216【おセンシティブ!】全員でフィエルさまに挑みます。【魔王降臨】(3)
バレンタインっぽい話とかチョコっぽいものは出てきません。ごめん……代わりに母に期間限定のチョコレート入りパン贈ったからゆるして(好評でした)。
どうぞ。
不規則に襲いかかるサーベルを弾き、近くに刺さっていたハルバートを抜く。実を言えば、手持ちの武器はだいたいバトントワリングの延長線上、手癖と指先でしか扱えていない。棒術とか槍術は、なんとか真似してアシストをガンガンに利かせて、とそこまでやってギリギリ扱えているだけで、上手い人から見たら「むちゃくちゃ流」とド下手くその掛け算に違いない。
適当に投げているカードを、なぜかルネさんは避けている。
「どうして避けるんですか?」
「キミはもうちょっと、一撃の威力を考えた方がいいんじゃないかな?」
どこをどう通っているのか、耳で分かる。ものすごく早いけど、どうやって攻めてくるつもりなのか、どういうふうにフェイントをかけるのか、だんだんはっきりしてきた。
「次、こっちですね」
「ここまでとはね!」
せり上がった柱の表面を、上も横も構わずにぴょんぴょこステップして、ハルバートで跳ね回るルネさんの斬撃を弾いていく。空中にも着地しているし、周囲の木々も足場にして、恐ろしいくらいの速度で跳ね回っているけど……変則お手玉で耳を鍛えまくったせいか、すべて聞こえていた。
横から来る斬撃を棒の部分で防ぎ、返す刃を持ち手に滑らせて姿勢を崩し、加速した蹴りで帽子を弾き飛ばす。姿勢の崩し方がすごく上手くて、当てられそうなところにちっとも当たらなかった。
「はははっ、乙女の顔は蹴るものじゃないよ!?」
「当たればどこでも攻撃ですよー?」
私は壁を歩けるから、足場を崩そうと思ったら、地震でも起こすしかない。それができるモンスターもいたけど、人にはちょっと無理だ。速さとランダム性、ふたつで攻めてきているものの、それだけでは弱い。投げたカードをとっさに避けた瞬間に、ハルバートの鉤が引っかかる――ぐるっと巻き込んだスカートを引きちぎるように、突き立った柱に思いっきり叩きつけた。ぐっと踏んで押さえつける。
「どうして気付いたんだい、防御を完全に捨てていると?」
「避けすぎです。ちょっと飛んだだけの土くれまで、最大警戒! みたいに避けてましたよね」
フェイントで飛ばしたけど、ビンゴだった。
「追尾魔法まで避けられる速さだったんだけどね! やっぱり最後は、磨き抜いた肉体を信じよということかな?」
「間違いないですね。それじゃ、さよならです」
首元に三枚のカードを投げ込むと、残りHPを大きく超えすぎていたのか、ルネさんのアバターがバスンッと砕け散った。
「さてとー。遅いけど、強いんだよね、たぶん」
怪獣みたいな大きさのタコが、こっちに向かってきていた。
「好物はちゃんと調べてきたよー。闘技場だと食べたカウントにならないんだけど……一人で倒すの、難しそうだし」
ケージから、イーラと名付けたウツボ=「バイオレントイール」を出す。
「食べちゃえ」
「ゴォーウ……」
ご機嫌な声で泳いでいったイーラを放って、私は向こうから歩いてくる三人を見た。当然といえば当然だけど、相手はきちんとしたパーティーだ。
「ソノンさんにすてらさん、吟子さん……でしたね」
「あの子はラスボスとして取ってあるの。ほんとは私だけでも良かったんだけど、サポートとして来てもらったわ」
「いちごは待っている。でも、待ちぼうけさせるつもり」
「ふふふ。たどり着きますよ、ちゃんと!」
とくに待たずに飛んできた吟子さんのカードを、同じくカードで弾く。
「うちにもタレコミが来てるのよ……あんたが「タイトルタイルズ」でものすごい額を使ってたってね。マナー悪いから次はやるなって言っといたけど、知っちゃったからには」
「そうですね。知られちゃったからには――」
ソノンさんは、どうやら玉竜らしいカードを取り出した。それに対抗するように、私もカードを出す。
「考えることは同じのようね。だけれど、違うところもあるのよ?」
「これも、ただものじゃないですよ」
大枚をはたいて……正教会に払うぶんのお金には手を付けなかったけど、ちょっと余裕がなくなるくらいにはお金を使って買ったカードだ。捕まえてきたのは「BPB」とその傘下、ほぼ最強の人たちで、直接「買うのでもう一枚取ってきてください」とお願いしに行ったくらいだった。そのくらい、強い。
「【おもてさかさま情転図】!」
「【おもてさかさま情転図】」
変身しているあいだにも、さまざまなバフが飛んでいる。あれくらいたくさんのバフが重なれば、戦闘をたしなんでいない人でもアマルガム陣営の誰かは倒せるかもしれない。
上半身はビキニ、下はホットパンツというかなり過激なスタイルを中心に、岩と宝石の鎧を装着している。色は赤、たぶん〈紅玉竜〉だ。見たことはないけど、進化させたのか、どこかのダンジョンの奥にでもいたのかもしれない。貴重だとは思うけど、封印カードにしてしまえば同じだ。魂の魔石を使うよりはずっと、コストとしては軽い。
「そのジョブ、……スライム?」
「そうですよー。あの“最強”さんが「あまり戦いたくない」って言うくらいの」
私の服装はというと、ビスチェだけ……それ以外は何も身に付けていない。下半身はまったくの全裸だけど、山型に盛り上がったスライムになっているから、何の問題もなかった。すてらさんのものらしい光球やビームがいくつも飛んでくるけど、効かない。
「ガラス……!?」
「どうでしょうねー? まずは」
いくつもの球を作り出し、空中に浮かべる。
「硬さ比べ、しちゃいましょう!」
この「カードに封印されていたスライム」は、たぶん作中最凶のクソモンスだと思います。クソオブクソ、マジで本当に最低最悪というかこんなもん調整で削除しとけレベル。まあでも、開発もこれをジョブにしたくて保存してたんだろうな的な使い方ができるので、はい……元ネタ的に罵倒されてナンボだし。




