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11 玉華苑

 いっちばん設定を作りまくった……せいで設定集を作ることになった原因、登場。


 ではどうぞ。

 元の場所に戻って、全員分の種を同じ場所に植える。ふつうの栽培ならかなりNGに近いやり方だけど、合体してドールハウスの扉みたいなものが現れた。


『話は入ってからにしようよぅ。すっごい長引くから』

「長いというのは、どの程度なのでしょう」

『複雑すぎて説明しきれないくらい? 長いよぉ、ほんとに』

「そ、そうなのね……」


 アンナは、手元に現れたカギをたんと叩いて光に変わり、中に入っていった。同じようにすると、だだっ広い木造のホールに入った。


「おぉ……道場どころか、体育館より広いですね」

「たしかに、広いわね」


 屋内でも顔を隠したままのシェリーは、廊下の方に足を進めようとして止めた。


『さてと。じゃあ、説明始めるね? とっこもよろしく』

「わかっておりますぞー。〈玉華苑〉というのはですね……」


 木に種を植えてホームを作ったように、人に種を植えることで〈玉華苑〉……人の能力を別次元のものへと高める、文字通りの“裏庭”を作れる。いろんな草花や木を植えたり、肥料を埋めたりして、どんどん色んな性能を追加できる、のだそうだ。


「えー、メモメモ……あった。「残響」「光芒」「波濤」「火花」「砕焔」「飴玉」「凝結」……の七種類がありましてー。お花や木を植えると、条件ごとにダメージが発生するのです。いろいろ試してみて、分からなかったら相談してくださいな」

「概要だけしか言ってなくない……?」

「セオリーは固定観念を作ってしまいますからなー」

『そうなんだよねぇ。木は二本植えた方がいいかな……だけ?』


 手元に出した種をアナウンスに従って使ってみると、ポンとチュートリアルが点灯した。


「じゃ、ちょっと行ってくるね」

「ごきげんよう。わたくしも、失礼しますね」




 風景がふわっと溶けて、どこか広い空き地みたいな場所に降り立った。地面は砂地で、石もごろごろしている。ちょこっとだけ生えている草が、余計にわびしさを際立たせているような気がした。


『チュートリアルへようこそ。〈玉華苑〉の育て方、もう知ってるんだったかな?』

「いえ! 教えてください」


 キャラクリエイトのときにいた看板頭の人が、にこやかに(?)説明を始める。


『植物を植えて、天に星を置く。すると、太陽や月の光を受けて植物が成長するんだ』

「水やりはいいんですか?」

『だいじょうぶ、雨や土の湿度で育つさ。でも、土の湿度はその土地の全体像を決めてしまう。そこだけは注意点だね』

「砂漠にしたら雨が少なくなる、ってことですね」


 そう、と看板頭さんはうなずく。


『環境にあった植物以外は植えられないから、気を付けるんだよ。土を別物に変えると、合わない植物はみんな枯れてしまう。これも、忘れないようにね』

「すっごい基本ですね」

『うん、よく理解しているようで安心したよ。では、まずはこのバーチャル版で試してみよう。いきなりでは不安だからね』

「よかった、お試しあるんですね……」


 ふつうの土が広がった花畑みたいな土地が、ちょっと青く透き通った状態で表示される。いくつか表示された種からチューリップを選んで植えると、縦に並んだ七つのアイコンのうち、火花が飛び散るようなアイコンの「火花」ダメージがアクティベートされた、と表示された。


『いいぞ。木も植えられるし、土地も入れ替えていい。いろんなパラメータが複雑にからみ合っているから、本番前にいろいろ確かめるのが正解だろうね』

「でも、意外と分かりやすい、かも……?」


 五×五マス、高さ地上六・地下四の、立体の箱庭……〈玉華苑〉は、たぶん「テラリウム」のゲーム版だ。チュートリアルにあるいろんなパラメータは、思ったより分かりやすい方で、ちょっとずつ試していけば理解できそうだった――けど。


「こ、ここにも意志アビリティあるんですね……」

『ああ。【使徒】の苑だとほとんど生き物が寄り付かないし、【常人】の苑には特殊なものを置くことができない。【愚者】は……すこし、大変かもしれないな』


 害虫がやってきても警報が鳴らないとか、もともと対策ができないとか、デメリットばかりが書かれている。でも、それもまたダメージにはつながっているようだ。ものすごく危険そうなことが書いた植物もあるから、そういうのは使わないことにした。


「よし! だいたいのプランできました」

『おお、呑み込みが早いね。バーチャル版はいつでも呼び出せるから、試したいことがあるときに使うといい』

「助かります」

『何よりだね。では、私はこれで失礼しよう』


 呼び出しボタンを空中に置いて、看板頭さんは消えた。


「アンナたち、「木は二本植えるといい」って言ってたなー。なんとなくわかったけど」


 植物一本が、それぞれの付加ダメージ一回を起動できる――とすると、樹木もいっぱい植えた方がいい。もちろん、占めるスペースがすごく大きいから、端っこに配置するのがいいだろう。端っこに大きいのを二本、真ん中あたりにもう一本で……と思ったら、意外な罠もあった。


「この「波濤」って、増やしすぎたら一回あたりのダメージ減るんだ……? 【愚者】も〈道化師〉もHP高くならないし、これ以外増やした方がいいかな」


 ちょうどよさそうなのは「アイテムが壊れると付加ダメージを発生する」とか「消費MPに応じた付加ダメージ」の方だ。条件がすごく簡単だからか、こっちを発生させるのはかなり難しくなっている。


「もうちょっとバーチャル版触ればよかったかなー……。いや、実際やってみないと分かんないかもだし、早めに」


 初期配布で植えられる木と花を植えて、ポイントで買えるものを欲しいものリストにメモしておく。星の配置はしていないけど、条件だけ読んだかぎり、たぶん大丈夫だろう。早く戻ることだけ考えて、私は〈玉華苑〉を出た。

 細かいことは設定集を見てください(丸投げ)。そういう説明読むタイプの主人公じゃないから、本編でやるとおかしくなるんで……。あ、下にボツ設定置いときますねー。




「激震」(ボツ設定)

 ベータテスト時代に存在した。クリティカルが出たとき、本来ダメージの20~70%の固定ダメージを与える。ベータテスト時代に「とりあえず会心盛ればOK」という風潮が広まり、正式サービス開始時に一部で不評が出た理由。公正なゲームバランスを崩すものとして削除されたため、今後も実装されないものと推測される。

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