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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 88

「キトル殿!」


「キトル!」


「キトル様!」


目を開けると、美形が三人・・・。ここは天国か?逆ハーレム天国?逆ハー天。ん~語感が悪い。


目の覚めるような美少年と、目が潰れそうな美形と、身近な感じのイケメ・・・あ、これはナイトか。


三人だけじゃない。ナイトの腕の隙間からヘブンが心配そうな顔をして見てるし、ジイランさんもすぐ後ろでお医者さんっぽい人達と話してる。


今回はどのくらい寝てたんだろう。


横になったまま周りを見渡してみると、お泊りさせてもらってるお城の客室。


・・・あっ!


「ガーデリオン!大丈夫なのっ?!毒はっ?!」


状況を思い出して飛び起きる。


名指しされたガーデリオンは驚いたのか瞬きを一つすると、目を細めた。


「うむ、何ともない。お主の作った実のおかげで、この通り無事である。キトルよ、本当に助かった」


ワ~オ、なんて笑顔だい。神々しすぎて後光が差してるように見え・・・いや、窓が後ろにあるしホントに差してるな。


「そっか・・・無事で良かったよ。そういえば、今回はどの位寝てた?」


目が眩しいからベッドの反対にいるナイトの方に向きなおる。


「三週間っす」


「へ~さんしゅ・・・さ、三週間っ?!」


またぁ?!アルカニア王国で国中の植物を復活させた時と同じじゃん・・・。


「えぇ~・・・寝すぎちゃったなぁ~。限界超えた感は確かにあったけどさ」


「そうっすね。仕方がなかったとはいえ、今回はビビりました」


ナイトがうんうんと深く頷いていると、ガーデリオンの横に居たエルガ君がズイッと前に出てきた。


「キトル殿のおかげでこの国も、民も、皆が待ち望んでいた竜王様も、全て救われました。言葉では言い尽くせないほど感謝しています」


エルガ君がかしこまってしまっている・・・。


「いやあ、私が出来る事しただけだからさ。あと、いつも通りの喋り方でいいよ!」


エルガ君がまた何か言いかけようと口を開いた所で、ジイランさんがこちらに寄ってきた。


「わたくしからも、国民を代表しまして感謝の言葉を・・・おかげさまで腰痛も治り、古傷も癒えまして、エルガ様の訓練にも参加出来るようになりました。キトル様の驚異的なお力の本質を目の当たりにして流石のわたくしも驚きのあまりせっかく痛みのなくなった腰を抜かしそうになる所でした。しかし、やはりそれほどの御方と言えどエルガ様との仲を認めるかどうかは別のお話なのでありま」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って、ジイランさん、なんて言った?」


「いえ、ですから、エルガ様との」


「そっちじゃない!その前!」


「わたくしの腰痛と古傷が治った件ですかな?」


・・・ジイランさんの腰痛と古傷が治ったの?それが、私のおかげ?


どういう事かわからなくて、ナイトを見る。


「その、とりあえず俺に聞いとけみたいな目、やめて欲しいんすけど・・・。キトル様があのどデカい実を潰して中の水をガーデリオン様にかけたじゃないっすか?」


うん、そこまでは覚えてるよ。


「で、あれ毒消しじゃなかったみたいで」


何だとっ?!え、じゃあなんでガーデリオン無事なの?


「上級ポーションよりも上というか、おとぎ話に出てくるエリクサーみたいなやつだったんすよ」


えり草ー?


「えり草って何?」


「あ、そうっすよね、知らないか・・・何でも治せる伝説の薬っすね。ばあちゃんがしてくれてた話とかに出てきたんすけど、昔の傷も手足の欠損とかも治して、寿命を延ばしたり不老不死にしたり・・・」


えっ?!なにそれ!怖っ!


「そんな恐ろしいの私作っちゃったの?!」


「恐ろしくないっすよ?!実際俺の昔受けた刀傷も消えてて」


「だって不老不死とか怖いじゃん!」


「その効果はないぞ」


ガーデリオンが話に入って来た。


「我の寿命は元々長いので効果のほどはわからんが、不老不死にはなっておらぬ」


「わかるの?」


「うむ」


そっか、それは良かった。不老不死なんて罰ゲームじゃん。


「でもそんなの作ってたんだ・・・。あの時とにかく必死だったし」


「あと他にも影響が出てて・・・まあこれは見た方が早いっすね」


皆が同じように頷いている。


な、何?!なんか怖いんだけど・・・。


「とにかく、会場中水浸しになって、そこに居た人たちは皆何かしらの恩恵を受けたみたいですよ」


えぇ~・・・私の知らないところでなんかすごい事になってたのね。


でもさ、


「悪い事はなかった?あの毒消し、じゃなくてえり草浴びて」


「エリクサーっす。そうっすね、今のところは多分・・・」


ナイトの視線を受けてジイランさんが答える。


「ええ、身体の痛みが消えたり持病が治ったという声は多数来ておりますが、悪い方向ですと足の痛みが消えたウサギ族の老婆が跳ね回ってコケたという報告ぐらいでしょうか」


う~ん、それは私のせいではないな。


「じゃあ現場見に行ってみよう!気になるし!」


と立ち上がろうとしてちょっとフラつき、慌てた皆の手に支えられる。


「ダメっすよ!寝てる時に一応食べさせはしましたけど、動くのはしっかり食べてからです!」


とナイトママに怒られ、ジイランさんにも


「今体に優しい食べ物を作らせていますので、それを食べて様子を見てからにしましょう。医師も控えさせておりますので、何か体調の変化などありましたらすぐにおっしゃってくださいね」


とエルガ君並みに過保護にされてしまう。当のエルガ君は


「キトル殿はいつもあのように寝ながら食べてるのか・・・?」


とヘブンに聞き、


「はいっ!ワタクシも一緒に食べてますよっ!」


と返される。


そしてそのヘブンを見ながらガーデリオンが何か考え込んでいたけど、それを聞く前に食事が届いたので、一旦腹ごしらえをすることになった。






ココナッツミルクとバナナが入った甘いお粥みたいなのをお腹いっぱい食べて回復アピールをした後、ドラヴェリオン杯をやった会場の観覧していた高台の席に辿り着いた。


辿り着いたというか、降り立ったと言うか、ガーデリオンに乗せてもらって飛んできた。


「すご~いっ!めっちゃ楽しかった!!」


ナイトに聞いてた人型に羽だけ出して飛ぶやつ、乗ってみたかったんだよね!


「俺は走って来たかったっす・・・」


到着するや否や飛び降りたナイトはぐったりして、たまに「うっぷ」って言ってる。大丈夫か?


「キトル様三回もお代わりしたのによく平気っすね・・・」


「美味しかったし、お腹空いてたし、楽しかったからね!」


元気百倍だぜ!


「キトル殿、あれだ」


手すりを持ったエルガ君が闘技場のあった辺りを指差している。


近付いて下を覗き込むと・・・


「うわぁ・・・これ、私がやったのっ?!」


闘技場と観客席との間は芝生のように青々とした草が生え、所々に色とりどりの花が咲いていて、まるでのどかな草原のよう。


観客席の前には低い木々が立ち並び、小さな赤い実が成っている。


よく見ると人が出入りしていて、赤い実を取って食べたり草の上に寝転んだりしている。


まるで整備された都会の公園みたい。


「あの実は病気やケガした者が食べるとポーションのような効果があるらしく、人が途切れることなく連日訪れているのだ」


げげっ。それ大丈夫なの?ポーション屋さんが倒産したりしない?


私の顔を見て察したのか、エルガ君が片眉を下げて苦笑いする。くうっ・・・!その表情もいいねっ・・・!


「我が国はポーションを生産しておらず、輸入に頼っていたのだ。それに最近はそのポーションも数が少ないからと入ってきていなかったから、むしろ助かる事しかない」


そう?それならいいんだけど。


しかし、無意識でポーションの実とジャングルの中に大都会のオアシス?を作っちゃうなんて、緑の手のスキルってすごいな・・・。


そういえばあの時、身体の奥底から温かい力が湧いてきたような・・・。


「エルガ様っ!」


後ろから野太い声がして、振り向くとあのフェンリル族の筋肉おじさん。


何コイツ、まだエルガ君に喧嘩売ってんのか?!とガルガルしようとすると、ザっと勢いよく片膝をついた。


「東南エリアの捜索が終わりましたが、いまだ痕跡はなく・・・現在北と東北に向けた捜索隊の連絡を待っている状況です」


・・・肉おじ、一体どうしたの?


ナイトが横に来て耳打ちする。


「捜索隊をフェンリル族に一任したんですよ」


ん?


「捜索隊って何の?」


あ、変な事聞いちゃった?ナイトの顔に「はぁ?」って書いてある。


「・・・ドルコスですけど・・・?」


・・・あっ!そうだそうだ、そうだった!覚えてる、覚えてるよ!


ん?いやいや、他のことに気を取られてただけでね?別に忘れたわけじゃないのっ!

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