194【ギルド対抗戦】夜を征服しますわ!!【先輩がたといっしょ♪】(5)
どうぞ。
コールと同時に、仮面が発光する。どうどうと噴き出す激流は、しかしどこにも流れて行くことはなく、足元に溜まっていった。
『なにっ、が……!?』
『ほっほお、重ねるのか!』
共鳴アビリティ、そして二人の解の同時使用。それほど大きくもない水槽型の物体を一定時間設置するだけの解と、一定の大きさを持つ空間内を満たす程度の水量を噴き出すだけの解。たった三十メートルほどの、水の立方体が完成する程度の現象である。まったく虚構の空間を作れる、真なる聖杯の力とは比ぶべくもない……きわめて限定的な現象を一定時間起こすだけであるため、詳細な改変が利かないところもまた、聖遺物と比較するにはあまりに矮小すぎた。
『鎧を脱げ! 水圧だけで死にかねん!』
『し、しかしっ……』
立方体の一辺は約三十メートル、つまり水深も同じになる。平均的な人間が潜ることができる深さは五メートル少々、それ以上は特殊な訓練が必要になり……三十メートルという深さは、肺活量や年単位の訓練、才能が必要になるだろう。当たっただけで死亡したものが数人、押し流されて散開するほかなかったものもさらに数人。げらげらと笑いながら立ち泳ぎで流されていく「銘菓ラヴィータ」の面々は異常者だとしか言いようがない。
水面に立つ少女は、先ほどまでのドレスとは違い、フリル多めのかわいらしいビキニを身に付けていた。蒼と白で彩られたそれは、しなやかでバランスのよい体を美しく飾っている。
『こいつは――』
『〈遊泳態〉だっ、なんでもいいからカウンターを使え!!』
人魚や魚などのモンスター、そしてそれらを参照するモンスタージョブが持つパッシブスキル〈遊泳態〉は、ごく小さな動作での急制動を可能にする能力だ。ぬるりと滑り込んだ青い剣が、どうにか樹にしがみついて流されまいとしていた「鮮血紅夜」のメンバーを切り刻んでいった。
(水中での行動は、特化型でもないとかなり不利になる……! どうしてここまで都合のいい組み合わせがあるんだ!?)
オートカウンターでは、それほどダメージ倍率も回数も稼げず、フレイガはすぐに敗北した。
「……きちんと、見られなかったな」
「いや、まだ居るで」
「予測済みだ」
「そうつまらんこと言わんと……」
予測を上回ったのは二人の解のみ、そして魅せ技としても【おもてさかさま情転図】は役不足に過ぎた。それなりに強いことは確かながら、面白いと言えるほどの活躍はない。
(……本気を出すほどの相手がいないか。属性を切り替えて戦える幻使いに、大小使い分けるサモナー、MP供給係にサブアタッカー。幻を見破ったうえで複数属性や武器を使い分ける、MP切れもしないうえに仲間も呼び出せるキャラ。名指しだな、〈ラフィン・ジョーカー〉……)
かなりのカオスを制したのは、おおかたの予想通り「NameLLL@SIs」だった。強いことには間違いなく、性能の嚙み合わせも悪くはないが、バーチャルタレントの戦い方としては少々本気度が高すぎる。
「……やはり、強い敵が必要か。どうする、オメガ」
「いやいや、ヒールは嫌だよ? やっぱり呼ぶしかないでしょう」
「そうなるな。お前はどうするんだ、涼花」
「うちは元から強うないんやって……TTは商人と職人の集まりやねん」
玉鋼陣営の本隊である「BPB」は、どこと戦うにしても、適切な強さではない。そして、彼女らが配信を行うにあたってファンを喜ばせるには、それなり以上の善戦と見目のよい相手が必要だ。現地で強いからと銀髪の美丈夫を連れてきても、ファンは喜ぶまい……それが余裕を持って勝てばなおさらである。
「あのタコを用意できてるあたり、だいたいのボスには勝てるよね。「水銀同盟」より強いんじゃないの?」
「フフフ、そうかもな。だが、不戦敗はあり得ない……大陸から戻ってきたときどうなるか、期待しておこう」
多窓している画面のひとつには、フェルニコラズから先に進んだとっこたちの姿もあった。勇者と名乗る青年を次の街に送り届け、ゲノ=メニエフにいるフィエルと連絡を取って、マップをひたすらに進んでいる。
(正教会統治下の港があったのは、ハイムノアか……? ほかの船にも乗れるなら良かったが、旅人は妙に冷遇されているからな)
ここのところ姿を見せないフィエルのことを考えながら、ディリードは闘技場を出た。
いろいろと放置しているネタがあるので、そろそろ使っていきます。あ、そうそう……
〈遊泳態〉
魚類・人魚・水の精霊系のモンスター/モンスタージョブ全般に付随するパッシブスキル。泳ぐスピードが大幅に上がり、ごく小さな動きで泳ぐことができ、ごくわずかな動きで急制動も行えるようになる。その代わりに体にヒレや尾びれのデザインが追加され、通常の歩行が不可能になる。類似スキルの〈浮遊〉か〈遊離〉を持っていないと地上での行動がきわめて難しくなり、這いずることしかできなくなる。
元ネタは『仮面ライダー555』に登場する怪人「オルフェノク」の形態変化のひとつ「遊泳態」。かれらの中には、テンションの変化によって強化形態(?)になれる素質を持つものがおり、激情態や疾走態・飛翔態・遊泳態など、もともとが人間とは思えないほど姿を変化させるものもいる。ただし、劇中での描写を見る限り、形態変化したからといって強くなっているわけではない模様。かれらの抱える致命的エラーにも抵触している可能性があるため、よいものであると断言することは難しい。




