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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
バラグルン共和国編

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エピソード 55

「えっと、俺に分かる事でしたら・・・」


ヘブンのお腹と背中がくっつくと困るので先に食事を済ませ、一息ついたところでさっきの門番さんに聞きたいことがある、ともう一度テーブルに来てもらった。


ちなみに骨付き肉はなかったけどドでかいステーキ肉はあった!やったぜ!ジューシーで噛みごたえもあって旨味も素晴らしかった!何肉かは聞いてないけど・・・


門番のドワーフさんはグラムドさんと言うらしく、ドワーフではまだ若い六十歳らしい。


「あの地下神殿についてですか?俺も熱心な信者ってわけじゃないんで、簡単な事しか知らないですけど・・・」


グラムドさんの話では、あの神殿はも元々ドラム=カズンの端に位置してた小さな洞窟で、前々使徒様がその使命に目覚めた時に一か月ほど中にこもって広げたらしい。その後、旅に出る時に入り口をふさいでしまったものの、世界を救って旅を終えた後、またあの洞窟に戻り従者と共に生涯をそこで終えられたのだとか。


「使徒様の死後、神の気配を感じられる場所として開放されはしましたけど、使徒様が生涯をかけて広げられたのでその全貌はわかっていません。途中の道が塞がれてたりなど、使徒様が何かしらの意図を持って作られたと考えられてます。神殿までの道はわかっているので、人が通るのはほぼその道だけですね」


ふぅん。中を探検したり、調べようとしたりしなかったのかな。


「えぇ、洞窟内を研究しようとした人もいました。が、道が無くなるとか戻って来られなくなるとか、罰が当たったとか色々言われてそのままにされてます。・・・え?迷う人ですか?ん~・・・一人で来る信者の方ははあまりいませんし、初めて来る時は基本来たことがある人と一緒ですし。あと迷わないよう足元に案内の線も引かれてるんですが・・・気が付きませんでした?」


気が付かなかったぞい。


・・・はっ!ノルグさんが乗り移った!


しかし、他の道に人の手が入ってないんだとしたら、やっぱりあの道に書かれてたのは日本語なんだろう。


侵入って事はあの先に入る場所があるということ。


誰も入ったことが無い、前々使徒様が立ち入り禁止にした部屋か・・・。


あ、ついでに。


「神殿に、さらに奥の部屋ですか?どうですかね・・・十年に一度祭典がある時は信者の方が順番に部屋に入りあの中をぐるぐると回られるのですが、奥に部屋があるとは聞いたことが無いですね。俺が門番になったのが四十年ちょっと前ですし、その前だとわからないですけど。もう一人の同僚に聞いてみましょうか?」


ううん、そこまではしなくていいかな。


お礼を言ってお友達の所に戻ってもらった。


「あのグラムさんの話では」


「グラムドさんです」


「グラムドさんの話の通りなら、私が見たのは間違いなく前々使徒様の、誰も入ってない部屋だと思う。なんで使徒にしかわからない言葉で書いたのか、その奥に何があるのか、気になるんだよね・・・明日は、神殿はいったん置いておいて、そこを目指してもいいかな?」


「ワタクシはキトルさまに付いて行くだけなので、構いませんよっ!」


「キトルさまの思うようにしてもらっていいっすけど・・・行こうと思って行けるもんなんですか?はぐれたあたりまででしたら連れて行けますけど」


う~む、そうなんだよね。迷って辿り着いたんだから、どうやって行ったのかわかんないんだよね。


「まぁ、行き当たりばったりで行ってみよう!」






「着きましたね・・・」


「着いちゃったね・・・」


「さすがキトルさまですっ!」


私たちの前には『進入禁止』の文字が書かれた壁。


まさかこんな簡単に着けるとは。


なんかこっちかな~って方に右へ左へ進んでただけなんだけど、昨日迷子になった場所からほんの二十分ほどで着いた。


「緑の使徒様のお力ですかな。もしくは神のお導きか・・・」


今日はグリンベルダさんとタルゴさんも金属の試作をするとかで付いて来ず、執事さんだけがご一緒。


さっそくナイトとヘブンで壁を調べて、脆そうなところを壊しにかかる。


私と執事さんは破片が飛んできても危ないし、ちょっと後ろから見守りタイム。


「そういえば神殿の中は暗かったけど、洞窟の中は明るいんですね」


まだ光る玉を出してないし、昨日も迷ってた時全然暗くなかった。


「この洞窟自体がイルミナ鉱という神聖なる鉱物で出来ておりまして。イルミナ鉱は淡く光る鉱物で、地から離れると光を失うので掘り出して使えはしないのですが、このように洞窟をそのまま使う場所としては最適なのです」


ふぅ〜ん、神聖なる鉱物ねぇ。あ、そういえばザルクも生えてないや。


「じゃあ神殿の中が暗かったのは、岩の上から何か塗ってあるって事ですか?」


「ご名答です。神殿の中は使徒様が施された何かにより、闇夜の空間が保持されております。どのような塗料が使われたのか、もしくは使途様のお力なのかはわかっておりませんが」


「・・・それも、門兵の時に勉強したんですか?」


執事さんの笑顔が一瞬固まり、空気がピリッとした気がしたけど、すぐ元に戻る。


「どなたからお聞きに?」


「昨日の門兵さんです。たまたまお店でお会いして」


「そうでしたか・・・。辞めた理由などもお聞きに?」


「いえ、そこまでは」


そんなに興味も無いし・・・って言うのは失礼かしら。


「そうですね、特に口止めもしておりませんでしたし、お耳に入る事もあるのでしょう。あれはもう何十年ほど前になりましょうか・・・」


何か語りだしちゃったぞ。どうしよ。


「キトル様!抜けました!」


イェ~イ、二人ともナイスタイミング。


すぐに壁に近付きよく見ると、私やドワーフの執事さんがギリ通れるくらいの穴が開いてる。


「ワタクシがっ!掘ったのですよっ!」


「あっ!ひでぇ、俺も剣で削りましたよ!」


はいはい、二人ともありがとね。


「先に入っていい?」


「へい、念のためヘブンを連れてって下さいね。俺ももうちょい穴を広げたら行きます」


床に寝そべってほふく前進。こんなの前世を含めても赤ちゃんの時しかしたことないぞ。多分。


よいしょ、よいしょ・・・。


五十センチくらいの厚みの壁の穴を抜けると、広そうな空間に出て、頭を打たないか恐る恐る立ち上がる。ここも真っ暗だ・・・。


前々使徒様が、何かを壁に塗ってるって事だよね。つまり、ここは使徒様が使ってた部屋って事だ。


「キトルさまっ!どこですかっ?!」


ヘブンの声が聞こえる。


「ここだよ~わかる?」


冷たいものが手に当たって、モフモフに包まれる。ヘブンの鼻が当たったのか。可愛い。


「真っ暗ですねっ!昨日の光るのを下さいっ!」


ヘブンの声がすると同時に「はい、お待たせしました」と声がする。


執事さんが穴を通ってきたみたい。


「穴を広げますんで、ちょっと下がっててくださいね!」


ナイトの声がした瞬間。


ドォォォォォン・・・。


穴の向こうから大きな音がして、穴から差し込んでた洞窟の光が消え、完全な暗闇になった。


穴からは多分土煙が入ってきて、思わずせき込む。


「げほっ・・・ナイトっ?!」


何があったの?!


「ねぇナイトっ!大丈夫っ?!」


もう一度穴を通って戻ろうとしたら、小さな声。


「キトル様ぁ~・・・大丈夫っすかぁ~・・・」


ナイトだ!!声が少し遠い。


「こっちは大丈夫!!ナイトは無事?!」


「大丈夫っすけど、上から岩が崩れて来てて、戻る道も塞がれてて・・・すぐにどけますんで、待っててくださぃ~・・・」


マジか。閉じ込められちゃった感じ?無理に穴開けたから崩れちゃったのかな・・・。


申し訳ないことしたなぁと考えてたら、「使徒様、申し訳ありません」と後ろから声が。


振り向いたら、執事さんが昨日より弱く光る玉を持って立っている。


下からうっすら光が当たってるから、ラスボスのような佇まい。


「・・・申し訳ありません、とは?」


「あの爆発について、ですね。それと、今後の使徒様についてもでしょうか」


今後の私?


ってか爆発っつったな。この人がナイトを危ない目に遭わせたのか。


岩なんてもし頭に当たってたらどうするんだ。


「緑の使徒様に活躍されると困ってしまうのですよ。わたくし共の神といたしましては」


・・・何言ってんだこの人。


あ、あれか。モルガミ様の話か。って事は執事さんはモルガミ教の人なのか。


「でも、執事さんじゃ私に勝てませんよね?」


何ならスキルじゃなく体力でも・・・いや流石に無理か?


ヘブンが私の足にピッタリくっついて低く唸ってる。でも子犬ver.だからひたすら可愛いだけだな。


「えぇその通りです。ですから、閉じ込める事にしたのですよ。昨日までは、ドワーフの女性の出生問題に取り掛かられた時点で足止めに成功したと思ったのですが・・・。」


「え?でもまだ解決はしてませんよ?方向性が決まっただけで」


「そうです!そこなのですよ!ドワーフの宿命と言われ、何百年何千年と解決しなかった問題が!こんなに簡単に解決の糸口を見つけてしまうなど、誰が予想できましょう!!」


おぉう・・・ずっと穏やかだったのに、めっちゃ大声出すじゃん。


あれ?この人は、私をこの国に長居させようとしてたって事?


じゃあもしかして・・・!


「もう全てわかりましたよ、執事さん・・・グリンベルダさんを巡る決闘も、私の足止めの為にあなたが裏で手を引いたんですねっ?!」


絶対そうだ!


ズバンッと人差し指を突き出し、執事さんに向けて指す。


「え?いえ、違います。あれはタルゴ殿が勝手に言い出されたので・・・」


・・・んも~っ!


だから頭使うの無理なんだってぇ!


探偵役のナイトが居ないと、カッコよく決まらないじゃないのぉ~!

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