表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
バラグルン共和国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/147

エピソード 54

ひぃ・・・しんどい・・・


行く時は気が付かなかったけどこの洞窟迷路、神殿に向かって少~し下り坂。


つまり、帰りは上り坂。


しかも細いもんだからヘブン(大)は通れないし乗っていくわけにもいかず、ナイトに引っ張られ何とか出口に辿り着いた。


おかげさまで迷子にはならなかったけどねっ!


もう夕方だけど、まだ外は明るいな~なんて思いながら外に出たら。


「使徒様っ!!」「グリンベルダっ!!」


待ち構えていたのは・・・ドワーフ王妃様とノルグさん。あ~んどお供の騎士さん達。


どんな組み合わせ?あ、一応義姉弟になるのか。


「使徒様!この頂いたあんけ」「グリンベルダ!出来たぞい!あとは」「素晴らしいですわ!これまでの考え方を」「この種類と比率なのだが、強度と軽さのどちらに比重を置くのかをお主と」


待て待て待て待て。一気に喋るんじゃない。


パンッ!


執事さんが両手を叩き、一瞬でみんなの目がそちらを向く。


「失礼いたしました。では、順番にお話しされてみてはいかがでしょう」


おぉ~すごい。猛獣使いみたい。ん?この二人は猛獣か?


「ではわたくしから・・・。緑の使徒様、記録にある限りの赤子の性別、その時代の男女比を確認してまいりましたっ!そうしたら、約八千年前から五千年前の間に転換期が起こってましたの!また、大至急として王都内外周辺の既婚子持ち女性の元にあんけえとを飛ばし、先ほどまでにほぼ全員から返事が届きました」


王妃様、お仕事早ぁい・・・しかもシゴデキ。


「全ての情報を照らし合わせ、研究者からもお墨付きをもらいましたっ!やはり使徒様のお考え通りでしたわ!全員の返事がきましたらそれを元に文官と草案を作り、必ずや大臣貴族たちを説得して見せます!なので、その政策が出来ましたら・・・また、助言をいただけないでしょうか?」


えぇ・・・もうそこまで話し進んでるの・・・?


「いや、助言はいいですけど、こういうのはまず数値とそれに付随する情報、そこから仮説を組み立てて、そこから予測を立ててですね」


「そんな悠長な事言ってられませんわ。わたくしの次の王妃には、明るい未来を描ける国を引き継ぎたいんですもの!」


いやその心意気は立派だけども、せっかちなんだよなぁ・・・。


「じゃあ、試しに、とか仮説を確定させるために、とかそんな感じで説得出来ないか考えてみましょうか。あ、でもこっちの用事を優先しますけど」


「もちろんですわっ!」


王妃様超うれしそう。


「神の使命が・・・用事・・・」ん?執事さん笑いをこらえてる。


「キトル様?後であんけえとってやつと王妃様に話した内容、聞かせてくださいね?」


ナイトは顔は笑ってるけど目が笑ってないなぁ。わかってるってば。


「じゃからの、この比率じゃと強度がだの」


「でしたら、その分を他の金属で補ってみるのはダメなんですかぁ?」


「ほ~なるほどな。確かにそれなら理屈は通る。おもしれぇ発想だな」


待ちきれなかったのかノルグさんがグリンベルダさんと話し始めてるけど、そこに何故かタルゴさんも混じって議論中。


ん~あっちの話は専門的過ぎてわかんないし、放っておこう。


地下神殿の入り口でワチャワチャしてて邪魔だったから、全員でぞろぞろ王城に向かって歩き出す。


で、歩きながらも職人ドワーフ三人はずっと喋ってたんだけど。


「よし!さっそく取り掛かるぞい!材料も集めにゃならんし、グラントにも使いを出さにゃ!カルデン!手伝ってくれ!」


ノルグさんが大声出したと思ったら突然ダッシュ!


カルデンって誰だ?と思ったら走り出すノルグさんの後ろを早足で付いて行く執事さん。そういやそんな名前だったっけ。


慌ててグリンベルダさんとタルゴさんもその後を追う。


「まぁ!負けていられませんわ!使徒様、お先に失礼しますわね」


と何故か対抗心を燃やして走り出す王妃様。と、お供の騎士さん達。


で、ポツンと残されたのは我ら緑の愉快な仲間たち・・・。


「何っつうか、ドワーフは一直線すねぇ」


「イノシシみたいだね」


「あのイノシシ鍋、美味しかったですねぇ・・・」


イノシシって言っちゃったからヘブンのお腹がまた鳴った。


ヘブンお肉は食べないのに、イノシシ出汁を吸った野菜はもりもり食べてたもんね。


ん~王城についてもまた晩餐会という名の飲み会だろうし、せっかくなら・・・


「ね!城下町を観光して帰ろうよ!下町グルメ食べたい!」


「グルメってなんでしょう?美味しそうですねっ!」


「あ~・・・まあそうっすね、せっかく俺らだけだし。行きますか!」


よっしゃ〜!スチームパンクの街に突撃だ〜!





・・・そりゃそうよね。夜だもの。


雑貨や小物売ってるお店は閉まってるし、お酒好きのドワーフのレストランなんて飲み屋に決まってるよね。


お店の雰囲気はね、そりゃいいよ?


これぞファンタジー!って感じのログハウスっぽい造りの酒場、騒がしい店内に響く笑い声と喧騒、肉とお酒の匂い・・・あぁ、お酒・・・。


何味だかわからない黄色のジュースをちびちび飲みながら、エールってお酒を一気飲みしてお代わりを頼むナイトをジト目で見る。


エールってなんだ?ビールとは違うのか?


私も飲みたいなぁ・・・前世は大人だったんだし、良くない?もう八歳だしさぁ。


そ〜っとナイトのエールに手を伸ばしたら、コップが横に逃げる。


「ダメですよ。前の世界がどうであれ、今のキトル様は八歳の子供です!」


ぶ〜!ぶ〜!ナイトのケチ〜!


「ヘブンは飲んでるじゃん!子犬なのにっ!」


「ヘブンは俺らの中で一番年上です。元のサイズ見たらわかるでしょ」


「犬じゃん!」


「フェンリルですよっ!」


お酒を舐めてたヘブンに言い返される。


ちくしょお〜いいなぁ〜。


「ってか飲み物だけじゃなくて食べ物頼もうよ~」


テーブルに突っ伏してメニューに手を伸ばしたら、カランコロンと入り口のドアが開く音がして何気なくそちらに顔を向ける。


三人組のドワーフさん。ん?一人見た事があるような・・・じっと見てたら目が合って、毛むくじゃらの中の目が見開いた。


連れの人に声をかけてこちらに早足で近づき、直角に頭を下げる。


「先ほどは大変失礼をいたしましたっ!」


さっき??何だっけ??


頭を上げさせ声を下げさせてたナイトが「あの失礼な門番ですよ」って教えてくれる。


あぁ~!神殿の中で私を疑ってた門番の一人か!


私も良く分かったな。ドワーフの顔の見分けが大分付いてきたぞ。


「あの時は、俺も同僚もまさか神の使いが神殿にお越しになるとは思わず・・・」


まぁそうね、何の前触れも出してなかったのも悪かったね。


あ、そういえば。


「ね、あの時、執事さんがもう一人の門兵さんに何か言ってたでしょ?あれ何て言ってたの?」


めっちゃ疑ってたのに、あの後すぐ態度が変わったから気になってたんだよね。


「俺、あいや、私は直接聞いてないのでわかりませんが、あの方は以前門番をされていたそうなので、何かそんな類の事かもしれないです」


あの執事さん門番もしてたの?お城にも勤めてたって言ってたし、なかなか経歴が多様なのねぇ。


「すんません、お役に立てなくて」


「あ、いいよいいよ、ごめんね、何か引き止めちゃって」


ペコペコしながらお友達のトコに戻って行った。


さ、ご飯ご飯~!・・・おや?


「ナイト、どしたの?」


アゴに手を当てて何か考え込んでる。


「いや、ドワーフは一本気な文化なんで、一度職に着いたらよっぽどの理由が無い限り仕事を変える事はないんです。門番から王城勤め、で、今はノルグさんの使用人頭。しかも、あの状況でそれをあえて言わなかった事も気になって・・・」


「そう?でも人に言いたくない事とかもあるんじゃない?ってかお腹空いたよ~。ヘブン、何食べようか?」


テーブルの上のメニューを開く。ヘブンはお野菜だろうけど、私は異世界っぽいお肉食べたいな~でっかい骨の刺さったやつとか!


「・・・あ、そうだった」


メニューの上にはミミズが踊ってるような文字。まだこっちの言葉習ってないから読めないんだよね。


「ねぇナイト、私これ読めないから、読ん、で・・・?あれ・・・?」


え?


あれ?おかしくない?


私、神殿に向かってる途中で迷子になったよね?


でも、あの時・・・。


壊れそうな壁の行き止まりに、書いてあったよね?


『進入禁止』って。


あれ・・・?


あの文字、日本語じゃないのっ?!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ