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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 71

「ほ、本当にフェンリル族とは関係ないのだな?」


疑り深いなぁ、もう。


「関係ないですよっ!別に帝王の座とか興味も無いですし!」


ヘブン君?本人を目の前に興味ないってのはどうなのかな?


「そうか・・・、良かった。フェンリル族は余の命を狙っていると爺たちに聞かされてたからな。お主はただのフェンリルなのだな」


エルガ君、帝王だっていってたもんね。フェンリルの肉おじ達、玉座を奪還する~!とか言ってたし、ヘブンもその仲間だと思ってたみたい。


復活した緑のジャングルの道に出ては来たけど、肉おじ達やエルガ君を追いかけてくる人達に見つかると面倒そうなので、またジャングルに分け入って草木で大きなドーム状のテントを作り、その中でお話し中。


「ワタクシはただのフェンリルではありませんよっ!緑の使徒様にお仕えする、とても崇高な使命を持ったフェンリルなのですっ!」


フンッと胸を張るヘブンとそれを見せられてるエルガ君。美少年とワンコ・・・あ~この構図も絵に残したい。ん〜ヘブンはミニバージョンの方がもっと尊さが増すな・・・。


「そ、そうだ、おいお前っ!」


グルンとこっちを振り向くエルガ君。正面から見ると眩しいな~。


「緑の使徒と言うのは本当なのかっ?!お前はまだ子供だろう?!」


「そうですよ~緑の使徒のキトルちゃんですよ~」


「キトル様、流石にもうちょっとしっかりしてください」


ナイトに耳打ちされる。む。緩みすぎたか。


「子供と言うならエルガ君もそうでしょう?」


「んなっ!ぼ、僕はもう十を超えてるんだぞっ!」


ふむ。わかったぞ。この子、頑張って偉ぶってないと、一人称が僕になるんだな?


「ねぇナイト、獣人って年の取り方は人間みたいなもんなの?」


「俺も全ての獣人を知ってるわけじゃないっすけど、ほとんどの獣人は同じか少し長いかだったと思います。ドワーフとかエルフみたいに長寿じゃないはずですよ」


おぉ、エルフ。セレナさんの手記にも出てきたね。って事はエルガ君はホントに生まれて十歳なのね。


「ならば、先ほどの木を緑色に染め上げたのも、お前の仕業という事か?!」


「染め上げたっていうか、元の姿に戻ったんだと思うよ?」


キョトンとするエルガ君。う~ん、やっぱり写真じゃなくで動画で残したいな・・・。


「元の・・・?ならばあの木やこの森のような色が、本来の植物のあるべき姿だというのか・・・?」


周囲のジャングルを見渡す。そうか、十歳なら生まれた時から透明の植物しか知らなかったのか。


「そうだね。この森の本当の姿は知らないけど、勝手にこの色になったしそういう事じゃないのかな」


「勝手に・・・?お主が何かしたというわけでは無いのか?」


おや?お前呼びがお主になった。ケンカ腰じゃなくなったって事かな?


「そうそう、何もしてなくても、私がウロウロしたら全自動で植物や土地が復活するんだよね~」


「全自動でウロウロって・・・!」


何がツボに入ったのかナイトが声を殺して笑ってる。ウロウロしたら全自動ね。全自動でウロウロだと私が自動ウロウロマシーンになっちゃうじゃん。


「神の使いの力とはそのようなものなのか?」


頭の中がウロウロしてたら更に質問される。聞きたい事がいっぱいだね。


「自分で意図して使う事も出来るよ?ほら」


手を出してナイト達の頭に咲かせてた飴のお花を生やし、エルガ君に手渡してあげる。


「食べられるよ~」って言ったら恐る恐る口に入れて、ぱぁ~!っと目を見開き明るい顔。可愛いなぁ~。


「あとね、何かこの国の人たちは勘違いしてるみたいだけど、前の使徒様もちゃんとここに来ようとしてたらしいよ?でも内戦中で危険だからって来れなかったんだって。意地悪する理由もないんだし、わざと来なかったんじゃないんだよ」


「し、しかし人間は獣人を差別するから、我が国は助ける価値がないと思われたのだと・・・」


「差別してるように見える?私。あ、あとナイトも」


じっと私とナイトを交互に見比べる。


「見、えぬ、な・・・」


うんうん、と頷くナイト。


「俺の生まれた集落にも猿の獣人いましたけど、普通に友達でしたしね」


えっ?!そうなの?!あそこに獣人居たの?!


「それに、キトル様見たらわかるでしょう。エルガ、様?に対してもウヒョウヒョ言ってて気持ち悪いくらいなのに差別なんてありえないっすよ」


ちょいちょい失礼だなナイト。否定はしないけどさ。


「そうだな・・・余は周囲の言う事を鵜吞みにしていただけで、現実を知らなかったのか・・・」


ん~、落ち込んでるけど、何かそれも違う気がするなぁ。


「多分、エルガ君に教えてくれた人も悪気があって教えたんじゃないと思うよ?傷ついてほしくなかったとか、もしかしたら知らないだけで本当に差別する人もいるかもしれないし。でも、人それぞれ考え方や感じ方は違うから、人間は、とか緑の使徒は、って一括りにするんじゃなく、その人その人を見てあげたらいいと思うな」


じっと目を見つめられる。ううっ・・・キラキラだぁ・・・。


「少なくとも私たちは獣人でも何人でも気にしないよ!助けたかったら助けるし、ダメって言われても勝手にこの国を救うつもりだしね!」


ちょっといい事言っちゃった。照れ臭くてへへへっってガキ大将みたいな笑い方で誤魔化しちゃうぜ。


「緑の使徒殿・・・」


「あ、キトルでいいよ。ってか私もエルガ君って勝手に呼んでるし」


「キトル殿、其方は本当に神の使徒なのだな・・・。このように神々しい人間、余は初めて見たぞ・・・」


こ、神々しい?!えぇ?!君の方がよっぽどキラキラしてるよ?!鏡見て?!


どうしたのこの子、と思ってナイトを見ると両手を左右に出して肩をすくめてる。ア~ハン?じゃないのよ、そのポーズ異世界でも通用するのか?


「うむ、決めたぞ!キトル殿、世界を、いや、せめて我が国におられる間だけでも、其方の近くで学ばせていただきたい!余は其方の素晴らしさをしかとこの目に焼き付け、緑の使徒が悪しき者などという勘違いを正してみせようぞ!」


「いや、みせようぞって、別に敬ってほしいわけじゃないからそれはどっちでもいいんd」


「その謙虚さ!まさに皆が言う余に足りないものだ。誰に認められずとも世を救おうとするその姿勢たるや、見事だ」


っはぁ~?!なんでっ?!ちょっとナイト!こういうの上手い事まとめるのナイトの役目でしょ?!


「あ~あ、キトル様の人たらしィ~」じゃないって!


「で、でもエルガ君追われてるんでしょっ?!私たちはほら、先を急がなきゃいけないしさ!」


「其方たちの力があれば、余を匿う事など造作もなかろう。それとも、余が付いて行くのは迷惑か・・・?」


ぐはぁっ!やめてその上目遣いっ!破壊力がっ・・・!


「どうせ無理っしょ、キトル様。言ってたじゃないっすか、トラブルの方から近づいてくるって」


「ワタクシはキトルさまの言う事に従いますから、どっちでもいいですよっ!」


二人がぐいぐい後押ししてくる。うあ~!も~!


わかったよ!美少年も一緒に連れて行ってやろうじゃないのっ!

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