214【おセンシティブ!】全員でフィエルさまに挑みます。【魔王降臨】(1)
どうぞ。
今回は戦場に立つことになったし、私が挑戦を受け付ける側だ。いちおうだけど、お互いに有利にならないように「コメント欄で戦況報告禁止」という決まりは設定してあった。
「さてとー。今日はこれで行くよ、パッケージ込みの(ピー)!」
『クリームサンドココアクッキーやね』『クリームサンドココアクッキー(迫真)』『商品名はアカンかったか……』『AIくん商品名アレルギーだからねw』『ダメに決まってるんだよなあ』『クリームサンドココアクッキーか……』『何?』『↑お菓子の本で、材料に使うときそういう名前で紹介されてる』『いきなり規制音とかトバしてんなあ』『ちゃんとクリームサンドココアクッキーって言おうね』
百年以上ある有名商品なのに、と思ったけど、いろいろ事情があるようだった。
青いバニースーツが中心で、そもそも青なんてお菓子に使わないのになーと思っていたけど……左右で長さが違う白黒のブーツや、黒の燕尾服っぽいジャケットを見て、クリームサンドココアクッキー(というらしい)を思い出した。ちょうどクラシック版のパッケージも青い。鼓笛隊みたいなシャコーハットや指揮棒も揃って、今日の私はおもに〈座長〉として戦うことに決めていた。
「見てこれ、おでこの部分。ちゃんとアマルガムのエンブレム入れてもらったよー」
『やってんなあ!』『これほんま罠すぎてすき』『賢くないと愚者名乗れないのほんま笑う』『どういうこと??』『↑金貨は焚き火程度で溶けたりしない=ジョークに使う偽物』『いたずらが悪質すぎて逆にもう笑える』『でも愚者アイコンのあれって本物なんだよな……』『金はかじって凹まない方がおかしいしな』
アマルガム陣営のエンブレムは「焚き火でとろける金貨の串焼き」だ。これをどう解釈するかはその人次第だから、私は別にどうでもいいと思っている。アンナととっこがどうしてこんなことをしたのかも知らないし、はっきりと意図を聞いたこともない。でも、同じ考えに至る人といた方が楽しい、というのは分かる気がした。
「さてとー……えっと、拠点作らないとダメだから作ったけど。センスゼロ」
とりあえず初期設定にあった高い塔を建てただけで、中には何もないし、防衛兵器も備わっていない。拠点が破壊されることと、防衛メンバーが全滅することが敗北条件だけど……今回は私ひとりだから、〈座長〉だからといって「拠点を守りながら本体が死なないようにする」のは難しすぎる。
「私のテイムモンスターたちは……紹介してると長いから、いつか記事にしてまとめとくねー。そっち読んで。分かる視聴者ニキは当てちゃって!」
『こないだ戦艦捕まえてたよな』『今回変身するん?』『ギルド拠点にガイコツ忘れてないか?』『関係者来てて草』『だいたいどこのダンジョンで捕まえたのか分かるようになってきた俺は病気』『識者多いから一瞬で当てられるぞw』
まずフィーネとフルルを出して、フウカとライガにアズリとイヴを出した。けっこうレベルが上がったからか、フルルも進化して姿が変わっている。一抱えだった大きさが抱き枕よりも大きくなっていて、大福みたいにもちもちしたところに翼や王冠みたいなデザインが追加されていた。
「好きに暴れていいよ。ここ、どれだけ暴れてもいいところだから」
「きゃあっはははは!!! きゃっはっはっはっは!!」
『こっわ』『ドラゴンブリザード・エレメンタル』『テンションぶち上がってますやん』『まだ大福なのがポテンシャル感じる』『笑い声が完全に化け物のそれ』『無駄にかわいいのに倍音かかっててヤバい』『暴れていいって言われて喜ぶあたりどう考えてもアカンやつやろ』『制御不能な代わりに強いタイプか』
フルルは、気性が荒いというかぜんぜん言うことを聞かないタイプで、賢いといえばそうだけど自己判断しすぎるところがある。めちゃくちゃなくらい強いから、その代償なのかもしれなかった。
さてと、と周囲を見回す。
「視聴者のみんなには、どう見えてるのか分かんないけど……。いちおう私も〈道化師〉系統で、幻惑耐性けっこうあるんだよねー。下げられてても見えてる」
塔みたいな形に身を縮めたタコと、小さなタコが集まって塔のような形になったもの。見えていると分かって仕掛けているのか、崩しに行くと発動する罠なのか、ちょっと分からなかった。あれはたぶん、「魅邪増るるい」さんの仕掛けだ。
ギルド対抗戦で用意されたフィールドの中を、あえてそのまま歩くことにした。森の中の一本道だから、別に迷うこともない。本当の拠点はどこなんだろう、と思っていたら、空から人が降ってきた。
「やあやあ! ボクは「ルネ・エコー」、月光の剣士さ。キミと斬り合いたくて、つい我慢できずに飛び出してきてしまったんだ!」
「あっよかった、まずトップの首を取りに来たぜ! みたいな話かと思っちゃいました」
「あはは、そう思っていないわけじゃないけれど。キミが武器をどう使うか、見たくなってしまったんだ! 色物だけじゃない、ふつうの武器を持っているようだから……ね?」
「まだ、慣れてませんけどねー」
コメント欄をワイプして、コールタールみたいな色の鋼材と、不可思議なほど白い羽をつけたハルバートを取り出した。
「おっと……! 見慣れない材質だね、どんな鉱石なんだい?」
「魂の魔石、です」
ジョブに登録されたモンスターの中でも、それなり以上に強力な個体の魂魄が石になったアイテムのことだ。体を構成する「魄」にちょっとだけ魂の残りがくっついた「魔石」を三つ集めることで、魂と魄の両方が揃った「魂の魔石」になる。【愚者】でもそこまで多くは入手できないアイテムだけど、一人で狩りを続けて、いくつかの種類が自力で揃うくらいの数は手に入った。
「〈メタルストリューム〉ってモンスター、すごく貴重な鉱石をいっぱい落とすみたいなんですけど……ハイムノアの鍛冶屋さんに、外法があるぜって聞いちゃって。レベル高いプレイヤーの〈鍛冶師〉さんも知ってたみたいですけどねー」
体そのものが金属の性質を持つモンスターの魔石を材質にして、武具を作る……〈魂魄鍛造〉というスキルがあるらしい。人形とゴーレム、それに金属スライムの魔石を集めて差し出すと、ゲラゲラ笑いながらやってくれた。どうも、タウルヴァンス大陸はそういう危なめの術やなんかの本場らしい。
「それじゃ」
「――ああ!」
左手を胸の前にかざしたルネさんは、解を使った。
冒頭の「オレオ」(であろうクッキー)の商品名が規制される流れは、直近で頻発している、AIによる過敏すぎる誤BAN問題を揶揄する意図で挿入されたブラックジョークであり、同じ言葉を繰り返す天丼ギャグでもあります。実際には、配信者が自社の商品名を口にしたからと音声を差し替えさせたり、画像にモザイクを入れたりするよう指示する食品会社はないものと思われます。ンなことしてもマイナスにしかならないし。
しかしながら、お菓子作りの本で「クリームサンドココアクッキー」と書かれているものがあり(写真が付いているので、どう見てもオレオであることは明白)、作中の世界観において同じものが生き残っているかどうか不明である点も鑑みて、「似たものの商品名を口に出したら、配信音声をチェックしているAIが自動で音声を規制した」という展開にさせていただきました。いちウェブ作家ごときがメーカーに問い合わせてお手間を取らせるわけにもいきませんので、ご了承ください。この内容がメーカー様に届くことはないと思われますが、「別にええで!」と明言された際には、コメント欄の内容を差し替えます。




