206【重大告知あり】水着ぞ夏の証なりける!【プチ放送事故?】(3)
どうぞ。
カメラに向けて、一枚のカードを見せる。
「ふっふっふ。買ってきちゃった……!」
『ここで詰めに来たか』『やると思った』『実際ここでやっとくべきではあるよな』『デフォ衣装がどんな感じになるのかはちょっと興味ある』『↑中級以上は衣装配布ないぞ』『座長って団長なんだよね?』『劇団のことを「~座」っていうから団長=座長や』
全カテゴリのモンスターをテイムすることで、〈道化師〉〈調教師〉〈支援魔術師〉の複合系上級職〈座長〉になれる。〈道化師〉は三つすべての性質を兼ね備えていて、かなりたくさんの特技を使える〈支援魔術師〉の方がカテゴリとして狭いのは、なんだか面白かった。
「これで、ちょろたちが進化すれば勝ちだよー。おいで、〈メッセンジャー・ピジョン〉!」
穏やかなモンスターは、カードから出した直後でも命令を聞いてくれるし、すぐにテイム状態になる。絶対に即戦力にしなくちゃいけない縛りがあるわけでもないし、できるだけ早く済ませたい理由もあった。
ポポゥ、と適当に出した中から果物を突っついているハトをなでつつ、そういえば試していないことがあったのを思い出した。
「〈面歩〉ってさ。水面は歩けるのかな?」
「……試してみたら?」
「ていっ!」
助走をつけて飛び込んでみると、思いっきりバシャッと水しぶきが上がった。
『草』『知 っ て た』『だいたい想像できるやろ……』『水面歩けるスキルはない(マジレス)』『なんだかんだで水面歩けるスキルはないんよな』『浮かべたボールで我慢して……』『それができたら〈遊泳態〉があるわけないだろ!』『プロミナの方で頑張ってもろて』
心なしか視線が生暖かいみんなに「行くよー」と呼ばれて、たたっと走った。
「そうそう、新コンテンツとなりますこちら……「無垢なる孤島」のご紹介を忘れておりました! 危うく完全に忘れるところでした」
「私は忘れてなかったけどねぇ。脱線は見てて楽しいし?」
砂浜の前に浮かんでいる、いかにも幻というか蜃気楼っぽくぼやけた島は、どうやら何かのチャレンジステージらしかった。
「あの島は「無垢なる孤島」といいまして、文字通りの無垢な状態になってローグライトな育成をお試しできる場所です。今の状態からいろいろなものを捨てたり拾ったり、意志の証以外のすべてを失くした状態にもできますぞー!」
「え、っと……? ローグライトってなにかしら」
「私も気になった、聞いたことないやつだ」
「その質問は来ると思っておりました。へい、テロップカモン!」
ずらっと何列か並んだ文字が、空中にホワイトボードみたいに浮かぶ。
「まず、めちゃくちゃ厳しい……マップも全部ランダムで、一回死んじゃったら何もかもリセットの「ローグライク」ってジャンルがあってね。確かに面白いんだけど、ちょっと厳しすぎるかなぁってことで、だんだん強くなれる部分を残したものがあるんだよぅ」
「どう強くなるかもランダム、お金もその場で手に入れていつ使うか自分で選ぶ……。もっとも大きな違いは、拠点に戻って基礎的なところを強化できるかどうか、ですかなー」
『とっこ氏はマジで死ぬほどやってるからな……』『ローグライトは戻ってからも勝負が続いてる感』『ぶっちゃけほぼ全部ローグライトよな』『ガチの方はかなり絶滅に近い印象』『まあ段階的強化なかったら課金させられんし』
微妙によくわからなかったけど、やってみればわかる、と言われて保留する。
「スコアによっていろいろなアイテムが手に入りますので、単なるスキルやジョブのお試し以外にも、やる意味はたくさんありますぞー。ただし、経験値は入りません」
「む……今は稼ぎ時なのに」
「それでしたらあちら、イニーズにつながる海中迷路はかなり儲かります。範囲魔法が使えると、どんどんと稼げてお得ですぞ!」
「最前線のダンジョンだから、一般人向けの宣伝じゃないからねぇ」
『逸般人向けね』『まあ白バニーさんならやれるやろ』『最初っからおかしかったし……』『あの人がお金持ちだったの海の幸で儲けてたからやろ?』『あのクソダンジョンと同じなのか』『やりたくねー!』『アワビの悪夢再びか』『海の幸だいたいゲームだとクソモンス説』『アワビほんまクソすぎて嫌い』『エビもカニもヤバいんよな』
「じゃあ私、ちょろたち進化させないとだから……行ってくるね?」
「あっそうそう、ビッグイベントはまだあるんだよねぇ。フィエルにも……フィエルに名指しで関係あるやつ」
「なんかあったっけ」
「忘れてるね? ほら、来たよぉ」
ふわふわと舞い降りてきた六人は、最近やっと調べて出てきた「NameLLL」でも有名なバーチャルタレントの皆さんだった。
「こんばんは。私たちは「NameLLL@SIs」、あなたに挑戦状を叩きつけに来たわ。この子と浅からぬ縁もあることだし、ね」
「あなたは、吟子さん……」
「ええ。改めて名乗りましょう、私は卦環射吟子。みんなのまとめ役をしているの」
「ご存知っ、誘納いちごですわ!! パワー担当です!」
占い師のような女性が穏やかな口調を崩さずに名乗り、いちごちゃんがそれに続く。残りの四人の人たちは、なんだか微妙に警戒しているような目つきでこちらを見ていた。
「籠護ソノンよ。支配者担当をしているわ」
「どういうことなんでしょう……」
ワインレッドのドレスに金髪ツインテール、コウモリの羽。ものすごく目立つビジュアルだけど、すっごくありきたりな感じがする。コウモリの仮面を身に付けているということは【愚者】なんだろうけど、衣装からはぜんぜんジョブが想像できなかった。
「ふふふ……わたしは魅邪増るるい。あなた、ルルイエに興味はない?」
「海底都市ならこないだ攻略しましたよー」
おっとり系だけど、虹彩が左右ごとにぐちゃぐちゃになっている。まるっとしたボブカットの先はくるっと内巻きに丸まっているし、全体的に四角く収まったゴシック風な服も触手っぽいデザインが盛り込まれている。かなり手間のかかった、オーダーメイド装備のようだ。
「ボクはルネ・エコー。月のように、夜を切り裂く剣となろう!」
「すっごくカッコいいです!」
「はっはっは! キミも美しいじゃないか」
「誰にでも言ってますから、まじめに受け取らないでくださいまし」
羽をあしらった豪奢な帽子、ドレープや金糸の刺繍が入った華美な軍服、下はミニスカタイツにロングブーツ。自ら光を放つような白を基調に、金と青・黄色・紫というロイヤルな色の組み合わせをしていた。口調は男性的だけど、声は甘くて体もしなやか、あんまり剣士っぽくは見えなかった。
「最後。私、歳塔二代目すてら。あなたの周りには、「見せない人」が、多いね」
「義眼ですか? それ……」
「見たくないものが、ある」
「あまり触れないであげて。この子はこうなの」
後ろもロングな、しかもあごの下で結んだ藍色の髪は、右目を完全に隠している。左目もクマがひどくて、しかも明らかに人間の眼球ではなかった。赤っぽい宝石に黒い石が入り込んだようなジュエリーだ。服装はなんだかだるっとした黒いローブで、ブラウスとロングスカートも魔女のそれのように黒い。
「なんか……皆さん、意志の証を隠してるんですね」
「切り札だもの。魅せるときまでは見せない方がいいの」
さて、と占い師のような吟子さんが微笑む。
「私たちは、〈ラフィン・ジョーカー〉に勝負を申し込む。最強のあなたに。そうね、その意味は……あなたの右目が知っている、とでもしておきましょう」
「右目……? あ、わかりました! 受けます」
占い師はやっぱり不思議なことを言うんだな、とあっさり話が流れてしまった。
「NameLLL」については、設定がいろいろあるので全力で作っています。ぜんぶ本筋に関係ないから設定集の方に投げておこうかなと……デンドロでいうアッチ側の人々(小型怪獣を改造して放ったのにあっさり倒された悪役連中とか)みたいなのもいるにはいる、でもお話はそっちに転がらない。設定集の方なら本編と関係ない話もやりたい放題だな、ヨシ! これまではなんだかんだ本編に出てくるものばっかりだったけど「ガチで本編と関係ありません」が出てくるのか……ちょっと感動()




