表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/147

エピソード 79

「なぜだっ?!早くやればよかろう!」


「い~や~だっ!」


キトルちゃん絶賛反抗期・・・ではなく。


ドラゴンさんに早く石に力を込めるよう促され、拒否してるとこなのだ。


「だからぁ、さっきから言ってるじゃん!思いっきり力使うと眠くなっちゃうの!寝ちゃったらそこの忍者さん達も動かせないし、先に目的とか黒幕とか聞いとかないとでしょ?!」


緑のミイラと化した忍者もどきをビシッと指さす。


「ふん、もんじゃ?など放っておけば良かろう!そんな奴らよりも、永き時を待ち続けた我を元の姿に戻してもらわねば!」


「忍者!そんな美味しそうな名前じゃな・・・って、え?元の姿?」


ドラゴンさんが短い手を胸の前で組む。その姿はちょっと可愛いな。


「お主・・・いや、先代か?緑の使徒が千年枯れの危機に瀕した我が国を訪れなかったあの時、枯れゆく緑を前に手をこまねいている事など出来ぬと、我の持ちうる巨大な力を使いその時を止めたのだ。民たちが飢えぬよう、元の姿に戻した上でな」


え?ドラゴンさんが透明のジャングルにしたって事?


「だがそのせいで身体は縮み、この森の様子を知る程度の力しかなくなってしまった・・・。お主がこの国に足を踏み入れ緑を癒し始めてからは少しずつ身体も大きくなってきたが、本来の姿からは程遠い!早く、元の荘厳で雄大な我にふさわしいあの姿に戻すのだっ!」


つまり、この国の人たちを救おうとしてあ~だこ~だやった結果、透明ジャングルと小ワニドラゴンが誕生したって事なのね。というか・・・


「元の姿って大きいんですか?」


「うむ。我の本当の姿はそれはそれは大きく威厳に満ち溢れ、天を覆い、国中の民がひれ伏し拝んだものよ。それはまさに神々の住まうあのセイクリッド山のようだt」


「え~小さい方がいいじゃん、可愛くて」


「んなっ!何を言うか!大きい方がカッコいいだろう!!」


「小さい=可愛い=正義よ!」


「あの~ちょっといいっすか?」


不毛なやり取りをナイトが手を上げて止める。


「あの、ドラゴン様が最初縮んだ時どのくらいの大きさだったんですか?」


「む?そうだな、ネズミか生まれたばかりのヤマネコほどか」


「で、キトル様がウロウロしてちょっとずつ身体が大きくなったんすよね?」


「うむ、元に戻っていったと言った方が正しいが」


ナイトがおもむろにカバンの中から地図を取り出す。


「・・・ちょっと、そこから降りてもらってもいいですか?」


「ここか?ふむ、まぁ今は緑の使徒もおるしな。良いだろう」


盛り上がった土の上からドラゴンさんがよいしょ、と私たちの横へと移動する。やっぱり小さい方が可愛いと思うけどなぁ。


「っあ~!やっぱり!!光った!」


地図を覗き込むと、光がピカピカと存在を主張している。


「あ~、壊れてるかもって言ってたやつ?あ、じゃあドラゴンさんが石の上に乗ってたから光が付いたり消えたりしてたって事?」


「・・・そういう事でしょうね・・・そうか・・・まぁ、壊れたんじゃなくてよかったっす・・・」


ナイトがガックリと膝に手をついてる。お疲れさんだねぇ。


「じゃあドラゴンさん、ずっとここに居たの?」


「うむ、前にここを訪れた使徒が心配しておったのでな」


ん?


何か聞き捨てならない事をサラッと言ったな?


「心配?何を?」


「む?そうだな、あれは一千年と百年ほど前か。この国を治めていた我の元へと緑の使徒が訪ねてきてな。その姿の愛らしさと言ったら、言葉では言い表せないほどの衝撃だった。我にとってほとんどの生き物は弱く、同じように見えるからな。それまでこの世はドラゴンかドラゴン以外かだったが、突然世界が広がったあの日の事は今でもはっきりと思いだせる・・・」


突然早口で喋りだしたぞ、このドラゴン。しかもカリスマホストみたいな事言ってるし。


「それってドワーフの緑の使徒様?」


「そうだそうだ、ドワーフだと言っておった。あの使徒が麗しい瞳で我を見上げてな。『この石が人目に触れると困るんです』などとお願いするものだから、ならば我が守ってやろうとそれからずっとここにおるのだ」


おぉう。まぁ好みはそれぞれだしね。しかし、千年前からずっとここに・・・?


「エルガ君、私詳しく知らないんだけどさ、千年前まではドラゴンが国を治めてたんだよね?」


突然話を振られたエルガ君、飛び上がってヘブンにしがみついた。


「はっ?!え、何が・・・あ、千年前だなっ!そうだな、えっと、正確には千と百と四年前に竜王様が首都を離れられるまでは、絶対的支配者として君臨されていたと教えられたが・・・」


ジイランさんが血涙流しそうなほど羨ましそうにヘブンのこと見てるけど、それは見てないふり・・・。


「つまり、昔は超強いドラゴンが治めてて、緑の使徒様が来て、で、一目惚れしちゃったドラゴンさんが・・・」


「ひっ!ヒトメボレなどしておらぬぞ!ただ、愛らしく見るものすべてを魅了するような微笑みを浮かべていただ」


「ちょっと黙ってドラゴンさん。えっと、だから、ドラゴンさんが居なくなったせいで・・・」


「しかしだな、あの小さな手で我の爪を握ったぬくもりは、なぜかいまだに忘れられんのだ。そもそもドワーフと言う種族を見たのが初めてだったからそのせいもあるというのが我の推測で」


「でぇ~い!!うるさい!もう!考えがまとまらないじゃん!」


も~!何か今掴みかけたのにっ!!


「キトル様、何となく言ってる事分かったんで手伝いましょうか?」


ナイトが助け舟を出してくれるけど・・・


「いや、いい・・・。もう任せた・・・」


やっぱり考えるのは私の役目じゃないや。船は船頭に任せよ、だっけ。


「つまり千年と少し前、緑の使徒様の出会いによりドラゴン様はこの石の傍にいるようになり、国を直接治める人が居なくなった。で、百年ほど前はフェンリル族が治めていたけどリザルドとの内乱が起こり、身の危険を感じた先代の緑の使徒様はドラヴェリオンを訪れる事はなかった。結果、国の危機を感じたドラゴン様はその身を犠牲にして植物を復活させた、という事ですね」


そうそう!!


「それ!それが言いたかったの!よくやったナイト!私の指示通りだね!」


お?なんだその目は。何か文句あるのかナイト君よ。


「内乱だと・・・?そんな事が起こっていたとは・・・だから緑の使徒は現れなかった、そういう事なのか?」


「ん~多分?知ってる事実を繋ぎ合わせると、多分そういう事だろうね」


「ならば政を放棄し、国を任せてしまった我にもその責任の一端があるではないか・・・。飢えた者達やその内乱で傷ついた者たちにも顔向けが出来ぬ。我が、ドワーフの使徒の願いを聞いてしまったが故に・・・」


あらま。頭も尻尾も下向いちゃった。その羽もそんなにダランと出来るのね。


「う~ん、まぁ仕方ないんじゃない?」


敢えて軽い口調で言ってみる。


「だってどうなるのかなんてわかんなかったんでしょ?じゃあしょうがないって。私だってエルガ君に可愛くお願いされたら国中にニンジンくらい生やしちゃうもん。反省は必要かもだけど、落ち込むよりこれからどうするのかの方が大事だよ!」


うっ。ミニドラゴンの上目遣いなんて初めて見た。いやドラゴン自体初めてなんだけども。


「ね?反省・検証・改善策の提案!ビジネスの基本よ!」


「び、びじねす?」


「どうやれば良い方向に行くのか考えようって事!」


「・・・そう、だな。そうだな!うむ、お主の言う通りだ!過去ではなく未来を見る。これこそ生きる者のあるべき姿だ!」


うんうん。羽も尻尾も元気出て良かったよ。


「今代の緑の使徒よ。礼を言うぞ。お主がここに来ず、来ようとも我と対話をしなければ、我は何も知らずこのままここでさらに千年の時を過ごしたであろう。・・・お主は見た目こそ他の人間と同じだが、心根は我の出会ったドワーフのようだ」


あら、それはなかなかの誉め言葉では?


「よし、ではまずはお主の言う通りけんじゃを起こして問い詰めるとするか」


「忍者ね、忍者。そんなカッコいい呼び名付けなくていいよ」


ミニドラゴンが尻尾を左右に揺らしながら緑ミイラの方に歩いて行く。


と、すすす・・・とエルガ君が横に来て小声でささやいた。


「キトル殿・・・頑張って、か、か、可愛く言う練習をしておくので、この国におられる間にニンジン畑を作っていただきたい・・・」


んもぉ~!何それっ!そんな事考えてたのっ?!


作る!作るよ!なんぼでも作ったろうじゃないのぉっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ