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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 83

「だ・・・大丈夫か、キトル殿・・・」


すごいスピードでエルガ君のいる執務室?に連れてこられた私。お姫様抱っこから降ろされると近くにあるソファに倒れこんだ。


全女子の憧れ、超絶イケメンのお姫様抱っこがこんなにハードなものだとは・・・。起きた時よりボロボロな気がする。


「お、おい、水を」「はっ」


エルガ君が書類の束を抱えたままジイランさんに指示を出す。


「ん?従者殿はどうした?」


「あんなスピードで行かれたら付いてくのがやっとっすよ・・・」


ゼーハーと肩で息をするナイトが部屋の入り口で膝に手をついて肩で息をしてる。ヘブンはその足元で何が何やらわからずキョロキョロ。


貰ったお水をゴクゴクと飲み干し周りを見ると、エルガ君が机に乗った書類の山の頂上に書類を追加している。


「は~・・・何が何だか・・・。エルガ君は、もうお仕事してたの?」


「あぁ、それなんだが、余は帝王の座を退こうと思ってな」


「えぇっ?!」


退くって、帝王じゃなくなるって事?!


「我が国の唯一で絶対の掟は『強き者に従う』でな。竜王様が戻られた今、余が帝王のままでいるのはその掟に反するのだ」


え〜そういうものなのか・・・。まぁあんなにデカいドラゴンじゃ誰も勝てそうにないしね。


「あ、ドルコスの事についてキトル殿は聞かれたか?」


うんうん、と頷いて見せる。


「あやつが姿を消したせいで父親の宰相が心労で倒れてな・・・。責任を取って辞任すると聞かぬので、余が代わりに宰相となり竜王様を補佐する事にしたのだ。他の者が竜王様に恐れをなして近づけぬというのもあるが・・・」


「うむ!我は細かい事などわからぬからな!このような紙など扱った事もない!」


がはは!と笑いながら書類の山を触るドラゴンさんと、山を崩されて慌てて押さえるエルガ君とジイランさん。


そっか、そんな感じに色々収まったのね。


「エルガ君は良かったの?帝王になるためにずっと勉強してたんでしょ?」


逃げ出すほど嫌だったのも確かだろうけど、それまで積み重ねてきた努力もあるだろうし。


「国を治めるという立場は同じだからな。幼い頃からずっと聞いてきた竜王様にお仕えできるのならば、これより誇らしい事はない」


キリッと凛々しい笑顔を見せるエルガ君は、初めて会った時より成長したように見える。


うん、いい顔してる。じゃあ私が言う事は何もないね!この笑顔を画像で保存しておけないのが残念なくらいかしら。


「エルガ様・・・なんと立派になられて・・・」


あ、ジイランさんまた泣いてる。


「エルガ君とドラゴンさんのいる職場、羨ましいですね」


ジイランさんに小声で話しかけると、コクコクコクコク!とすごいスピードで頷く。


幸せそうで何より。


「で?大会って何の事なの?」


エルガ君に言われて唇を尖らせながら書類を拾ってるドラゴンさんに向き直る。


「うむ!我がいない間に種族間で争うようになったのだろう?だから、元に戻そうと思ってな!」


つまり、どういう事?


首を傾げた私を見て、ジイランさんが補足してくれる。


「つまり国の掟通り、強さこそ全てという事で、全ての役職に種族関係なく強い者を起用しようとなりましてな。ただ通常は試験や試合などで役人は起用するのですが、竜王様が守護隊に関しては強さを競わせる大会を開催したいと言いだされて・・・」


「うむ!やはりこういうのは楽しまねばな!名付けて『ドラヴェリオン杯☆目指せ、未来の守護ファイター!』だ!」


・・・いや、ドヤァ~!じゃないのよ。


「これ、絶対キトル様のせいっすよ」


とナイトが耳打ちしてくる。


なんで私のせい?!・・・あ、あれか、忍者もどきにやったやつか。


え?アレドラゴンさんもやりたかったの?


「本当は『全種族総力戦!命と誇りと友情がぶつかりあう究極闘技伝説バトルカーニバル!』にしようと思ったのだが、こやつがダメだと言うのでな」


「長いしお祭りじゃないし分かりにくいからダメですよ・・・」


エルガ君がうんざりした顔をしてる。おぉ・・・憂いを帯びた美少年と言うのもそれはそれで・・・。


「わたくしの出した『竜哭りゅうこくの試練~裁きの牙と命の杯~』も却下されましたし、エルガ様はなかなか厳しいのですよ」


と言うのはジイランさん。この人意外と中身はまだ中二病だよね。


「爺のはカッコ悪いからダメだ」


とエルガ君バッサリ。


「竜王様と帰城した後、話がまとまってすぐ募集をかけたので、あとはキトル殿が目覚めたらすぐに日程を決め開催できるように準備を進めていたのだ」


「え、なんで私?!」


別に寝てる間に勝手にやっといてくれれば良くない?


「何を言うか!お主のお披露目も兼ねておるのだ!緑の使徒が悪しき者などと言う流言を払拭せねばならぬだろう!」


ドラゴンさんが腰に手を当てて大きな声で言い切る。


「まぁお披露目自体は俺も賛成っす。このまま緑の使徒様が悪く言われるのは嫌ですし、このまま去ればまた千年後の次の使徒様の時に悪印象が残っていないとは言い切れませんし」


とナイトも賛同する。


え〜?そう言われてしまうとそうなのかもしれないけど。


「う~ん、じゃあ大会はわかったよ・・・。私もゲスト的な感じでそこに居ればいいのね?」


「そうだな!だが出たければキトルも出て良いぞ!守護隊に神の使徒がいるというのも面白いしな!」


「いや出ませんよ。他の国もまだ行かなきゃだし」


「じゃあ世界を巡った後だな!いつでも挑戦するが良い!」


「いやいいってば・・・」


めんどくさいなこのドラゴン。


「我にとっては人間も獣人も等しく弱い存在だからな。種族の違いなどあってないようなものよ!」


胸を張るならシャツの前を閉めてくれないかなぁ・・・目に毒ならぬ目に効きすぎる薬だわ。視力良くなりそう。


「竜王様という最強の御方が玉座にいる限り、種族間での争いなどは起こらないでしょう。これでフェンリル族から妙な絡み方をされることもなくなりますね、ヘブン殿」


エルガ君に話を振られたヘブンが「全くですっ!」と大きく頷く。


「ワタクシはキトル様の従者ですからねっ!あんな守りがいのない筋肉モリモリなおじさん達より、キトル様を守りたいですっ!」


ふんっ!と胸を張ると、執務室は笑いに包まれた。







「・・・でも、絶対キトル様の方が守り甲斐はないよな~・・・」


ナイトが薄明りに照らされながら呟いた。


ここは私が目を覚ました部屋。


『ドラヴェリオン杯☆目指せ、未来の守護ファイター!』略してドラヴェリオン杯が終わって旅立つまで、この部屋を借りれることになったのだ。


ナイトとヘブンも隣の部屋をあてがわれたけど、夜も更けた今は私の部屋に集まり会議中。


何の会議かって?そんなの決まってる。その議題は・・・


「何言ってるのか知らないけど、ナイトも早く案出してよ。ドラゴンさんにふさわしい名前!」


そう、ドラゴンさんの名付け。


どんな名前ならいいかずっと考えてるけど、なかなかいい名前が浮かばない。


と言うより、ドラえ・・・ゲフンゲフン。某青い御方が頭の中をウロウロしてていい名前が思いつかないのだ。


「って言ったって、俺らじゃいい名前なんて思いつかないっすよ。キトル様が頼まれたのに俺らが考えた名前にするのも違いますし・・・」


それはそうなんだけどさあ~。一人で考えてたらドラ左衛門とかドラ兵衛とかそういう系しか思いつかないんだもん。


ヘブンに至ってはもうウトウトし始めちゃってるし。


「ドラ・・・ドラ・・・も~わかんないよ~!」


頭をガシガシと搔きむしる。そういえば髪の毛伸びたな。


奴隷商に売られる時に汚いからって錆びた刃物で荒く切り落とされたショートヘアだったんだけど、今はもう肩に届くセミロングになってる。


ちょっとは美女に近付いたかしら?


「じゃあ違う角度から考えてみるのはどうっすか?」


「違う角度?」


「子供の名付けって、どんな子に成長して欲しいかとか、こういう人間になって欲しいって意味を込めるって言うじゃないっすか。あとは魔除けとかそういうの」


そうか、名前の響きだけで考えてたわ。そうね、ヘブンの時も見た目と中身で考えたんだっけ。


ん~と、ドラゴンさんにどんな風になって欲しいか?


やっぱり、皆を守って欲しいよね。その線でいくと守護者的な?


「ねぇナイト、こういうのってどうかな・・・?」


「あぁ、いいじゃないんすか?」


「でもさ・・・」


「じゃあ二つ出して、どっちがいいか決めてもらいましょうよ!」


そうね、もう悩みすぎてわかんなくなってきたし・・・。


最後は本人?本竜?に決めてもらおうじゃないの!

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