての戦いでしたものね」

「同時視聴かと思ったら殴り込みするからさ、見てて楽しかったよ」


 笑いをこらえながら、男性は「んじゃ」と去っていった。ほとんどはモンスターのグッズだったけど、モンスタージョブの衣装を着た男女のイラストをアクリルスタンドにしたものだったり、SDキャラの缶バッジだったりと、わりとバリエーションがある。


「フィエルちゃんは、あれでよかったの? 知ってる人いないくらいマイナーだけど」

「私は覚えててあげようかな、って思いまして」


 時間をさかのぼるクエストで戦った、「ロディリア:クロノルーツ」――「アルバイトさんは先にグッズふたつだけ選ばせてあげる」と言われて、なんだか妙に目についてしまったアクリルスタンドだった。四本腕の錆びた魔女ロボット、といった姿だけど、下半身がツタで作った蛇みたいになっていて、デザインの安定感がない。


「有志が作ったアーカイブにも、名前くらいしか出てきてなくて。十回くらい失敗したらクエスト放棄の選択肢が出る、って書いてありました」

「そりゃ、あの内容ならね。私も、食堂で「クエストに選択肢追加」って話題から聞いたのよ」

「ふわぉ、なんか機密聞いちゃってる気分ですぅ……」

「あら、そろそろステージに上がる時間ね。フィエルちゃん、場所は大丈夫よね?」

「もちろんです! 行ってきますね」

「わたくしもですね。向かいます」


 イベント用に用意されたステージの方に向かい、裏方さんが入るための扉をくぐる。キャップをかぶったおっちゃんが「おっ、待ってたよ!」と手を挙げた。


「えーっと、壊してもいいものが欲しい、だったっけ? 古いコーンとかでいいかな」

「はい。どうにか演目にねじ込んで、そうですね……五つに斬ります。このくらい小さいと処理しやすい大きさなどあれば、目印を付けていただければと」

「自信家だねぇー、まま、すぐやるからちょっと待って。コーンって演技に使えるの?」

「なんとかします……もう思いつきました」


 楽しくハジケるためには、私の脳は一瞬で動く。スパコン並みとまで言うつもりはないけど、ふだんの何十倍ものスピードだと思う。足の指でつかんで、コーンの上に立つ。


「と、っと。これなら大丈夫ですね」

「えっ、靴は!? それに、それ割れる可能性あるんだが……」

「これがいちばん割れにくそうですから」

「いやー、勘も一流なのかね。気を付けて、斬った後はゴミ箱用意するから、拾って投げ入れてくれると助かるね」

「それも演技に組み込みますね。レーネ、お願いね」

「どんな無茶であろうと、やってみせましょう。同じリアルスキル組ですから」






 シミターとボールで変則お手玉をしつつ、私はスポットライトの端を浴びた――


「えっ、なんだあれ!?」「コーンで歩いてる……?」「なに、どういう演目なんだ」「もうちょっと派手に始まるかと思ったら、プロジェクターなしでやるのか」「いやでも、あれ……あれだけ高さが変わってるのに、ぜんぜんお手玉が崩れないぞ!」


 右足の指で三角コーンを掴んで靴代わりにしながら、左足はタイツむき出し、高さがまったく違うけど、これでも歩ける。即興でやってみたけど、コーンはきしみもせず、演技に付き合ってくれた。後ろから付いてきたレーネにぽいぽいとボールを投げ渡すと、代わりにコーンを二本も投げ込んでくる……シミターと三角コーンという、ものすごく変なお手玉が始まった。右足だけでコーンの上に立ち、音楽に合わせて体勢もちょっとずつ変えてみる。


 そしてレーネの方を向き、コーンを一本ずつ投げつけた。音もなく切断されたコーンがごん、ころんと転がり、観客席がどよめく。


「え、真剣!?」「いや、あれはスプレーコーティングの色だ。レジンかアクリルだ!」「木刀で薪を割れるって、ガチで言ってたのか」「すごい……」「よそ見しててお手玉続けられてるのか」「このざわめきの中で反響定位できるんだ」


 くるっと一回転してコーンから降り、トンボみたいなポーズになって、手で受け取ったシミターを三本すべて背中に乗せる。そのまま飛び上がってから縦に回転し、シミターをすべて手に取った。そして、指差す。


 スポーツバッグから細いものを取り出していた男が、びくっと震えた。すっと指を上に掲げると、そこに大きなシルクハットが現れる。ゆっくりと手を広げて――さっと握ると、男はシルクハットに覆われて見えなくなった。くるっと返した手のひらをこちらに向けて広げると、そこにはもう男性の姿はなかった。


「今何やったんだ?」「ホログラム……?」「え、警備員とか来たっけ」「いや、何も聞こえなかったけど……」「マジでなに今の」「マジックとかできたんだ」「イリュージョンとかできる人だったんだねえ」「ここ外じゃね? あれどうやって投影したん」「そうか。これが財田案件ということか」「やっば、凝りすぎっしょ」


 どくん、と。


 奇妙なほど音高く聞こえる心臓の音が、何かと共鳴しているように感じられた。

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