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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
5章 今は一人で歩こうローズ:行き雪疾くほどき

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217【おセンシティブ!】全員でフィエルさまに挑みます。【魔王降臨】(4)

 どうぞ。

 私は〈道化師〉として、ボールを足で使ってきた。跳ね回らせながらトランポリンして、大きくして蹴り飛ばすという、かなり変わったやり方だ。でも、そうしなくてもいいくらい強い使い方はちゃんとある。


「こんっ、な! ここまで無茶苦茶な……のが、あるかっての!」

「それが、あるんですよー」


 自動的にぎゅんぎゅんと飛び回る球と、マニュアル操作で本人を狙う球。ボールは最大で2メートルくらいまで巨大化できるから、下手に迎撃するわけにもいかない。そして、相手が撃ってくる魔法もちっとも効かない。


「なに、これ」

「当たってみれば分かりますよ?」


 ムチを振るってその辺の樹を引っこ抜き、ボールの動きの邪魔になるものを取り払う。うっかり球が当たって、ヴァシャンッ!! とすさまじい音を立てて割れてしまった。


硝子(がらす)……〈ゲラチノグラス〉かしらね」

「そう思いますか? ちょっとだけ当たり(・・・・・・・・・)、ですね」


 ガラスのスライムで、ほとんどの魔法は効かない代わりに、ふつうのスライムに効かないはずの物理攻撃が妙に効きやすいという、なかなか面白いスライムだ。元の〈スライム〉がモンスタージョブに登録されているからか、基本的にはどのスライムでも変身できる対象にはなっている。だけど、違う。


「あれ確か、衣装が水着になるはずよ。ビスチェはもっと違うやつだわ!」

「あははー、バレちゃった」


 爆発する符で球を防がれたけど、方向が逸れただけでまだ壊れてはいない。


「ガラスが、溶けて……治ってる。おかしい」

「だって、スライムですから」


 拳で真正面から球を砕いたソノンさんは、爆発のダメージをもろに受けた。ウニのような形になった鉄塊が、紅玉竜の装甲に止められつつ、露出したお腹や太ももを貫いている。


「いい加減イジワルですし、種明かししちゃいますね。〈エボルスライム〉です」

「エボル……エボリューション、ね」

「戦闘中、二回だけ別のスライムに変身できるっていう能力で……能力を使い終わったら、どれになるか決めなきゃいけないので」

「それに落ち着くのね。やりやすくなったわ!」


 白い、ちょっとだけ幼い印象のあるワンピースタイプの水着に変わった。モンスタージョブ〈ゲラチノグラス〉、液体ガラスを生み出して変形・固定するだけの、そんなに強くはないスライムだ。たぶん、私が戦ったらすぐに倒せる。


「って、思うでしょー。ここで仲間を使います!」

「ギャッギグ」

「理外の力を使う強者ですか」

「そうね……〈道化師〉も調教師系統なのよね」


 フィーネが光の剣を振り回し、アズリが飛ばす呪怨が〈占い師〉の能力で弾かれる。


 ルネさんの言葉――「複合系統のジョブを進化させるとき、何を残すか」。その示唆は、すごく大事だった。もっとも、それがなくても自然にやっていたわけだけど……前々から危ないなと思っていたのが、「【おもてさかさま情転図(ローリング・ロール)】を使うとメインジョブの武器とスキルが使えなくなる」という問題だ。


 今の〈座長〉から変身すると、棒や槍が使えなくなる。けれど、私にとってはとくに問題がない。さすがにメインジョブほどとはいかないけど、調教師系統である〈道化師〉の武器とスキルはいちおう使える。だからテイムモンスターを使役できるし、いちおう「ボール」カテゴリのガラス玉も自由自在に扱える。


「やっぱし、あんたを自由にさせといていいことなんてないわね!」

「フィールドは広いし、補給もし放題だし。闘技場よりずっと強いですよー」


 格闘戦で仕留めようとこちらを狙っているけど、空中に浮いたガラス玉を跳ね回る私には追い付けない。そして、フィーネがソノンさんを狙っているから、ほとんど近付けずにあっちと戦っていた。


「だいたいの魔王より、強い、かも」

「魔王は、もっと奥にいるのに」

「これが関門なら、誰も奥にはたどり着けないわね」

「それじゃあ、叩き返しますね?」


 前みたいに、「私は「水銀同盟」ではいちばん弱いかも」なんて言うつもりはないけど……やっぱり、アンナやレーネに勝てる気はしない。この人たちも、もう少しで私よりも強くなるはずだ。勝てるのはたぶん今だけ、アドバンテージがあるうちだけ。


「じゃあ、魔王しますね」

「くっ……!!」


 降り注いだガラス玉が、大爆発を起こした。すてらさんと吟子さんは死亡し、ギリギリで残ったソノンさんはボロボロになっている。お互いの衣装が、バニースーツとドレスに戻っていった。


「あ、イーラ。おかえり」

「ガァーア……」


 生きたタコにしか興味がなかったようで、呪物っぽいタコに攻撃されて、ちょっと不愉快そうにしている。さっさと収納して、降りてきたるるいさんを見た。


「よかった……あの子がうっかり人の味覚えないか、ちょっと心配で」

「好物以外食べないみたいだったわ、あの子。あんまりゼイタクさせちゃだめよ? ペットと人、ご主人様がどっちかはしっかり教育しなきゃ」

「すみません……」

「んー、と。まだ解を使ってないってことは……負け、ね?」


 ふと、アナウンスが点灯しているのに気付いた。


「えっ、進化……?」

「あれ、六回別のジョブに変身すると進化するのよ。これまで、配信みたいな大事な場面でしか使ってなかったのかしら?」

「そういえば、ほとんどはそうですね……」

「図らずも、あの子のためのお膳立てが完成しちゃったみたいね。行きなさい、首はあげるわ。女王の首よ、誇りに思いなさい!」


 ハルバートの〈是暴断〉は、二人を一撃で消し飛ばした。十メートル以上距離のあった樹にも痕が残って、アズリが盾を持ち出してまで風を防ぐ。


「ごめん、みんな……いったん戻って。決着、一対一で決めたいから」

「グギャウ」「いいでしょう」


 ようやくコメント欄を出せる、とコメントに返事をしながら、私は最初からずっと建っていた「NameLLL(ねむる)」の拠点に向かった。

「エボルスライム」


 タウルヴァンス大陸地下やイニーズ地下にいるスライムの一種。どういった姿にでも進化するスライムという種族らしく、成長してもその進化の特性を残したままだったようで、「戦闘中、二回だけ別の姿になる→回数を使い切ると別のモンスターになる」という特徴を持つ。これが原因で「魂の魔石」を集めづらく、そもそも耐性や攻撃手段がまったく別物に変わるため、とにかく人数を揃えないとやりづらいことこの上ない、クソ呼ばわりも妥当なイヤすぎるモンスター。


 モンスタージョブとしては、特性をそのまま引き継いでおりたいへん厄介なのだが、モンスターとして戦うときよりもHPが少なかったり、特技のバリエーションは増えなかったりと微妙に弱い。また、変化は現状に適応して起こったり、本人の適性によって左右されたりするため、モンスターだったときよりもバリエーションは少なくなりがち。属性・武器適性を幅広く揃えているプレイヤーが扱えば、とんでもない事態になるだろう。


 元ネタは『仮面ライダービルド』のラスボス「エボルト」。スライム状の宇宙生物「ブラッド族」の王弟で、自ら「星狩り族」を名乗り、文明をさんざんに弄んだのち惑星を飲み込んで自らの力に変えんと画策する、いわゆる愉悦部的側面も持ち合わせたとんでもない下衆。ずっと厄介な敵であり続け、各種厄介すぎる能力で物語をさんざんに引っ掻き回したが、飄々とした言動は妙に親しみやすく、涅槃のポーズでテレビを観たりもするので、シュールな面白さもある名悪役。物語終盤、本来の姿ばかりかさらに発展した進化態は仮面ライダーシリーズではなく『DB』か『BLEACH』かという規模の大破壊を起こすが、ブラッド族にはまだ、彼ですら「会いたくなかった」とこぼし、彼を惨敗に追い込むバケモノが控えており……(Vシネマ『仮面ライダークローズ』参照)。

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