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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 80

緑ミイラになってる忍者もどき四人組に近付くと、ドラゴンさんが尻尾でペチペチと叩いている。


それ、ツタでグルグル巻きだし喋れなくない?あ、目が開いた。


顔の部分だけツタをスルスルと外してあげる。


「貴様ら、こんなことをしてどうなるk」


「はいは~い、失礼しますね~」


目以外を覆っている黒い布をどんどん引っぺがしていく。


四人とも完全に顔が出てきたけど・・・


「当然ながら私たちは知らないけど。エルガ君とジイランさんは知ってる顔だったりする?」


「いや、余はこのような者は知らぬ」


「わたくしは城下で見た事があるような気がしますが、どこの誰とは・・・」


ふむ。そりゃそうか。


「ふん、我らは影に生きる者。何をされても話すことなどない」


影に生きる者って。思わず吹き出すとこだったわ。昔の使徒様が忍者文化でも伝えたのかしら?


「しょうがない、口を割らせてみよう」


と私が口にすると・・・。


「そんな、キトル様の手を煩わせるまでもないっす。俺がやりますよ」


とナイトが言えば


「いえいえ、ここはわたくしが昔取った杵柄で・・・」


とジイランさんが言い、


「ふむ、拘束されているならば小さい我にもやりようがあるぞ」


とドラゴンさんが張り切ると、


「ワタクシも火あぶりとか出来ますよっ!」


とヘブンが言う。


・・・いや、ヘブン怖いな!!


エルガ君はプルプルしながら「ぼ、僕は後学の為に見学で・・・」と片手を上げている。


「ちょっと。何か勘違いしてるっぽいけど、どうやって喋らせようとしてるの?」


スッとナイトが剣を抜いて見せ、ジイランさんはどこから出したのか指サック?みたいな指にはめる金属のやつを出して見せ、ドラゴンさんはお尻を見せて尻尾を振り振りして見せ、ヘブンは口を開けて上を向き・・・


「ヘブンは大丈夫!わかったから!」


「そうですかぁ?」と口を閉じる。危ない危ない。


「あのね、子供がいる前でそんな生臭い光景を繰り広げようとしないでくれる?!」


腰に手を当てて大の大人?三人?四人?を叱る幼女の図。


「でもどうやって口を割らせるんすか?」と、ちょっと不満げなナイト。


「簡単よ。本人に自分から喋りたいと思ってもらえばいいんだから」


まだわかってなさそうな顔してるナイト達を尻目に忍者もどき達に近付く。


「ふん、いくら神の使いと言えど、拷問もせずに口を割らせるなど大きな口を・・・」


「ドッキドキ!早く言わないと、恥ずかしい秘密が暴露されちゃうぞっ☆ゲームっ!」


「・・・は?」


顎にL字にした手を当てて可愛くウインク!


「さぁ~始まりました、今日のドキ☆暴の時間でっす!今日の進行はみんな大好き緑の使徒、キトルちゃんがお届けしまっす!」


忍者もどきさんも含め、全員ポカンとしてる。うんうん、いいね、その反応!


「さて今日最初の挑戦者は~?ドゥルルルルル~ジャジャンッ!一番手前の髭おじさん!」


「は?俺の事か・・・?」


「そう!今日最初に選ばれた髭おじさんには、ピンクのお花をプレゼントっ!」


言うや否や、一番手前で地面に身体を縫い付けられてる髭おじさんの頭に、大きいピンクの形をした唇型の花を付けた草を咲かせる。


「は・・・?なんだこれは・・・」髭おじさんが自分の頭の上に咲いた奇怪な花を見ようともがく。


「説明しよう!この花は、早く喋らないと、恥ずかしい秘密をどんどん暴露しちゃう暴露花ちゃんなのだ!」


「貴様、一体何を言って・・・」


髭おじさんが喋り終わる前に、ピンクの唇が開き機械のような音声が聞こえてきた。


『名前はハリネズミ獣人のノグ、コードネームは黒棘くろいばら。闇夜に刺さる背中の針をイメージして自分でつけました』


「え、お前その名前受け継いだって言ってなかったっけ・・・?」


横にいるぽっちゃりめのオジサンが呟く。


「お、おい」


『実は初恋のアンネちゃんに似せてお母さんが作ってくれたハリネズミのぬいぐるみがないと夜は寝られません』


「うわぁぁぁぁぁぁ」


お~コレはなかなかの攻撃。


『脳内では自分の事を“影の薔薇騎士”と呼び、黒棘の名を継ぐ者は、自分で三代目だと名乗っています。ちなみに初代も二代目もいません』


「やめろぉぉぉぉぉぉ」


クリティカルヒットッ!


『いつも寝る前にする妄想は王子になってお姫様に助けられる夢ですが、そのお姫様役というのが実はここにいr』


「話すっ!話すからぁ・・・やめてくれぇ・・・」


あ~あ、泣いちゃった。


「キトル様・・・実は結構怒ってます?」


ナイトが横に立って聞いてきた。


「なんで?」


「あの花使えば、別に暴露なんてしなくても目的とかわかったはずじゃ・・・」


ため息を一つ吐いて答える。


「当たり前でしょ?私の仲間を傷つけようとしたんだから、怒るに決まってるじゃん!」


あんな事されて、怒らないわけないでしょ。


「ひぇ~・・・拷問より怖ぇ・・・」


ナイトは無視して髭おじさんの話に耳を傾ける。


「指示を出していたのはドルコス様だが、我らは破壊と再生の神モルティヴァ様の信者だ・・・。だから、緑の使徒を国外に出して帝王を殺し、緑の使徒のせいにするつもりで・・・グスン」


髭おじさんまだ泣いてる。


「ドルコスが・・・余の事を疎ましいと思っているのは知っていたが、そこまでとは・・・」


エルガ君の教育係の人だっけ?そんな身近な人に殺されそうになったっていうのはショックだよね。


『胸のポケットに入ってる革の手帳には自作のポエム“黒棘詩集”が書きためられ、詩集タイトルは“漆黒の薔薇が今夜も泣いている”』


「もぉやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」


あ、暴露花ちゃん忘れてた。ちょっと可哀相だからすぐに枯らしてあげる。


「なんで俺だけ・・・」


髭おじさん涙声。そうね、ちょっと可哀相だし・・・


「大丈夫よ。全員に暴露花ちゃん咲かせてあげるから!」と、に~っこり。


「~~~~~!!」


忍者もどき残りの三人が声なき悲鳴を上げる。


「よし、ヘブン。俺らはキトル様を怒らせないようにしような?」


「へ?もちろんですよっ!」と従者たちの会話が背後から聞こえてくるけど、そもそも怒られるような事をするんじゃないぞ?


「エルガ様、竜王様の復活がかないましたら、ご一緒に城へと戻られませんか?このままですと、ドルコスが何か次の手を打ってきかねません。おそらく暗殺が失敗した事はドルコスに伝わっているはず。奴は商人が来るたびに魔道具を買い漁っておりましたので・・・」


ジイランさんが膝をつきエルガ君の目線に合わせて話している。


「そう、だな・・・。しかし、余は皆の前でキトル殿たちと行動を共にするt」


「あ、それなんだけどさ!」


二人の会話に割って入る。


「私、多分寝ちゃうから、起きるまでお城で寝かせといてくれない?前回早かったし、そんなに寝ないとは思うんだけど。そうしたらエルガ君もお城に戻れるでしょ?」


「おぉ、それは助かる!のう、ジイラン!」


「・・・ですが、キトル様が寝ているとなると、もしドルコスが何か仕掛けてきた際の戦力としては少々不安ですな。わたくしとナイト殿、ヘブン殿は戦えるとしても、そもそも城の者は緑の使徒様に対して良い感情を持っておりませんし・・・」


「ぼっ、僕も戦えるぞ!」


エルガ君が自分を指差してるけど、ジイランさんは静かに首を振る。


「エルガ様がお強いのは存じております。ですが、ドルコスが卑怯な手・・・例えば先ほどのように人質を取られたら、どうして良いか分からないでしょう?」


ぐっ・・・と言葉に詰まるエルガ君。


「ふむ。では我が一緒に行ってやろう」


バッ!と皆の視線がドラゴンさんに集まる。


「千年余り、国事を放っておいてしまった故の不始末だ。我が出て行けば収まる事もあるであろう」


「いいの?ドワーフの使徒さんに言われたのに・・・」


「良いのだ。今にして思えば、あの者は常にここに居ろとは言っていなかった。我が願いを聞いてあげたかっただけでな・・・だが、争いの火種となってまでここを守る事を望みはしないだろう、なぁ?今代の使徒よ」


そうだね、あの壁画を描いた優しい吉野さくらさんなら、きっと気にしないと思うな。


「いいと思うよ。ここの石は私が思いっきり隠しておくから大丈夫だしね!」


ドラゴンさんが、ふふん、と笑うように尻尾を左右に揺らす。


「竜王様が共にあるのならば、これほど心強いことはありませぬ。まさに、万の兵も恐るるに足りませぬな」


とジイランさんが大げさに褒めると尻尾がパッタンパッタンと右に左に動いている。


ドラゴンの尻尾って、ワンコの尻尾と同じようなものなのかしら・・・?


「では、今代の緑の使徒よ。土地を潤し木々を癒し、我を本来の姿に戻すがよい!後の事は我らに任されよ!」


む~・・・ドラゴンさんの掛け声で始めるのは癪だけど仕方ない!


透明なジャングルにおさらばしようじゃないの!

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― 新着の感想 ―
初感想失礼します。面白くて一気に追いついてしまいました。 厳しい世界で悪人もいるけれど良い出会いも多く万能すぎる緑の手のおかげで楽しい旅になってますね。 パッ◯ンフラワーが作れるなら世界樹を生やしたり…
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