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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
6章 遺失記録:8/30~8/32

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’11年8月30日8:18 東京都港区高輪3丁目26 品川駅内

 八月三十日――なぜかついてきてくれることになった佐藤さんの案内に従って、新幹線に乗り込む。


「あー、実質休みー! 旅費も経費で落ちるし、最高よね」

「お付き合いいただいちゃって、なんかすみません」

「いいのいいの、経費でにごフェス行けるのよ? 自由時間も長いし、ホテルも三人分で部屋取ったから、ゆっくり羽を伸ばせるわー……」

「お疲れなんですね……」


 開発も大変そうだったわ、と佐藤さんは笑う。


「プレイヤーって、いろいろこっちの想像を飛び越えてくるのよ。想定されてるコンボはいろいろあったみたいで、それもしっかり使われてるんだけどね……」


 私がふだん使っている【愚者】と〈道化師〉もそうだし、ディリードが使っている「HPを減らして戦う」というスタイルもそうらしい。ただし、あそこまで強くなるとは思っていなかったし、いろいろとバグもあったけど、仕様ということで正式採用したりもした、ということだった。


「景色は見る? 二時間ちょっと、ずっと話すのもなんだし」

「あっ、いえ……いろいろお聞きしたいです」

「あら。なんでも聞いて、答えられる範囲ならなんでもいいわよ」

「開発の人とか、会社の人もゲームやってるんですか?」

「いきなり飛ばしてきたわね。テストプレイしてる人もいるし、自分のデバイスで遊んでる人もいるわ」


 私はやってないけど、と組んだ腕を前に伸ばす。


「ぜんぶ分かってるからとか?」

「私はあんまりゲームやらないの。あなたのお父さんのとこ、広告部門で働いてるから。配信者の人との折衝とか、イベント企画とかそっちね」

「そういえばですね」

「アナログ派っていうか、リアルにかなり偏重してるのよ。お風呂入ってお肌の手入れして、ちゃんと自炊もしてってやってると、仮想街角(パラストリート)パフォーマンス聞くくらいしかNOVAに入ってる時間ないの」


 きちんと暮らしを大事にしているからこその「時間がない」らしい。めちゃくちゃちゃんとした大人だ。


「アカネちゃんも、最近は練習で忙しくてログイン少なくなってるんでしょ? 現役復帰するとかでも、私はいいと思ってるけど」

「ちょちょっと、ダメですよー。仮にも看板張らせていただいてるのに」

「あら、ありがとう。会社の人間として、お礼を言わせてもらうわね」

「それに……その。私はピーク過ぎちゃってるので、競技の方には、もう」


 一年近いブランクがあったとはいえ、もう少し戻せるかと思っていたけど……体重と筋力のバランスが崩れてしまって、ケガのリスクの方が大きくなってしまった。絞りきれなくなった脂肪は何もかも自分の責任だけど、筋力が戻らなかったのは意外だった。


「パフォーマンスの方には問題ないので、たまにやるイベントとかには出ようと思ってます。あの子はあちこち飛び回ってますから」

「ああ、烏野選手だったかしら? そっちの業界のことは知らないけど、銀メダリストが暇してるわけないものね」


 大学にも通っているし、日本チームとして強化合宿に行ったりもしている。ほかにも名の知れた選手がいないこともないけど、テレビの取材が単独で来るような選手はあの子くらいのものだった。


「ピーク、ね……。アスリートはやっぱり、二十代前半でさっさと引退しちゃうのよね。あなたは何か、その先の夢とかあった?」

「んー、……あんまり上手くならなかったから、ひたすら「ステージに立ちたい!」ばっかり考えてて。それが目標になっちゃってました」


 小学五年生から始めて……上手い人に比べて四、五年遅れていたし、ちょっとずつ開花してきたときにはさらに上手い人がいた。結局大会にも出られなかったし、イベントでバックダンサーをするくらいが関の山で、それでは満足できなかった。


「主役に、なれて。主役にしてくださって、ありがとうございます」

「さあ、どうなるかしらね。あなたが他を圧倒するくらいのパフォーマンスで魅せられるかどうか、まずはそこになると思う」

「タレントさんのブースに人が集まるかも、ですよね……」

「あなたにも集客力はあると思うわ。用意したステージ以外の場所で、即興でやってくれるのもアリ。ちゃんと、ほかの人の邪魔にならないように、だけど」

「そこはできるだけ弁えます、初参加ですし」

「流れを持って行って、人ごと場を巻き込めるなら別にいいわ。そのくらいパフォーマンス慣れしてる人にはそうしてもらってる」


 できればだからね、と佐藤さんは微笑んだ。


 それから、刺身が美味しいあの魚はじつは品種改良で作られたものだとか、あの半島内で美味しいお店やカフェの話だとか、きれいな花が咲いているスポットだとかの話をした。途切れ途切れの会話がなんとなくで続いて、東京に着いた。




「人、多い……!」

「今日は特にね。外国の方もいっぱいいるわ」


 スーツケースを持った女二人連れは、濃すぎるオタクの皆さんの前にはそよ風並みの存在感しかない。すでに推しキャラの服装をして電車に乗り込もうとしている人や、乗り換える前のこの駅でチラシを配っているほぼレッドカードな人もいる。


「車で待ってもらってるわ。混んではいないんだけど、イベントの打ち合わせもあるから、あっちで会場に向かいましょう」

「はい!」


 時計を見て足早に歩いているところを見ると、ちょっとのんびりしすぎたのかもしれない。私も続いて早足になりながら、駅を出て車に乗り込んだ。

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