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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
アルカニア王国編

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エピソード 8

「じゃあ、この国の名前は?」 


ただ今ナイトのクイズ大会開催中。


「「アルカニア王国!」」


私とヘブンが声をそろえる。


「俺の生まれた、さっきの集落があった領地は?」


「「コルステア領地!」」


「正解〜。領境を超えて入った、今いる領地は?」


「「ドルムンタ領地!」」


よしよし、覚えたぞ。


「じゃあ、今向かってる村の名前は?」


「トネリ村!」

「トナリ村!」


「ヘブン正解、キトル様残念〜」


ぐあ〜、おとなりのトネリ村、って覚えたのが良くなかった・・・。

今、私たちはそのおトネリ村に向かっているのだ。


集落のみんなの畑に希望する野菜を作りまくった後、お姉さんの一人が恐る恐る声をかけてきた。


「使徒様、もしよろしければ姉のいる村に行ってもらうことはできませんか・・・?」


ん?村?


「姉がドルムンタ領のトネリ村に嫁いだのですが、そちらも不作が続いているのに税の取り立てが厳しく、収穫の半分以上が取られてしまっているそうなんです」


あらあら、どこの世界も税は世知辛いのね。


「最後に会ってから日も経っているので心配で・・・次でなくても構いません、次の次でも、その次でも良いので寄っていただければ」


「いいよ~!そこの場所、ナイトわかる?」


「えっ?!いいんすか?!」


えっ?なんで?


「キトル様のお兄さんがクソお・・・え~、良くない親の元にいるんじゃないんすか?」


あぁ・・・確かにブランの事はすごく心配だ。


「今なら俺もヘブンもいるんで、お兄さん一人くらいなら一緒に連れてくか、ここでばあちゃん達に任せる事も出来ますよ」


そうなんだよね。

一人で売られた時と違って、心強い味方もいるんだけど・・・。


「う~ん・・・」


「何すか、何が心配なんすか」


違うのよ、心配じゃないの。


「道がね、わからないのよ」


「え?」


「売られた時馬車に乗ってすぐ寝ちゃったからさぁ」


「は?」


こらナイトくん、そんな呆れた顔をするんじゃない。


「家が見えるトコまで行けばわかると思うんだけど、地名も何も教えてもらったことないから行きようがないのよ」


そりゃね、私だって迎えに行こうと思ったけどさ。

どこにあるのかわかんないんじゃ、どうしようもないじゃない?


「でも早めに家を出るように言ったし、大きな街で伝言残すね、って言ったから。多分また会えると思う」


これはホントにそう。


「なんか大丈夫って気がするんだよね」


「そう、なんすか?」


「前の使徒サマも時々そんな事言ってましたね〜。使徒様のお力なんですか?」


ヘブンが首をかしげる。

ん~?それはわかんないけどさ。


「色んな所をウロウロしてたら、きっと会えるよ。意外とすぐ家が見つかるかもしれないしね」


「その時は俺が例の親に七年分のお返ししますよ」


「ワタクシも!ワタクシも!」


ハイハイ、心強い味方が出来たよってブランにも教えてあげなきゃね。


そんな感じで、おばあちゃん達に見送られて二人と一匹でトネリ村を目指しつつ。

道中でナイト先生にこの世界の事を教えてもらっているのだ。


「ただ、ドルムンタ伯爵っていい噂を聞かないんっすよね」


ほほう?噂とな。


「いい領主がいる土地なんかは、税金も減らしてくれてるんすよ。どこも不作がひどいんで。まぁそれでも厳しいんすけど、まだ生活は出来てるんです」


あぁ、良かった。

暮らしやすい所はまだあるのね。


「ただドルムンタ伯爵は領地や領民の暮らしより金集めに夢中みたいで。陞爵して王都に出るのを狙ってるらしく、根回しに金かけてるって話っすよ」


・・・君やたら詳しいね?


「なんでそんな事まで知ってるの?」


「傭兵の仕事で、護衛した商人が色々教えてくれるんすよ。あとは、飲み屋とかの情報で。ハズレ依頼とかがあるんで、気をつけなきゃいけないんすよ」


へぇ~傭兵って言っても脳筋じゃやってけないんだなぁ。


「ナイトすごいね。ナイトが一緒に来てくれて良かったなぁ~」


「へへっ」


う~ん、イケメンの照れ顔もたまらないねぇ。

そうこうしてるうちに、道の先に家らしき建物が見えてきた。


「あれがトナリ村?!」


「トネリっす」


もういいじゃん、トナリ村で。


「突然行ったら驚かれるんで」


と、今回も先にナイトが先に行って事情を説明してもらう。

コミュ強がいると助かるなぁ。

私はヘブンとすぐ近くの木々の下でお留守番〜。


「ヘブンが普通の犬サイズになれたら驚かれないのにね〜」


「え、なれますよ?」


何ぃ?聞いてないぞ?


スルスルスルスル〜と子犬サイズになるヘブン。

か、か、か、可愛い〜!!!!

可愛い可愛い可愛い!

スリスリモフモフスリスリモフモフ・・・。


「ンフフフ、キトルさまくすぐったいですぅ〜」


んは〜!堪らん!!


「あれ、それヘブンっすか?」


ナイトが帰ってきて私の腕の中を見たけど、あんまりビックリしてない。


「なんで驚かないのっ?!」


「いや、魔獣って大きさ変えるやつ居ますし・・・」


「こんなにラブリーなのにっ?!」


「らぶりぃ・・・?」


あ、後ろに誰か付いて来てた。

ちょっと恥ずかしい。

おぉ、すご〜く長老感のあるおじいちゃんだ!


「緑の使徒様、我が村にお越しいただき誠に・・・」


「あ〜大丈夫です大丈夫です!今お腹空いて具合悪い人とか居ますか?!」


「は、はい!皆腹は減ってるのですが・・・」


「オッケー!」


中に入ると、村の住人は集落のみんなより痩せてて骨の形がわかるほど。

本当に食べ物がないんだね・・・。


よし、私に任せてね!

そこから、まずココナッツの実がなる木を各家の前に生やしていく。


コレ、実は私考案の栄養ドリンクココナッツ!

普通のココナッツジュースも栄養たっぷりだけど、プラスの効果でまず食事を食べられるよう胃腸を整えてくれるのだ。

お腹空いたまま大量のバナナ食べて苦しそうな人が居たから、ちょっと考えたのさ。


「まずはその実の中のジュース飲んでね〜」


お腹の準備が出来たらそのまま実も食べて貰って、無駄にしないエコ仕様!

んふふ〜我ながら良い物を思いついたぜ。


お次はココナッツの近くにパイナップルを作って回る。

集落や村ごとに特産品があれば物々交換とかも出来るし、単純にココナッツの横にあると似合うからね!


ザ・南国!

あとは〜、普段から作ってるお野菜を生やして〜、モーリュ草も作って〜。


「おい!お前何をしている!」


あん?

後ろから偉そうな声。

見るからに高そうな服を着たオッサン。

何コイツ。


みんなが食べる物無くて痩せてるのに、超おデブじゃん。

嫌な感じ〜。


「代官殿、コチラは緑の使徒様にございます!」


長老じいちゃんが慌てて駆け寄ってくる。

そうよそうよ、使徒様よ。控えおろう!


「なんと!緑の使徒さ・・・お前、本物か?」


何なのよ。なんでみんな疑うのさ。

口をへの字に曲げたままサッと手を出して、モーリュ草を生やしてみせる。


「おぉ!まさに緑の使徒様!いやいやいやいや、こんなむさくるしい所なんぞにお迎えして申し訳ない!」 

なんでコイツがむさくるしいって言ってんのよ。

失礼な奴ね。


「さぁさぁさぁさぁこのグズリ代官が、領主様の元へご案内いたしましょう!このグズリ代官が!」


う〜わぁ〜ウザ〜い!

超〜嫌なんだけど。


「嫌です」


「え?何とおっしゃいました?」


コイツ絶対聞こえてるでしょ・・・。


「だからぁ〜」


「あの、多分コレ断ると、ここの村が後からマズイ事になると思うっす」


ナイトがこっそり耳打ちする。

あ〜ね、確かにコイツ後で嫌がらせとかやりそうな顔してるわ。

仕方ない。


「はぁ〜わかりました。行きます、行きますよ」


悪い噂のドルムンタ伯爵に、会いに行ってあげようじゃないの。

アドバイスをいただいたので、読みやすいように行間を開けてみました。

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