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エピソード 9

畑の野菜とモーリュ草を作り終わるまで待たせて、グズリ代官の馬車に乗り込んだ。


最初は待たせた事やナイトとヘブンも馬車に乗せたことをグチグチ言ってたおグズリ代官も、緑の使徒を連れて行くという手柄に段々機嫌が良くなってきたようで。


「使徒様は幸運ですな!わたくしが見つけなければあの貧民どもにいいようにされていましたぞ!」


とか


「領主様のもとに行けばもう安心ですな!わたくしが傭兵などではない、本物の騎士を付けていただけるよう進言させて差し上げましょう!」


なんて目を開けたまま寝言言ってる。

相手をするのも面倒で


「はぁ」とか「へぇ」とか適当に言ってたんだけど、横でナイトは涼しい顔。


御者に偉そうに指示をしてる隙に、コッソリ


「ナイトすごいね」


って聞いたら、


「まぁ貴族の護衛任務もありますからね。まだ可愛いもんっすよ」


だって。

まじかぁ・・・こういう人とは出来るだけ関わりたくないんだけどな。


でもこういうタイプの人間は、放置するとロクな事がないんだ。

私の中の大山さくらが言ってる。

そうだね。

対策を考えなきゃ。


売られていった時と全然違う乗り心地の馬車に揺られること一時間弱。

石畳の小さな街の中でひときわ大きく輝くお屋敷の前に居た。


輝くって、綺麗って意味じゃないよ。

物理的に輝いてるの。キンキラキン。

そのお屋敷のホテルのエントランスのような階段前で馬車から降ろされ、伯爵を呼びに行ったグズリ代官に待たされていた。


「遅いね」


「多分良からぬこと考えてるんすよ」


「キトル様に何かあれば、ワタシが燃やしますから大丈夫ですっ!」


お止め、ヘブン。


ナイトとヘブンと作戦を練ってたら、やっとおグチ代官が伯爵を連れて帰ってきた。

代官さんより太いお腹と、やっぱり趣味の悪い服を着たゆでたまごみたいなのがドルムンタ伯爵か。


「やぁやぁやぁやぁ緑の使者殿!」


「使徒ですけど」


「使徒殿!ようこそおいでくださった!出来る限りのおもてなしをさせて頂きますぞ!おい!」


慌ててメイドさんが走ってくる。

急がなくていいよぅ。コケそうじゃん。


「晩餐も用意させておりますので、ゆっくり旅の疲れをお取りください!」


晩餐だってさ。領民が飢えてるのに。

噂通りの領主だな。

メイドさんに促されて屋敷に入ろうとする、と。


「おやおやおやおや使徒どの。我が屋敷は安全ですので、護衛など不要ですぞ。その犬コロも屋敷には不釣り合いですしなぁ」


「そうそう、わたくしも申したのですよ。ぜひ伯爵様にお願いして、本物の騎士を付けたらどうかと思いましてな!」


二人とも、キトルちゃんの嫌いリストに登録決定。

うちの子たちになんてこと言ってくれてんのよ。


今すぐ枝にでもぶら下げたいところだけど・・・

でも、今は我慢。

こういう奴の対処法、私は知ってるんだな。


「そうですね、今日は私だけでお邪魔しましょうか。またあとで詳しく伺いますね」


「おぉ、そうですな!まずはそのお召し物の代わりでも用意させましょう」


お、それは助かる。

あの家から出てきたままだったから、ずっとぼろ布を巻いただけみたいな服だったんだよね。


ナイトとヘブンに目配せし、その場で別れてメイドさんに付いていく。

案内されたのは・・・お風呂だ!

この屋敷に来て初めて良かったと思えたよ!


ギラギラした金色の湯船はアレだけど、お湯に浸かれるのは超うれしい!

使い方がわからないからメイドさんに洗ってもらいながら、ちょっと探りを入れてみる。


「お姉さん、領主さんってイイ人なの?」


「わ、わたくしどもからは何も・・・」


うん、もうそれが答えだねぇ。

目上の人に対しても、本気で思ってたら褒めるもんなのよ。

こう聞かれた時、悪いことは言いにくいからごまかしちゃうんだよね~。


「ねぇ、領主さんと仲良しの人ってこの屋敷では誰がいるの?」


「仲良しですか?仲良しの人・・・先ほどのグズリ様と、前領主様の頃からお仕えしている執事のロンド様でしょうか」


ほう?もう一人嫌いリストに追加か?


「ただロンド様は、領民の事を考えるよう度々意見されたせいでお怒りを買いまして・・・去年執事長の座を降ろされてしまってからはあまりお話をされている様子はないですね」


へ~、マトモな人もいたのね。

ロンドさんね。覚えたぞ。


フリフリのゴテゴテとか趣味の悪い服じゃないかと心配してたけど、普通のワンピースに安心して着替えたところでちょうど呼ばれた。


案内された部屋は多分ダイニングルームなんだろうけど、食欲が失せるほど金ピカ!

しかも、ドルムンタ伯爵と、グズリ代官も一緒に席についている。

余計に食欲失せるなぁ・・・。


他の家族とかがいないってことは、二人とも独身なのかな?

そういえば太ってるせいか、年齢不詳。


当たり障りない話をされながら、出てきた料理はいわゆるコース料理。

これがね、前世で呼ばれた結婚式とかなら違和感ないけどさ。

この人が治めてる領地のみんなは飢えてやせ細ってるんだよ。

ありえないでしょ。


でも、これだけじゃダメだ。

まだ、

「最近までは豊作で~」

とか

「太りやすい体質なんですぅ~」

とか、何とでも言い逃れできるからね。


「それで、緑の使徒様はこれからどうされるおつもりで?」


よし、来たな。


「えぇ、世界中を回って、瘦せた土地を回復させられればと」


これは本当に本当。

この考えは変えるつもりはない。


「おやおやおやおやそれはよろしくない!使徒様はお若いからご存じないかもしれないが、世の中には施しを与える必要のない人間や場所があるのですよ!」


「そうですとも!例えばこの伯爵様などは、この国の事を本当に考えておられる素晴らしいお方ですからな。このような方のためにそのお力は使われるべきですよ!」


「はっはっはっはっは!全くグズリ殿はよくわかっておる!」


私は何を見せられてるんだろう・・・。


「そこでだね、使徒様のお力を正しく使うためにこのドルムンタ、力を貸して差し上げようかと思いましてなぁ!」


「おぉ、一体それは?!」


何この茶番。


「本来ならば非常に難しいのだが、それもこれも世間を知らない使徒様のために・・・使徒様をワシの養子にして差し上げようと思いましてな!」


あ~~~~~そっちか、そう来たかぁ・・・。


「ほほう!それは素晴らしいお考え!使徒様にとってこの出会いは幸運としか言いようがないですな!」


「本来ならば面倒な手続きなどせずとも、ワシの伴侶になるという名誉を与えて差し上げたいのだが、まだ十年ほど待たなくてはいけませぬのでなぁ」


にやりと笑いながら舌なめずりしてこちらを見るその目・・・

ゾゾゾゾゾゾッ!


「やだやだやだやだキモい無理っ!!何考えてんのこの変態ロリコンおやじ!!」


・・・あ、口に出しちゃってた。失敗。

でもまぁこれは仕方ないよね。

だって舌なめずりしてこっちを見ながら少女を自分の妻に、なんて言ってるのを我慢なんて・・・

だれでも無理でしょ~?!


「ロ、ろりこ・・・?」


あ、ロリコンわかんないか。

グズリ代官はキョトンとしてる。


でも失礼なこと言われたのはわかるんだろうね。

ドルムンタ改め、ロリコンダ伯爵の方は顔が真っ赤になってる。


「こ、このクソガキが!ワシのような尊い身分の人間になんということを・・・!」


やっと我に返ったグズリ代官も怒り出した。


「フン、たかが草や実を生やすだけの力しかないガキが!大人には敵わんということも教えてやらねばな!」


・・・こんな雑魚セリフを本当に聞く日が来るとは。

ん~、どうしようかな。

ナイトとヘブンがまだだけど、しょうがないか。


先にお片付け、しておこうじゃないの。

アドバイスをいただいたので、読みやすいように行間を開けて、加筆しました。

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