218【おセンシティブ!】全員でフィエルさまに挑みます。【魔王降臨】(5)
どうぞ。
拠点の前には、メイスを地面に立てたいちごちゃんがいた。
「来たよ、いちごちゃん」
「待っておりましたわ。行こう行こうと気持ちが急いて、仕方がありませんでした」
「遅くなっちゃったね。でも、舞台が整った」
「楽しみですわね」
蒼と黒で固めたボーイッシュな服装と、悪魔のようなツノ。ブーツには山羊の蹄のような装飾があり、前よりは進化したらしいジョブの強さをうかがわせた。
「みんな強かったけど、……どうして、いちごちゃんだけ一人なの? や、ルネさんも一人で来たけど」
「わがままを申し上げましたの。あなたと決着をつけるのなら、自分だけの力で、と」
「バフが強いから?」
「それもあります。けれど、以前はあなたの本領は見られなかったでしょう? わたくしは、本当のあなたと戦いたいのです」
なら、と――まっすぐ向き合った。
「〈座長〉と〈道化師〉、どっちもと……あと、変身も。使うね」
「ええ。よろしくお願いします」
ハルバートを出して切りかかる。ゴゥンッ、と弾かれた勢いに乗って、くるっと回りながら空中に跳んだ。飛ばしたカードはささっと合わせたメイスに弾かれ、着地した瞬間にいちごちゃんの打撃が横殴りにやってきた。〈アクセルトリガー〉で姿勢を横に崩し、そのまま自分を回して軸足を崩しにかかる。
巌のようなブーツを蹴って、ぎゅるんと背後に回り込み、跳んだ。首元に投げ込んだカードは当たったけど、そこまでダメージを出していない。振り返ると同時に振り切ったメイスが、手がしびれるほどの威力で私を弾き飛ばす。吹き飛んだ勢いのまま、取り出した槍を投げて肩を貫いたけど、一瞬地面に縫い留められただけで終わった。がっと掴んだかと思うと、地面から抜いて、肩からも抜いてしまう。
「痛みがないのは、とってもいいことですわね。きっと、痛ければできない動きですわ」
「私もかな。現実じゃできないことばっかりやってる」
武器から伝わってきたダメージは少なかったけど、私は何発かしか受けられないから、ちょっとでもHPは減らしたくない。メイスの威力は見て取れる通りだから、ストレートに受けたら終わりだ。
ハルバートを振るい、斧もフルーケも槍も石突も使ってみるけど、ほとんどダメージを与えられていなかった。メイス自体がものすごく頑丈だからか、弾いてダメージを軽減するやり方がものすごく強く利いている。
「あまり、楽しそうじゃありませんのね」
「だって、いちごちゃんも楽しくなさそうだし」
楽しみにはいくつか種類があると思う。相手を上回る楽しみや、立ち向かうときの挑戦を楽しむ気持ちも、そういう中に含まれるとは思う。すっと避けた反撃に石突で叩き、言葉をなんとか紡ぐ。
「なんか、さ。どっちが勝つかじゃなくて……どっちが殺すか、みたいな顔してるよ。誰も死なないのに」
「――わたくし、そんな顔をしていましたでしょうか」
真剣で、一挙手一投足ごとに力を込めた……異様なくらいの重みがある一撃。ゲームにこんなに本気を出すなんて、と思えるくらいの、とても怖い顔だった。
「怒らせちゃったなら、ごめんね。もっともっと、本気で……〈道化師〉で行くね」
「あなたは……。そうですわね! ええ、お願いいたしますわ!」
ぱちんと指を鳴ら――
「あれっ」
「……〈アクセルトリガー〉は似たような音ではありませんか?」
「それだ!」
「お早めに」
――せなかったので、〈アクセルトリガー〉でごまかしてメインジョブを変更する。いつもの「白バニーさん」の服装に戻り、ボールを跳ねさせ分身し、それぞれが違う武器を持たせた。
「さー、いつものと、前に見たのと見せた後は……新しいやつ、見せてあげるね!」




