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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
5章 今は一人で歩こうローズ:行き雪疾くほどき

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202/246

202 世間はあんがい狭いからおててつなぐ(なかよし!)

 どうぞ。

 あっそうそう、と急に海野コーチが言った。


「今日もうすぐ、スポンサーの人が見に来るのよ。時間的に生徒さんいないはずだったんだけど、かち合っちゃうから、ちょっとー……ね、よろしくね?」

「えっ、はい……? がんばります」


 創立者の人はいちおう知っているけど、スポンサーの人は誰だったか、と首をひねる。


「ああ、生徒さんは知らないわよね、スポンサー誰かなんて。明記してるわけでもないし」


 練習に使っている道具や服を作っているメーカー企業、競技そのものに出資してくれている協賛企業。あと、いちおう株式会社扱いだから、このスポーツクラブの直接の出資者扱いになる企業さんもあるらしい。


「墨帖繊維工業さんってところでね。蚕両の方に本社がある、全国規模のすっごい会社よ。社長一族が、牧塩が地元だってことでスポンサーやってくださってるの」

「今日、後継ぎさん来るって」

「え!? ちょちょっと、それ先に言っといてよ……えっ、どうしよ」

「練習アタシが見てるから、海野先生は安心して」


 ぐっとサムズアップしているけど、安心できる要素がどこにもない。


 そんなわけで、アレーナ先生に見てもらいながら、ベリーダンスのシミターや新体操のクラブなんかをあれこれ混ぜた、雑多お手玉をしていた。ジャージで練習しながら、やっぱりレオタード買っといた方がこういうときのために良かったかな、でもめったに来ないだろうしなー、とぐるぐる考える。


「アカネ。手先だけで演技できるなら、話しながらにする?」

「あっ、すみません……すぐ話題尽きちゃいませんか?」


 できる気あるのね、とちょっと呆れられてしまった。


「じゃあ本番に近くして、回転入れて三周、次はジャンプも入れて三周。横跳びしながらもしよう、ステップも大事だから」

「はい!」


 くるっと回りながらお手玉をして、ジャンプしながらのお手玉と、左右にステップしながらのお手玉もやる。ステージを用意してくれている星見遊戯場株式会社さんが、「ボールの上でやるのはいかがでしょうか」と――安全上、そこまで弾むボールではないし転がせないけど、そういう提案もしてくれた。身近で地上でお手玉するだけなら、きっとこのクラブの年少さんにだってできてしまうから、すごそうなオプションを付けようという判断だ。


「じゃあ次は、ですね!」

「ちょっと待って、いったんおしまい」

「ああ、いい。続けてくれ」

「あっはい、続けます……」


 スーツの男性と、その息子らしい青年のふたりがこっちに来ていた。変則すぎるお手玉をじっと見て、すこし首をかしげていた。


「あー、その。これは……あれか、デパートでやるパフォーマンスの練習か? なかなか面白い試みだな」

「この子、にごフェスに出るんです。企業ブースでコスプレしながら」

「ほお! おお、そうか。どこの会社だ、うちの手が届くところならいろいろできるぞ」

「ど、どこだったかしら、アカネ?」


 星見遊戯場株式会社さんです、と答える。


「ああ、あれかー……『ストーミング・アイズ』? 春に出たゲームだったかな。お前もやってなかったか、与一」

「ええ、父さん。これでも少々の実績はありますよ」

「ゲーム内のすごい人ならだいたい倒しましたよー?」

「ははは、これは面白い。僕も、最強と謳われる人を討ったんですが」


 なんとなくお互いの正体に察しがついて、ちょっと気まずくなる。


「……休憩にしようか。話しておいで」

「行ってきます」


 まるで手をつないでもらえる前提だった子供みたいに、「ヨイチ」と呼ばれていた青年は手を空中に彷徨わせていた。


「おてて、つなぎますか?」

「え? ああ、いや……僕は何をしてるんだ」




 自動販売機のある下駄箱近くまで歩いて、「なに飲みますか」と聞いてみた。


「レモンティーを。って、いやいや……僕がおごりますよ、いまお財布持ってないでしょう」

「ふふふっ、すみません。じゃあ図々しく!」


 と言いつつスポーツドリンクのボタンを押した。なんだかんだ、自販機で買うと高いから、おごる人からしたらけっこう驚くジュースの代表じゃないだろうか、と思っている。


「ここで……いや、現実で会えるとは思ってませんでしたよ、フィエルさん」

「こっちもですよー、ホウイさん。ディリードさんが負けたなんて、一度も聞いたことありませんでしたから」


 最強、「と謳われる人」。ディリードが最強なのは事実で、結局対人戦では無敗だ。そして、あの人とギリギリ相打ちになったのは私だし、あのときのホウイさんはアマルガム所属ではなかった。別界隈の最強がいるなら別だけど、「最強ではないかもしれないがそう言われている人」は私で、それを倒した人はたった一人だけになる。……自己申告だから、大きなことを言っているかもしれない可能性はあったけど。


 缶を差し出してくれたヨイチさんは、手近にあるベンチに座った。ちょっと近めに座ると、少しだけ距離を空けて座り直されてしまう。


「ほんとうに、現実でもパフォーマーだったんですね。しかも、十万人規模のイベントで」

「いやー、ほんとにたまたまで……。お恥ずかしいところお見せしないようにって、必死で練習してます」


 ゲームと同じことはできないから、見た目の派手さはどうしても劣る。現実ってこんなもんか、とは思ってほしくないから、少しでもハジケて面白いものを見てほしい。という感じのことを語っていると、ふいに鎖骨のあたりにあるタトゥーが目に入った。


「それ、どうしたんですか? 名家の後継ぎさんなのに」

「そっ、その目……!?」

「クマもすごいですけど。ちゃんと寝られてますか?」

「いえ、……大丈夫です」


 座っている場所が一瞬で何センチかズレた気がしたけど、表情は戻っていた。


「白バニーさんの衣装でやるので、ぜひぜひ見に来てくださいね。好きでしょー?」

「くっ、どうしてバレてるんだ……!?」

「ふっはっはー、この年にもなったら視線がどこ見てるかくらいわかりますよーだ」

「急に子供っぽいことを!」


 立ち上がって、飲み終わったジュースの缶を自販機の横にあるごみ箱に捨てた。


「“あなた”のことは、少しわかりました。仲良くなっておいて、損はしないようですから……現実でも、良くしてくださると助かります」

「それはもちろん。というか、私がヨイチさんに頼っちゃう側だと思うんですけど」

「確かに。僕は出資する側の人間でしたね」

「どうでしょう、このスポーツクラブ」


 いいと思いますよ、とにこやかに応えてくれた。


「小規模ながら、優秀な先生が揃っているようですね。もともと、スポーツはどの地方からでも国の代表が出るものですが、十五年で三人を世界に送り出している。なかなかない成果です。一見すると関係のなさそうな分野にまで進出していますから」

「してます」


 ちょっとだけ見上げるくらいの青年は、優しく微笑む。


「社としても、個人としても。応援させてください」

「ありがとうございます。がんばりますね!」


 ひょいっと顔を出したアレーナ先生に手を振って、私たちは体育館の方に戻った。

 6章「記録」(仮)はすべて、前回のような形式で書きます。そのあいだ前書き・あとがきはすべて存在しないため、一切のノイズなしでお楽しみいただけます。説明はいっさい行いませんが、劇中で起こっている以上のことはありませんので、ご理解の妨げにはならないものと想定しております。ご了承ください。

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