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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 77

「爺、ジイランはな、僕が生まれた時に父に世話係としてつけられた使用人だったんだ」


昨日と同じように前にナイトと私、後ろにヘブンとエルガ君で引っ付いて霧の森の中を歩く。


狙ってきた人達のこともあるし、黙って歩いてると余計疲れるから何か話を、と思ってジイランさんの事をエルガ君に聞いてみたところ。


「子供の頃はジイランと呼んでたんだが、一度怒った時にジイ!と呼んだら気に入ってしまってな・・・ジイと呼べとうるさいから、嫌味も込めて爺と呼んでるのだ」


だから爺なのね。まだ若いのになんで爺なのかと思ったらそんな深・・・浅い訳があったとは。


「あの人、俺の事少々出来るっつってましたけど、俺より強いんすかね?」


あらナイトってば、口ちょっと尖らせてない?下に見られたのが悔しかったのか?


「そうだな、余が生まれる前は非常に荒れた生活をしていたとかで、危険な目に遭って死にそうだった所を父が助け、そのまま使用人になったと言っておった。守護隊にもスカウトされたそうだからそれなりに強いとは思うが、どうなのだろうな?」


「ジイラン、ジイラン・・・どっかで聞いた事がある気がするんすよね・・・」


「そういえばエルガ君、守護隊の人にジイランさんと誰かによろしくって言ってなかった?」


一瞬エルガ君の顔が曇る。


「ドルコス、余の教育係だな。宰相の息子で次期宰相になる事が決まっておる。余がまだ若いから、実際に国を動かしているのはあの親子だ。だがドルコスは・・・帝王である余が言う事を聞くのが当然と思っておるのだ。教育と言いながら父の教えと違う事ばかり言うし、あ奴は好かぬ」


あ~帝王教育が嫌で逃げて来たって言ってたけど、その人が嫌って事ね。


ちらと横を見ると、ナイトがまだ「ジイラン、ジイラン・・・」と言いながら考え込んでる。道案内は大丈夫なのか?


「あ、キトル様、そっちじゃないっす。こっちですね」


・・・なんで霧の中で分かるんだろ。


お昼休憩の後一時間ほど歩いて開けた場所に出たところで、ナイトが立ち止まった。


「覚えているのはこの辺までですね。おそらくかなり近くには来たと思うんですけど・・・」


そう言いながら二枚の地図を取り出す。


「あれっ?!」


「えっ、今度は何っ?!」


「光が、復活してます・・・」


ナイトの手元を覗き込むと、疲れみ地図に点滅する光と赤い線が見える。


「接触が悪かったとか?まぁ直ったんならよかったじゃん!」


「接触?・・・でも理由がわからないと地図自体を信用していいのか・・・あっ、また消えた!」


「だ、大丈夫なのか?」


後ろを見ると、ヘブンの首に抱きついたエルガ君が不安そうな顔をしている。尊すぎてヘブンとエルガ君、どっちが羨ましいのかもうわかんないな。


「別に行く方向が決まってるわけじゃないんだし、とりあえず示してる方に行ってみようよ」


「それもそうっすね」


また透明の森を進み続ける事一時間弱。


「来た!!」


「えっ?!何が来たのだっ?!」


後ろで私の服の裾を掴んでるエルガ君の手がビクッとなる。


「キトル様、近づくと気配で分かるらしいんすよ。使徒様の力だと思うんすけど、もしかしたらキトル様の野生の勘って話も」


「ナイト、うるさい」


石に呼ばれるような感覚を頼りに歩き始め、後ろから三人が引っ付きながらついて来る。


透明の木々に避けてもらいながら進むと・・・私の腰くらいまで地面が盛り上がってる部分に、緑色をしたウロコの塊が見えてきた。


「なんだろ、コレ」


近くで見ても、何だかわからない。直径一メートルほどの楕円形の塊。


「この国の石はこんな感じとかっすかね?ドラヴェリオンっぽい感じで」


「そんなわけがなかろう」


昨日聞いた声が響き、緑色に光る塊が動き出し・・・顔を上げた。


「・・・ドラゴンさん?」


「左様。よくぞ我が眼前まで辿り着いたものよ。千余年を待ち続けた身からすれば、遅きに過ぎるがな」


え?何かイメージと全然違うんだけど・・・


「ちっちゃくない?」


サイズ的には柴犬よりちょっと大きいくらい?昔実家で飼ってた雑種犬がこのくらいだったな。


「なっ!おま、誰のせいでこうなったと思っておるのだ!」


ガウガウと響く声で怒ってるけど、この大きさだと子供のワニみたいな感じだな。


「え?私何もしてないよ?」


「緑の使徒の事なのだからお主の事であろう!」


またぁ~。すぐ人のせいにする~。


「あのねぇ、私は緑の使徒らしいけど、今の代の使徒なだけなのっ!わかる?!私がやってもない事を怒られたって困りますぅ~!」


ぷ~いとそっぽを向くと、エルガ君と目が合う。


ポカンと私とドラゴンのやり取りを見ていたエルガ君だったが、私の顔を見て我に返ったのか「り、竜王様っ!」と口を開いた。


「む、久しぶりにその名で呼ばれたな・・・お主は我が地の民か?」


ドラゴンさん、声が低くてお腹に響くなぁ。


あ、ほら、エルガ君プルプルしちゃってるじゃん!


震える手をぐっと握りしめると、しっかり前を向く。


「はい、若輩ではありますが、リザルドの血を色濃く継いでおりますゆえ、御身に代わりこの国を帝王として治めておりますエルガ・リザルドと申します」


偉いねぇ~!ちゃんと言えたよぉ~!あとで甘い果物作ってあげようねっ!


「キトル様、拍手止めてください」


ナイトに止められ、仕方なく手を降ろす。ちえ。


「そうか、それはご苦労だったな。して、何故緑の使徒と共にここに来た?」


「我が国においては、神の使徒たる緑の使徒は悪しき存在と伝えられております。しかしながら、こちらにおられるキトル殿は、優しく、愉快で、心地よい心を持ったお方です。ゆえに私は、自らの目で確かめたく思い、この者が国を発つまで共に行動しようと、こうしてお供いたした次第です」


言葉を選びながらも最後まで言い切ると、深々と頭を下げる。


やだもう、褒められて嬉しいのとエルガ君が一生懸命話してるのとでもうお腹いっぱいだわ!


「キトル様、気持ち悪い顔止めて下さい」


おい、今は別に普通の顔だぞ?


「ふむ、そこまで言うか・・・。使徒よ、わが眷属に連なる者にそこまで言わ」


「すいません、ちょっと、その声止めてもらってもいい?」


「むっ?!」


ドラゴンの声、昨日も今日も辺り一帯に響いててさ・・・


「なんかお腹ムズムズするし、追いかけて来てる人達に聞こえるかもしr」


「こちらの方から聞こえたぞ~!どこだ緑の使徒め~!!」


フェンリルの肉おじ達の声が遠くに聞こえてきた。


「うげぇ・・・どこまで来るんでしょう・・・」


ヘブンが心底うんざりした顔で舌を出す。


「あやつらは何者だ?」


なんだドラゴンさん、普通に喋れるんじゃん。


「話せば長くなるけど、聞きたい?」


ちょっと悩んで「いや、やめておこう・・・」と答えるドラゴンさん。賢明なご判断で。


「聞きたい事は色々あるが、緑の使徒よ。まずはこの国を元の姿に戻してもらわねば。さぁ、皆にその御業が見えぬよう、目隠しを作ってみせよ!」


やれって言われるとやりたくなくなるよね~。やるけどさ。


ドラゴンが乗ってる盛り上がった土の辺りから石の気配を感じるし、その辺に目隠しの竹でも生やして和風の囲いでも作ろうかな。


三人にちょっと下がってもらおうと振り向くと・・・


「・・・誰?」


「すんません、キトル様・・・」


両手を挙げたナイトの喉元に短剣を突き付けているのは・・・忍者?


黒い服に身を包み、目元以外はすべて隠れている。


そしてエルガ君には二人・・・一人は同じように短剣を首に当ててるけど、一人はエルガ君の首に黒っぽい金属製の首輪をつけ、そこに付いたチェーンを手にした。


エルガ君の後ろにいるヘブンにも同じ金属の首輪がつけられ、横に立った忍者がそのチェーンを持っている。


「悪しき緑の使徒よ、この国に何もせず立ち去るのであれば従者に危害は加えない。国を離れた事が確認出来た時点で従者は解放しよう。何かおかしな動きをすれば従者の首にこの剣が刺さる事になるぞ」


エルガ君は離れていてもわかるほどブルブルと震えてる。


「お主ら、どうやってここまで近づいた?」


ドラゴンがまた声を響かせて話し始めると、エルガ君の首輪のチェーンを持った一人が軽く笑う。


「ここ数百年で便利な魔道具が沢山出来ましてね。着けるだけで気配を消せる指輪や、このように魔獣の能力を封じる首輪など、ね」


手に持った首輪に繋がったチェーンをジャラリと持ち上げてみせる。


「キトル殿、余に構わずご自分の使命を!」


「そうっす!俺らは自分で何とか、あ、いてっ!」


ナイトの首に短剣の刃先が当たり、赤く細い線が浮かび上がった。


ブワッと血が逆流する感覚。でも、逆に頭は冷え、周囲の音が消えていく。


・・・これは、本気で怒ってもいいんじゃないの?

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