196 ひとつひとつ!(抜けもある)
どうぞ。
にこやかながら「用事は終わった」とばかりに去っていく三号人形さんの態度も、こうやってべたべたしているなら仕方ないかなとちょっと思った。
「では、始めますが」
道化師系統の中でも、サーカスの猛獣使いをモチーフにした〈座長〉は、テイムモンスターを使役して戦う上級職だ。そこまでは知っていた。
「〈座長〉の武器適性は、〈道化師〉ほど幅広くありません。本体性能もやや落ちるため、直接戦闘では少し不利になるでしょう」
「じゃあ、やっぱりモンスターを揃えるべき?」
「はい。ムチ・指揮棒・カードが適性A、ステッキ・槍・棒が適性Bです。依存ステータスはどれも低いため、テイムモンスターにバフをかけることが最適解となります。武器を使う場合、ムチと指揮棒のどちらかを選ぶとよいでしょう」
いちばん高くなる器用に依存する武器だから、ちゃんと強くなる。と思ったら、そっちには繋げない話になった。
「現在、テイムモンスターの傾向は前衛3体・後衛2体・支援2体、非戦闘員が2体。支援要員を増やすこと、また回復ができる味方を増やすことを提案します」
「あ、データ参照ってそこまでできるんだ。確かにそうなんだけど……もうちょっと整理してもいい?」
「詳細なデータをお求めですね。かしこまりました」
まずは前衛、「司編の銀姫フィーネ」「パラノーマル・カオスマスカル」にあの剣=「原初の魔剣(仮)」。基本的にはむちゃくちゃ固い、しかも攻撃性能まであるかなり強いモンスターたちだ。
「後衛2体と言いましたが、実質的には「フロスト・エレメンタル」しか機能していません。「フューチャーシード」……ではありませんね、「スプラウトフェアリー」はまだ寝ているようです。目覚めることなく進化を続けるのではないでしょうか」
「最終的にどうなるの、それ……支援2体はちょろたちだよね?」
「はい、「スニーク・ハイリザード」です」
そして、今はただの「スケルトン」であるシシィと、イヴもいちおう非戦闘員扱いらしい。こうしてみると、確かに偏りまくっていた。
「主に物理攻撃、速度デバフが主体となっていますね。属性攻撃やHP回復ができる味方を増やし、いずれかの強いと判断した能力をバフできる味方をテイムする。この方針はいかがでしょうか」
「めっちゃいいと思うよー。最近、アンナも忙しいから……」
ふんすと自慢げなイヴの頭をなでなでして、クエストの進捗状況をチェックしたけど、結局まだ虫・魚介・動物・鳥類・ドラゴンの五種類はテイムできていなかった。ちょろたちがドラゴンになるとしても、まだ四種類足りない。
「この枠の中から、バフと回復確保する……? のかー」
「発想が固くなりすぎです。〈座長〉はたくさんのモンスターを従えるもの、種類かぶりがあっても問題はありません」
「あ、それもそうだった。かしこい」
「ほっぺと同じく、イヴの頭脳は柔軟なのです」
もっちもっちとほっぺたを上下にむにむにして、目を細めて嬉しそうにしているイヴをたくさん褒める。
「ドラゴンはバフにも長けていますが、マスターがテイムしていないモンスターの中に、回復に特化したモンスターはあまりいません。植物か精霊を増やすべきでしょう」
「イメージ通りなんだね。合計レベルとかスキル多めのやつがいいなー」
「なるほど。とても欲張りなマスターだから、私にここまでの器臓を詰め込んだのですね。ただ稼働するにはあまりに過剰なスペックだと思っていました」
「そこまでやったかな? ちょっと強めの命令が下ってて、頑張ってほしくてさ」
――NameLLLの人たちが、戦いたいって言ってるんだよぅ。
――配信で映える強者は、フィエルさんしかおりませんので。
――「BPB」と「水銀同盟」を両方揃えるか、フィエルさん一人を差し出すか。
――ごめん。私の戦法、もう種が割れてて……
一人でギルド対抗戦に出場し、いちごちゃんを含めたNameLLLの人たちと戦って……できれば勝ってほしいと、言われてしまった。
「というわけで、合計レベル三百から五百くらいに育てたくて」
「人でその程度ですと、四段階進化ほどしておく必要がありますね」
以前なら「タイトルタイルズ」で涼花さんからお買い物もできたけど、まだ借金は四百万ディールくらいしか返せていないから、金銭的にはかなり厳しい。ぱっと使えるお金は二十万ディールくらい、情報も自力で調べて自分でテイムするしかない状況だった。
「改めて、マスター。私は「アーティライトドール:イヴ」。情報分析と敵の無力化を得意としています。すべての出演情報に載れるよう、精進してまいります」
「ちゃんと、劇場持つ前から支えてくれたって言っとかないとね」
大陸の攻略を進めるよりも先に、こっちでは見込みの薄いモンスターはテイムしておかないと、次のギルド対抗戦に間に合わない。
「虫と鳥はいいとして、動物と魚介はあっちだよね……」
「はい。ラビウム島はとても肥沃で、自然豊かです。タウルヴァンス大陸の砂漠地帯と比べれば、差は歴然でしょう」
「やっぱり、砂漠地帯以外もあるんだよね?」
「ハイムノア以北は寒冷地帯です。アイリウェールも同様に。自然に恵まれた土地は、砂漠を突っ切った先にしかありません」
魔王虫を倒したからもう大丈夫、というわけでもないようで、砂の中にワームや蛇みたいな竜がいる可能性もけっこうあるらしい。
「動物であれば、カンデアリート付近がよいでしょう」
「よし! じゃあさっそく行って――」
セーブポイントに触ると、「まだ転移先のセーブポイントに触れていません」とテレポート不可能のメッセージが出た。
「……ベルターから行こう」
「珍しいこともあるものですね」
そういえば一度も向かっていないのを忘れていた。
昔は硬派でしたが、今は「かわいがるなら人型でもええか……」ということで、モンスターの人化も許容できるようになりました。代わりにガチモンスター(言葉すら通じない)も入れる、気性難のガチヤバも入れてみる。今のところの予定は
虫:みんな想像してるであろうアレ
魚介:お前それ好きすぎだろ……ってなるアレ
動物:またかよ! ってなるアレ
鳥類:タイミング的にまたかよ! ってなるアレ
ドラゴン:ちょろたちの進化系
こんな感じ、の予定。魚は変わるかもしれない……




