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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
5章 今は一人で歩こうローズ:行き雪疾くほどき

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198 猿は三つ問う、人を憂うがゆえに

 どうぞ。

 動物系とはほとんど戦ったことがないけど、今回ばかりは一人じゃなくてよかった、と内心でほっとしていた。ものすごく単純な名前で、ひねりもないデザインなのに、ボスモンスター並みに強い。


「重い……ですね」

「フィーネが言うほどなんだね」


 現実のクマも「パワータイプな大型肉食獣」の代名詞だけど、宝石の柱を包む銀細工のようなフィーネが「重い」ということは、なかなかない。筋肉がすごい敵や重い敵もいた気がするのに、ここまでイヤそうな声は初めてだ。


 ボールをお手玉して翻弄し、分身にカードと飾剣で攻撃させてみても、私の火力はぜんぜん足りていない。むしろ、いつものように笑っているフルルや、剣も盾もしっかり攻撃に使っているアズリの方が警戒されていた。


「ギャッギャ」

「うん、いい感じだよ!」


 アズリは、言葉が通じないなりに「この仮面と同じデザインの盾が欲しい」という要求を、身振り手振りで伝えてきた。どういう意味だったんだろうと思ったら、盾で攻撃を受けたとき、相手に倍のMPを消費させたうえ、その分のMPを吸収するという性能があったらしい。特技や魔法を使っているモンスターは多いから、どこでも腐らない性能だ。


 クマの打撃を逸らしたアズリは、ぐんにゃりとズレた体幹へ切り付ける。頭上からぶつかったボールに氷、横合いからの蹴りも合わさって、どんどんとクマは削られていった。なぜか現れたリスはさっとカードで封印して、できるだけクマに集中する。


「ゴルォウァ……!」

「グギャオ」


 前衛多めなのが正解だったのか、ものすごいコストをかけまくったのが良かったのか。フィーネもアズリも、ほとんど回復する必要もなく、クマを倒しきった。


「お疲れさま。フィーネは魔法の方がいい?」

「自動回復でどうにかしましょう。アズリを甘やかしてあげてください」

「あ、うん。やっぱり回復できる味方増やさないとね……」

「ギャッギャ!」


 プロミナの方で作った「フルーツポーション」の味は、お気に召したようだった。ぎゅるっとずらした仮面の隙間から飲む様子はかなり不気味だけど、シミュラクラ現象というのか、人の顔を「意味のあるもの」として捉えすぎてそう思えているのかもしれない。


 封印すると経験値は入らないけど、術師タイプの敵はできるだけ捕獲して、あとから性能を確かめることにしていた。フルルだけあんまり面白くなさそうにしているので、イヴになんとかごまかしてもらっている。


 がさり、と音がしたのでカードの準備をすると、イヴに止められた。


「マスター。植物はともかく、動物の術師は捕まえても意味がありません」

「え、なんで? 動物の方が賢いんじゃないの?」

「そこまで知能が発達すると、薬や呪術まで作り出すからです」

「えっと……攻撃に偏る、回復はしないってことでいい?」


 役割が細分化されすぎると、重複を気にして廃れていくものがある、らしい。コップとマグカップとタンブラーが一人暮らしの食器棚にあっても、結局どれか使わなくなる……なんて、どこかで聞いた気がするから、そういうものなのだろうか。


 フルルを片腕に持ち替えたイヴは、よっこいせと揺すってから樹上を指さす。


「見ていますね。あそこにいるサルの術師……それぞれ【賢者】【常人】【愚者】のようですが、意志が分かれるほど進化するのです」

「同じ種族だと意志も同じ、って聞いたんだけど」

「それは個性がないからです。わたしのように、デザインできる創造主がいれば別ですが」

「あの水の球、すごかったんだねー……」


 確かに苦戦したし、倒しただけでスキルがもらえるくらいの難敵だったけど、こうしてみるとどれだけすごかったのかが分かる。


「きゅっふ!」「ギャッググ」

「頼もしいなー。でも、降りてきてくれるのかな」


 しゃっとカードを飛ばしたけど、サルたちは難なく杖や刃物で防いで、こちらに近寄ろうともしない。そして、顔に独特の刺青をしたサルが口を開いた。


「【愚者】よ、問う」

「わ、しゃべった!」

「己が罪を知らぬものは罪人たりうるか、否か。知らず禁を破るものは禁を知るべきか、否か。厄災はのちの恩恵によって慶事となるか、否か。哲人は無為にこそ多くを割くが、これは無私の行いであると約束しよう」

「ごめん、文字で言ってくれない?」

「マスター、恥を晒さないでください」

「……樹に刻もう」


 ちゃんと譲歩してもらえた。イヴの憐れむような顔がちょっとつらい。樹に浮かび上がった文字を読んで、答えを考える。


「えーっと……。罪を知らなくても罪を犯したことになるか、かー。それはなるんじゃない? だって、罪は自分のものじゃないし」

「マスター……! よかった、倫理はきちんとあるのですね!」

「私のことなんだと思ってるの……」

「では、二つ目は」


 知るべきだと思うけど、と答えた。片手で枝にぶら下がって遊んでいる【愚者】のサルはともかく、隣にいるのに話の内容を理解していなさそうな【常人】のサルの方が気になる。


「これも、みんなが決めたことでしょ? 次に破らないように、覚えなくちゃ」

「ヒトはかくも規範にこだわるのだな。では、最後の問いは」


 少しだけ、意味が分かりづらかった。厄災のあとに恩恵が訪れると言われても、具体的に何かを想像できない。こちらが理解していないのが分かったのか、質問のしかたを変えてくれた。【賢者】というけど、まるで先生みたいなサルだ。


「洪水のあとには、大地に栄養が戻る。噴火のあともそうだ。地震いによって土地の高低が入れ替わることもある、新たな井戸や鉱脈も見つかる。【愚者】よ、そなたは厄災を吉兆として喜べるか?」

「いや、災害はふつうに災害でしょー。畑むちゃくちゃ街ぐっちゃぐちゃで「これからいっぱい頑張れるぞー!」って言えないよ、私」

「ヤハハハーっ! こいつ【愚者】! 骨の髄まで【愚者】だねぇー!」

「哲人さまの問いは、ぼくらにもわからないよ……」


 急にしゃべりだしたサルは、遠くを指して言った。


「こう答えたのなら……急ぐといい。ラードーンはすでに没した」「動物たちが、みんな神木に向かってるんだ。何か起きてる」「ヤハハハ、脳も心も融けるまで永らえるのに、みんな賢くなりたがる! ばーかばーか、みんなバカぁー!」


 フィーネの方を向くと、「禁断の果実でしょうか」と不安げに言った。


「察するに、ですが……神木に到達することで、長寿と知能が手に入る。その守護者が最近死んだ、という話の流れのようです」

「不死身の敵が誕生するのでは? 急ぎましょう、マスター」

「そういうことだったの!? 急がないと」

「ギャッギギ」「きゃあっは!!」


 全力で走ろうとしたところで、前方に以前見たフルムのような、花の騎士が現れた。速攻で黒いカードを人数分投げる――


「えっ、封印できない……!?」

「マスター、これは【愚者】に起こる敵の強化イベントなのでは」

「……そっかー。じゃあしょうがないね」

「力は尽くしましょう。主にわたしが殴り合うわけですし」


 あきらめ気味のフィーネが、花の騎士に突進していった。

「【愚者】+モンスターに逃げられる+罪科プラスなのに秩序寄りの回答をする」=「禁断の果実」ルート開放。蘇生アイテムの材料が落ちるので、アホほど周回されている場所でもあります。まあ、フィエルは回復アイテムぜんぜん買ってないから知らなかったんですね……で、逃げたやつが進化して出てきます()

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