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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 74

「あぁぁぁぁ~・・・・!!」


ボフ~ン!


「うひょぉぉぉぉ~・・・!!」


ボフ~ン!


おじさん達をネバネバにした後、我ら緑の愉快な仲間プラスワンは空中散歩をエンジョイしまくった。


どうやったかって言うと、蓮の葉の階段の途中にリンゴの木を作って周りに階段を配置してグルグル食べ歩きしたり、空高くに綿を作って雲の上気分でお昼寝したり。


で、そろそろ降りようかとなった所で見つけたのが緑と透明の森の境目、最初にエルガ君が落ちてきた木がある場所。


さっきお昼寝した綿をその木の上に乗せて、ジャンボ笹の葉を作って滑り台にしてみたんだよね。


「ラスト!キトル、行っきま~す!」


勢い付けて笹の葉にジャンプ!


「うひゃぁぁぁぁ・・・!」


ボフ~ン!


真っ白な綿がふわふわと舞い上がる。


「楽しいっ!楽しいぞキトル殿!こんなに楽しいのは生まれて初めてだ!」


白いふわふわが天へと昇る雲のように漂う中、ニッコニコのエルガ君。え?この異世界には天使もいたの?


「キトル様、手、手」


はっ!油断してたらつい拝んじゃってたわ。


「地上に降りてはきたが、ここからどこに行くのだ?」


雲のような綿を抱っこしたエルガ君が聞いて来る。イチイチ絵になるのやめてくんないかなぁ~。


「この辺は首都の近くっすよね?」


ナイトがカバンから二枚の地図を出しながら尋ねる。ドワーフ王に貰った地図と疲れみ地図か。


「そうだぞ。この木は大きく離れてても見えるのでな。こっそり抜け出した時はこの木を目印にすると、どんなに迷っても帰って来れるのだ」


まさかエルガ君まで迷子属性とは・・・。皆でナイトに付いて行くしかないね、こりゃ。


「ん・・・?あれ?おかしいっすね」


ナイトが地図を上にしたり下にしたりしてる。


「どうしたの?」


手にしてるのは疲れみ地図。


「いや、あの石の場所が出て来なくなってるんすよ。こないだまで出てたんすけど・・・」


「えぇっ?!まさかナイトまで属性追加されたのっ?!」


「ぞくせ?え?」


「ごめん、こっちの話」


ナイトの手元の地図を覗き込むと、前見た時にはあった光る点も赤い線も表示されてない。


「ホントだね。なんでだろ?」


「最後に見たのいつだったかな・・・。とりあえず首都を目指してたんで、二、三日前に見た時には線があったんすけど」


壊れちゃった?


ナイトの手から地図を受け取り草テントを思い浮かべると、地図にはピカピカした点と赤い線が光り始める。


「う~ん・・・壊れてはないみたいだねぇ。どうしたんだろ?」


「まぁ大体の場所は覚えてますんで、とりあえずそっちに向かって行ってみm」


「・・・ルガ様~・・・」


「・・・ねぇ、何か聞こえない?」


「エルガ様ぁ~・・・」


誰かが小声でエルガ君を呼んでる。


「爺だ!」


エルガ君の顔が一瞬嬉しそうになって、すぐにめんどくさそうな表情になる。


「爺って前も言ってたけど、どんな人なの?」


「・・・信頼は出来るが、過保護な世話係なのだ・・・」


ズボッ!


「うわっ!」


綿の絨毯から頭が出てきた。


「やはりエルガ様!ここに居らっしゃると思いました!」


嬉しそうな顔をしたおじいちゃ・・・おじさん?あれ?中年っぽいけど結構イケメンだぞ?


「おや、こちらの方々は・・・」


生首が回ってこちらを見てくる。


「爺、聞いて驚くな。こちらの方々は緑の使徒とその従者の方々だ。余はこの者たちが我が国を離れる時まで行動を共にする事にしたのだ」


「・・・それは真にございますか?」


「うむ、先ほど守護隊にも申したが、余は帝王として緑の使徒殿を見極め」


「このジイランを置いて行かれるというのですかっ?!エルガ様が生まれたその日から、毎日ずっとお世話をしてきたこのジイランをっ!」


ぶわっと涙目になる爺・・・ランさん。爺って呼んでたけど全然おじいちゃんじゃないじゃん。


「あのだな、爺よ・・・」


「わかっております!わかっておりますとも!エルガ様の成長の為にはほんの少しの間わたくしの手を離れる時間が必要だという事も!しかし、まだ少~し早いのではないですかっ?!」


「だからな、爺よ・・・」


「えぇえぇ、もちろんいつかは独り立ちされて行く日が来るのでしょう!その日の事を考えるだけでこのジイラン、胸が張り裂けそうな思いではありますが、その日がきましたら笑顔でエルガ様の背中を見送りましょうとも!立派になったそのお姿を見る事こそ我が人生の最大であり最後のゴールでございますので、実はわたくしその日の為に涙をぬぐうハンカチの刺繡を毎晩ひと針ずつ」


「ジイラン!!」


「はっ!」


エルガ君の一喝で正気に戻った様子のジイランさん。


あ~誰かに似てるな、と思ったらアルカニアの宰相のレオンおじいちゃんだ。


「爺がそんなんだから守護隊に伝言を任せたのに・・・」


「フン、あんな青二才どもにエルガ様を任せられるわけがございません」


と言うと、ナイトと私に視線をうつす。ヘブンは小さいままだし、黙ってるからワンコに見えてる?


「あなたが緑の使徒様ですかな?それともこちらが?」


「あ、私です」は~いと手を挙げる。


「おや、貴女が・・・そうですね、わたくしは人を見る目があると自負しておりますし、幼い貴女が皆の言うような悪しき神の使いとは思えません。しかし・・・」


「し、しかし・・・?」


ゴクリ。


「エルガ様をお任せするには非常に心もとない。従者の方は少々出来るようですが、わたくしよりも強い者でないと、ひと時とはいえお預けする許可は出せませぬ!!」


キリッ!とした顔で言い放つジイランさん。気付いてる?あなたずっと生首よ?


「え・・・と、じゃあこれでどうですかね?」


首の下が見えないから大体の感覚で、もこもこ綿の中から生やしたツルを伸ばす。


「お?・・・おぉ?おぉっ!」


ジイランさんの右手と左足が上手くツタに絡まってくれたので、そのまま上に持ち上げて逆さまに宙に浮かべ、ついでに腰に付けてた剣もツタを絡めて抜けないようにする。


「これなら認めてもらえる感じ?」


「これはこれは・・・神の使いとは、かような事が出来るのですな!・・・いや、お見事!剣も抜けぬのではどうしようもないですな!」


ひっくり返ったままガハハ!と豪快に笑っている。うん、この人嫌いじゃないぞ。


「で、では!」


エルガ君が期待を込めて聞くと、ジイランさんが頷く。


「そうですな、エルガ様が使徒様と行かれるのはエルガ様の自由ですな」


「やった~!ありがとう、爺!」


ナイトにハイタッチして喜ぶエルガ君。くそ~私も正面じゃなくてあっち側に居ればよかった。


「そして、わたくしがその後ろを付いて行くのもわたくしの自由ですな!」


は?・・・そうか、そう来たか。


「エルガ様が成長していく姿をしかとこの目に焼き付ける・・・それもこのジイランの使命!エルガ様のお邪魔は致しませぬ!ただ後ろからそっと見守らせていただくだけで、万が一その御身に何かあ」


「キトル殿、ジイランにもあのねばねばした草を」


「へ~い」


ツルにプラスしてシュルシュルとネバネバ草を巻きつける。よく見るとジイランさんめっちゃガタイ良いな。


「ナイト殿、道案内を頼む」


「へいへい、キトル様、降りれるようにしてもらえます?」


「はいよ~」


グルグル巻きにされたジイランさんが声を上げる。


「エルガ様!わたくしもこれを取りましたらすぐに追いかけますので~っ!」


「来んでいい!」


エルガ君が見もせずに言い放ったのにジイランさん超笑顔。


大木の周りに作った蓮の階段を降りながらも聞こえてくる「すぐに参りますぅ~・・・」の声。


あ〜あ、何かまた濃い人が出てきちゃったんじゃないの?

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