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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
5章 今は一人で歩こうローズ:行き雪疾くほどき

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209/243

209 乗りに乗っているときはもっと乗る

 どうぞ。

 ジョブが進化したことで、私はすごく強くなった。中級で止まっていた魔術も〈上級魔術〉になったし、いろいろとステータスも上がって、これまでとは比べ物にならないくらい火力が出ている。前に戦った「ツカミドリー・クラブ」も、真正面から押している。


「すごいや……これ、適当に出しただけなのに」

「在庫を大量に確保していたことが、助けになりましたね」


 適当にインベントリから出しただけのムチを手に、アズリとフィーネ、そしてフウカとライガに協力してもらいながら戦っていた。ビュバッ、と空気を裂いた一撃が、甲羅の一部を砕いてかけらを降らせる。そしてなぜか、すごい勢いで特技も習得していた。


「〈寿鳴枝生(すずなりしな)り〉」


 この特技で叩くたびにドロップアイテムを強制徴収できる、けっこうとんでもない技だ。しかも、一回使うごとに取れるアイテムがひとつずつ増えていく。ちっとも傷ついていないのにハサミが採れたりしていて、なんだか妙な気分だった。


 そんなわけで、かなりの余裕を持って、前は強敵だったカニを倒せた。


「すごく強くなったね。自分のこととは思えないくらいだよー」

「ギャッギャ、ググ」

「アズリにも並べるようになったかな? フウカとライガは、もうどんどん強くなってほしいけど」

「キュッキュ!?」「コルルック」


 目前のボス部屋には、まだその先がある。何体かボスがいるタイプのダンジョンのようで、広い空間とそこから続く穴が見えていた。見覚えのある円形の空間は、たぶん前に見たことのある場所そのままだ。


 すいすいと泳いできた人魚が歌い出し、空間を取り囲むように空白のオーケストラが現れる。音に反応して動く人形が現れ、こっちに攻撃を仕掛けてくるけど――


「んー。ちゃんと届くんだね」

「ンギャウ!」


 ムチを伸ばしてみると、避けられていたカードとは違って、きちんと捕まえることができた。引きずり下ろした人魚を倒してもらい、まずは戦力を削る。


「キュック」「ルゥイ」

「早くない!?」


 と思っていたら、人形はすでに倒されていた。ここから何かあったっけ、と思ったけど特に何もなく、逃げようとした人魚を捕まえて引きずり下ろすと、戦いは終わった。


「は、早い……? 〈座長〉ちょっと強すぎない?」

「検索……発見。ほかの上級進化ジョブよりも、はるかに困難な条件を満たしています。最難関とまでは言えませんが、かなりの上位に位置します。強くても、つり合いは取れているものと考えます」

「どんな条件だっけ? 〈血濡れ道化師(キラークラウン)〉は知ってるけど、〈夢現霧歩(ドリーマー)〉の方はあんまり……」


 はい、とイヴは応える。


「メインジョブが〈道化師〉の状態で、殺人による罪科の増加が内部時間7日を過ぎても解消されない場合は、意図的に罪を犯し反省の意思がないものとして判断されます。そして、メインジョブが〈血濡れ道化師(キラークラウン)〉に固定され変更できなくなります」

「罪科って、正教会が握ってるんだよね?」

「はい。殺人の完全な隠匿に成功した場合、罪科は加算されません。ただし、露見したときの罪科の加算が三倍になります」

「やっぱりやめた方がいいんだね」


 次はどんなのだろう、と思ったら意外な言葉が出てきた。


「現在就いているジョブに〈道化師〉がある状態で、特定のクエストを受注し、外なる世界に出てモンスターを討伐することで、〈夢現霧歩(ドリーマー)〉になることができます」

「え、どうやって外なる世界に行くの?」

「一般的には、方法はありません」

「こっちの方が難しくない……?」


 抜け道があるだけマシです、とイヴは笑った。


「カテゴリ「不明」のモンスターは、アズリのように、共生モンスターにいつの間にか宿るような形でしか出現しません。〈調教師〉方面を重視しすぎると、カテゴリが偏りやすくなります。購入したり広く旅をしたりと、かなりの困難を伴うでしょう」


 ゆっくりと進みながら、イヴはそれだけ言った。


「……じゃ、存分に楽しんじゃおうかなー」


 岩肌がむき出しの洞窟を歩く。ちょっと細めではあるけど、大きめのフウカとライガも引っかかっていないから、引っ込めなくてもよかった。ちょいちょいと見えている細長い何かは、私の推測が当たっていればだけど、これまた高級食材な生き物だ。


「マスター、警戒を。非常に堅固な装甲のようです」

「っぽいねー。みんな、行くよ!」


 ほんのりと青い光が下から上に、洞窟の向こうから天井あたりに移ったところで、ものすごく大きなイセエビがいるのが見えた。そして、もう何種類かのエビがいる……狭い部屋なのに逃げ場がない、エビ地獄だった。


「えっ、やばい」

「威勢はどうしたんですかマスター」

「いやだって……まーいいや、やる!」


 ムチで攻撃を仕掛けると、イセエビは剣とムチを兼ねたような、恐ろしく大きくて長い触角を振るった。水中のはずだけど、水中のような慣性や水圧はないから、パワーそのままのスピードが発揮されている。バパンッ、と打ち合ったままにムチは絡まり、しゃっと振るう触角に振り回される。


「わっ、わわ……!?」


 そしてイセエビは、思いっきり後ろに跳んだ。壁をぶち破って、海だったはずのものすごく広い空間に飛び出していく。


「ごめん、そっちお願い!」

「承知いたしました」


 がらんとした謎の空間をびょんびょんと跳ねていくイセエビに引きずられながら、私は必死にムチにしがみついていた。

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