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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
ドラヴェリオン帝国編

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エピソード 69

ドラゴン帝国に入国して一週間。


スキルも色々試して、ちょっと使い方に慣れて来たところ。


どんな風に使うのかって?まぁそれはそのうち披露するとして。


私が通ってきた透明な森・・・というよりジャングルは、どんどん緑色になっていってる。後ろを振り向いて見える範囲は全て緑色だから、これもスキルアップのおかげなのかな?前は歩いた場所だけだったのに成長したよねぇ。


ジャングルとはいえ道もちゃんとあるし、分かれ道ではナイトが地図を見てくれるから道のりは順調!なんだけど・・・。


「また見られてるねぇ」


人の気配なんてもんじゃない、明らかに見えてるのに話しかける訳でもなくびみょ~な距離でチラチラとこっちを見てる。


最初こそ話しかけたり近づいてったりしてみたけど、ことごとく逃げるもんだから諦めた。


「話しかけてくりゃいいのに、なんであの距離なんすかね」


「噛みついてキトルさまの前に連れて来ましょうか?!」


ヘブン君がいつになく好戦的。どこの住民もずっと遠巻きに見てくるもんだからイライラしちゃってるんだよね。


「国を救ってるはずなんだけどなぁ~この反応は想像してなかったわ」


はっはっはと笑って見せるけど、愉快な気分ではないな。


「まあいいよ。別に危害を加えられるわけでもないんだから」


そうそう、見られてるだけなんだし我慢がま・・・


ザッ!!


「わが先祖、フェンリル様とお見受けしますっ!」


突然、十数人ほどのムキムキマッチョな男性達が目の前に現れて道を塞がれた。


拳法でもやってそうなお揃いのノースリーブの道着で、みんな右手をグーにして胸の前で開いた左手に当ててる。


どうも、第一村人発見!って雰囲気ではなさそう。


「フェンリルって事はヘブン?」


「フェンリルはワタクシですが、何か御用でしょうか?」


ズイ、と私を隠すようにヘブンが前に出る。


「おぉ、やはり・・・その神々しき姿は間違いなくブラックフェンリル様!お待ち申しておりました!!」


・・・色々聞きたい事はあるけども。


「ヘブン、この人たちと待ち合わせしてたの?」


「いえ、初対面のはずですが・・・」


「でも待ってたって言ってるぜ?」


我ら愉快な緑の三人組、困惑中。


さっきから一人だけ喋ってた先頭の筋肉おじさんが一歩前に出る。


「我々はフェンリルの獣人、永きに渡りこのドラヴェリオン帝国を治めていた種族にございます。しかし、先の内戦で帝王の座を追われ、現在はこのように身を隠しながら玉座を取り戻すべく動いております」


聞いてもないのに勝手に語り始めたぞ?


そんで、なんだかまた面倒なのに巻き込まれそうな気配。


「我らの先祖、フェンリル様の中でも更に高位の神獣であらせられるブラックフェンリル様にお力添えをお願いしたく、お噂を聞いて馳せ参じた次第であります」


「はぁ、お力添えとは何ですか?」


珍しくヘブンがめんどくさそうな口調で聞き返す。


「リザルドの獣人が卑怯な手で我らから奪った玉座を奪い返すのです!小賢しい前王は隙を見せませんでしたが、現帝王は先祖返りしただけの小童。ブラックフェンリル様さえいれば玉座の奪還など容易い事。さぁ、共にフェンリルの誇りを取り戻しましょうぞ!」


「嫌ですっ!」


・・・まぁそりゃそうよね。


初対面の相手にいきなり国乗っ取りましょう!なんて言われて、やったるでぇ〜!なんて言わないでしょ。


なのに、なんで筋肉おじさんポカンとしてるのよ。


「し、しかし我らフェンリルの・・・!」


「あのですね〜、ワタクシは確かにフェンリルですが、アナタ達の事も知らないし、王様が誰になろうと別に構わないんですよっ。ワタクシにはワタクシの使命がありますし、やりたいならそっちで勝手にやって下さいっ!」


うんうん。よく言った。偉いぞヘブン君。


「・・・使命とは、その悪しき緑の使徒なる者の事ですかな?ブラックフェンリル様、貴方様はその者に騙されているのです!」


スバーンと指を差される私キトルちゃん。思わず自分を指差して、ナイトに「私、騙してたの?」って聞いちゃう。


「キトル様に騙されるようなら騙される方はよっぽどの馬鹿なんだと思いますよ」


おい失礼だなコノヤロー。喧嘩売ってるのか?


「何よりヘブンが望んで勝手に付いて来たんすから、騙すも何もないでしょ」


うんうん。それもそうだ。


「ワタクシは、ワタクシの意思でキトルさまに付き従ってるんですっ!失礼な事言うと怒りますよっ!」


グルル・・・と牙を見せるヘブン。あら、ホントに怒っちゃいそう。


「お可哀想なブラックフェンリル様。悪しき者を倒し、私共が本来の誇り高きお姿を取り戻して見せましょう!」


と言うが早いか、筋肉おじさんとその後ろのマッチョメンズがムキッと各々のマッチョポーズで身体に力を入れる。


笑っていいのかちょっと判断に困ってたら、道着から見えてた腕には白っぽい毛が、その指先には鋭く光る爪が、人間の顔が長くなり犬の顔に、そして頭の上にはワンコの耳が生えてくる。


「おぉ〜!可愛いワンコだね!」


パチパチと手を叩いてわざと煽ってみると、先頭にいた筋肉おじ・・・略して肉おじがギンッとニラんで牙を見せる。


「我らに向かって犬などと・・・子供とて容赦はせぬ!神獣を騙した大罪、その死をもって償うがぁぁぁぁぁぁぁぁ〜」


ギラリと爪を翻して一斉に襲いかかって来たけど、残念ながら、私ってば最近レベルアップしちゃったのよね〜。


肉おじ達の頭上、空中十数メートル地点から生えてるのは、頑丈でゴムのように伸びるツタ。


『どこにでも植物を作り出せるようになります』だからさ、空中にも植物を生み出せるの!超便利!これ、使い方によっては攻撃にも防御にもなって万能な気がするんだよね〜。


そして、空中から生やした頑丈なゴムのツタを、伸ばして伸ばしてピーンと伸ばして、地上にいる肉おじ達をしっかり捕まえて、伸ばすのを止めたら〜?


そう、逆バンジー!


空高く飛ばされたと思ったら、また地面スレスレまで落ちて来て、また空に上がって、を繰り返してビヨンビヨンしてる。


「うわぁぁぁ〜・・・うわぁぁぁぁ〜・・・」


ビヨンビヨンがだんだん収まってきたから、肉おじ達の近くに寄って行ってみる。


「貴様、我々に、このような、仕打ちをして・・・ウェッ」


あれ?酔っちゃった?まぁそのくらいはいいか。


「ねぇ、さっき言ってた悪しき緑の使徒ってどういう事??」


「教えてなどやらぬ!」と言った瞬間にヘブンがパシッと叩いて、今度は横にブランブランして「あぁ〜・・・あぁ〜・・・うっぷ・・・」って気持ち悪そう。


「み、緑の・・・」


お、何か喋り出しそう。ナイトが背後から捕まえて止めてあげる。


「緑の、使徒が、我が国に、だけ、来なかった、せいで、草木から色は消え、弱者は飢えておるのだ・・・オエッ」


は〜あ?何よ、この国ではそんな風に伝わってるの?


「あのね、前の使徒様は、あなた達が国の中で喧嘩してて危ないから来れなかったの!別に意地悪して来なかった訳じゃないのよ?」


「ならば何故緑が消えたのだっ!」


「知らないよ、そんな事。私に関係ない事まで私のせいにしないでよ」


私の責任じゃないっての。多分緑の使徒とも関係ないし。いやあるのかもしれないけど私は知らないよ。


「ふん、フェンリル様を騙す者の言う事など信用ならぬ」


よく上下逆さまの状態で偉そうに出来るな、この肉おじ。


「は〜、まぁいいや。別にアナタ達程度じゃ邪魔も出来ないだろうし、私は私で勝手にやるし。ヘブンを説得するなら好きにすればいいけど、嫌がる事はやめなさいね?あと、失礼な事したんだから、助けてあげないし頑張って降りてね?」


ニコ〜っと笑ってあげるけど、本心は笑ってないからな?


肉おじ達を放置して歩き出す。


背後で何か喚いてるけど無視無視。別に頑張ればそのうち降りれるでしょ。頑丈なツタにはしたけど切れない訳じゃないし。


しばらく歩いて、喚いてる声も聞こえなくなり後ろを見ても肉おじ達が見えなくなった頃。


「キトル様、良かったんすか?」


「何が?ヘブンが望まない限りウチの子はあげないよ?」


望んじゃったら・・・悲しいけど、その時は仕方ない。


「いや、それじゃなくて。ブラックフェンリルって何なのか聞かなくて良かったんすか?」


「あっ・・・!」


忘れてた。


でもまた戻って聞くのも何か嫌だなぁ。


「んんんんんん・・・気にはなるけど、もういいや!ブラックでもピンクでも、ヘブンはヘブンだよ!」


ヘブンが何だろうと、前の使徒様が何してようと、肉おじ達に邪魔されようと、何にも変わらないよ。


変な妨害になんて負けず、しっかりやる事やろうじゃないの!

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