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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
バラグルン共和国編

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エピソード 65

はっ!!


見知らぬ、天井。・・・ダメだ、二回目は面白くないな。


え〜と、あぁそっか、ここ、ドワーフ王様に用意してもらった客室だ。


確かもう遅いからってヘブンの背中に乗ってドラム=カズンに戻ってた所までは記憶があるんだけど・・・途中で寝ちゃったんだね。


どのくらい寝てたのかな〜?お腹は、空いてない。


あ、約束したし、何か食べさせててくれたんだ!


良かった良かった。


起き上がって窓を見ると、外はまだ明るいし夜ではなさそう。


ガチャ


ドアが開き、ナイトとヘブンが喋りながら入ってきた。


「だからな、キトル様なんだしこのくらいは食えるって」


「でもやっぱり緑の使徒さまなんですからお野菜の方が」


ナイトの手には大皿に乗った山盛りのステーキ肉。


この前倒したラガントゥスのお肉かな?ってか何その量。寝てる人に食べさせる物と量じゃないんだわ。


「あっ!キトルさまっ!」


「えっ?!もう起きたんすか?!」


もう?


「もうって?今回は何日経ってるの?」


「昨日っすよ!1日しか経ってないっす!」


え、ホント?


「凄い!やったぁ!もう身体が慣れてきたのかな?」


「いや〜わかんないっすけど・・・食べます?」


手に持ったステーキを前に出すナイト。


なんで寝起き一発目がステーキなのよ。


「戻ってきてから、どう?ザルクは国中に生えてるって?」


ナイトを無視して話を進める。


「昨日の今日なんでそっちはまだ調査中らしいっすけど、ドラム=カズンはキトル様のおかげでステーキ祭りっすよ」


????どういう事?


「キトル様戻ってくる途中で寝たじゃないっすか。あの後ドラム=カズンに入る直前に、またあのサンドワームが来たんすよ」


あら、また?


「しかも、お礼のつもりなのか、ラガントゥスを持ってきてて」


え、やだ、ミミズちゃん義理堅い子ね。


「しかもその量が百匹以上いて・・・」


ひゃ、百匹??


「昨日の夜から解体業者が総出で解体して、流石にそんなに持って行けないから王様に寄付したんすよ。そうしたら国民に振る舞う事にしたらしくて、夕方から街中が焼いた肉の匂いになってます」


人が寝てる間に色々話が進んじゃってる。


「ちなみに祭りの名前は『緑の使徒様のステーキ祭り』が最有力らしいですけど、どうですか?」


どうですか?じゃないよ。その名前じゃ私がステーキにされてるみたいじゃん。


「ナイトさん、ラガントゥスは匹じゃなくて頭じゃないですか?」


ヘブンもどうでもいい事ツッコんじゃってるし。


「あ〜・・・じゃあその手に持ってるのがそのお祭りのお肉なのね?」


「そうっす、食べます?」


いやだからいいってば。


「ん?夕方から?」


窓の外明るいけど。


「あ、今はもう夜っすよ。祭りなんでドワーフ連中張り切っちゃって、携光珠のデカいのとか持ち出してて今外は昼間みたいに明るいんです」


あ〜なるほど。お祭りの明かりなのね。


じゃあまぁとりあえずドワーフ王に起きたよ〜って挨拶にでも行きますかね。





「緑の使徒様がこの国におられるという事を、公表してもよろしいか?」


ドワーフ王様が、謁見の間の玉座じゃなく階段の下で胡座をかくなり聞いてきた。


私が起きましたよ〜!って報告に来たら、例によってまた貴族さん達を外に出してラフな感じになったところ。


「え?むしろ国民の皆さんは知らないんですか?」


公表する事なのかは知らないけど。


「いや、アルカニア王の話の、ほら、モルティヴァ信者の件があったしの。行動が制限されるかと思い表立って発表はしてなかったんだぞう。まぁ結局、口伝いに情報は回っておったようであまり意味は無かったんだがの」


「別に私はどっちでもいいですけど。公表しなきゃダメなんですか?」


「うむ、おそらく国中のザルクが復活しておるので、敢えて公表せずとも何となく皆わかっとる。だが使徒様に頂いたラガントゥスを、ワシや国からじゃなく緑の使徒様から賜ったのだとちゃんと公表したいんだぞう。何だか人の手柄を横取りしとるようで・・・」


あ〜居た堪れないのね。気持ちはわかるけど、このドワーフ王様もいい人だねぇ。自分のおかげだ〜!って言っちゃえばいいのに。


「じゃあ公表していいですよ。でも、ちゃんと正しく公表してくださいね?『私から貰ったから、王様が皆で食べる事にした』って」


「!!・・・そうだの、そう公表させてもらうぞう。使徒様、感謝する」


この国は共和国だって言ってたからさ。国民の事を考えられる王様や王妃様は、ちゃんと国民に好かれてて欲しいもん。ちょっと好感度上げるお手伝いくらいはしてあげまっせ〜!


「では行くぞう!」


ん?どこに??


ドワーフ王様、スタスタと階段を上がって玉座の前まで行き振り向くと、謁見の間に響き渡る大声で叫んだ。


「時は満ちた!天の御意を受けし神の使徒を民の前へと導く時だ!近衛の者ども、進み出て、我がドワーフの民の前へと導くのだ!」


何を言っとるんだ。


ん?兵士さん入って来たけど、まさか・・・?


あれよあれよという間に、気が付いたら王城のテラスみたいな所。


横にはドワーフ王様と、いつ来たのか王妃様。


そういえば、ドンドコドコドコ、とキャンプファイアーお誕生会で鳴らされたあの太鼓より大きい太鼓が謁見の間を出た時からずっと打ち鳴らされてる。


マンションの五階くらいの高さのテラスから恐る恐る下を見ると・・・


ワァ〜!っと大歓声&大観衆。


ひえぇ・・・いつの間にこんなに集まったの?


ドワーフ王様が私の横に並んで、角笛かメガホンみたいな形の金属がくっついた棒に向かって話し出す。


「聞け、我が同胞たちよ!ここにおわすは、火と鉄と誓いの神ヴォルグの導きにより遣わされた緑の使徒様にてあらせられる!この御方の御業によって、長き干ばつにより絶えた我が国のザルクは再び芽吹き、

枯れ果てた大地に、命の息吹が戻された!さらには、かのサンドワームを従え、ラガントゥスを屈せしめ、その肉を直々に授かりて、我らが民に祝福をもたらされたのだ!これはまさしく、神の御力を携えし使徒の証、ヴォルグの名にかけて讃えられるべき偉業に他ならぬ!讃えよ!」


何かよくわからんけど讃えなくていいよ・・・。長いし。


「さあ!使徒様!」


ヤベェ、こういうの私苦手なんだってば。


不安な顔で後ろを振り向くと、目が合ったナイトは満面の笑みでグッ!っと右手の親指立ててる。


左手に抱かれたミニヘブンは尻尾ブンブンだし。


んも〜!何て言えばいいのっ?!


コレ、地下に閉じ込められた時よりピンチなんじゃないのぉ〜?!

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