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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
バラグルン共和国編

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エピソード 51

「違うんだぞう?あれだの、ほら、ノルグから色々聞いてのう?そういう事を色々知りたいが、神に背くつもりはないし、どうやればいいのかアルカニア王に相談してだのう・・・」


『いえね、ですから、使徒様に直接聞いてはいけぬ暗黙の掟があるので、じゃあ自分から話してくれればいいんじゃないかなぁと・・・』


オジサン二人がモジモジ。それを可愛いと思うのは一部の人だけだからな?


つまり。


歴代の緑の使徒はみ〜んな、この世界の人は誰も知らないような知識を持ってて。


でもそれを無理に聞き出そうとしたら神罰が落ちて?街が壊滅した事があるらしくて。


でもノルグさんに合金の話を聞いて、やっぱりどうしても色々聞き出したい王様ズ。


そこで、私が自分から話すように仕向けたくて、二人で口裏合わせて言い争いをしているように見せかけたって事ね。


「別に、そんな小芝居しなくてもわかる事なら答えますよ・・・いや、答えられる範囲で、かな?」


でも今までの使徒様も詳しく話してないって事だし、何もかも言っちゃうのは多分ダメって事なんだよね?


前世の事とか言っていいのかな?雷とか落ちたりしない?


「ん~・・・どこまで言ったら神様が怒るのかわかんないし、大体って感じにはなりますけど・・・緑の使徒になった時に、こことは違う世界で生きてた記憶を思い出したんです。だから、私の持ってる知識はその時に知ったり学んだりして得たものですね」


このくらいなら言っていい?ドカ~ン!ってならない??


正確に言うと、前世の記憶を思い出したから転生スキルを手に入れたんだけど。


まぁほぼ同時だから、これは別にいいか。


「あ~・・・なるほど、だから・・・」


ナイトの小さな声。


「ん?」


「あ、いえ、納得だな、と思って」


ナイトも、やっぱりなんか変だなって思ってた?


「子供っぽくないな、って?」


「や、キトル様ってたまに変な言い回しするじゃないっすか。さっきも『めもる』とか言ってたし。だから、そのせいだったんだな〜と。あとキトル様は充分子供っぽいと思いマス」


おい。それはそれで失礼だな。


チラリとヘブンを見たら、視線に気付いたヘブンが尻尾を振る。


「キトルさまは記憶力がよろしいんですねっ!」


・・・そう言われると、それだけの事な気がしてくる。


二人にとっては、私に前世の記憶があっても大した事じゃないんだね。


『つまり、歴代の使徒様にも神の国の記憶があったという事か・・・』


ん?


「いや、それならばワシはむしろ腑に落ちるぞう。神の国の知識など、安易に手を伸ばして良いものではない」


んん?


『神の領域に手を伸ばせば怒りが落ちるが、使徒様の裁量で分け与えられたものは享受してよい、と・・・代々伝えられている通りという事だな』


んんん?


前世が神の国になっちゃってるゾ?


実は私ってば前世は神の国の住民だった・・・?いやんな訳ないでしょ。


でもイチイチ訂正するのも面倒だし、ここは黙って様子見しよう。


ってかさっきから神の国とか言ってるけど、神様の名前すらさっき初めて聞いたんだけど、神の国に住んでて神の名前を知らないとか・・・あるのか?


まぁ王様の名前知らないってのもおかしくないしあり得るか。


「簡単に知識が欲しいなど、欲を出してはならぬのだな・・・」


黙ってたらなんか勝手に納得してくれた。シメシメ。


でも聞きたがってた割に諦めるの早くない?なんで?


・・・あ、私が神様が怒るとか言っちゃったからか。


『じゃあキトルは、もう前のキトルじゃないの・・・?』


あっ!ブランが、涙目でプルプルしてる!ヤバい!


「ま、前のキトルだよ!大丈夫だよ!前のキトルに、違う世界の記憶がくっついただけだよ!」


ブランが一番ショック受けてる〜!!泣かないでぇ〜!!


『じゃあ、僕の妹なのは変わらない・・・?』


「ったりまえじゃん!妹だよ!兄さんは、ずっと私の兄さんだよ!」


『そっか・・・へへっ。良かった・・・』


こっちこそ良かったよぅ。


ブラン泣かせちゃったら罪悪感ビシバシだわ。


『神の使徒と言えど、兄君には敵わぬのだなぁ〜』


王様がニヤニヤしながら言うからちょっとイラ。


ドワーフ王も髭でわかりにくいけどニヤついてない?


「じゃあ、せっかくだしどこまで言ったら神様が怒るのか試してみましょうか?」


『あ~っと!そろそろ会議の時間じゃなかったかのう!』


「そうだぞう、会議は大事だしのう!ではまたな、アルカニアの王よ!」


ぶちっ。


鏡が波打ち、ドワーフ王と私たちが映った鏡に戻った。


「・・・別にこっちだけで試してみても」


「試さなくていいぞう!抜け駆けするとアルカニアの王に悪いからのう!・・・もし試すなら、周りに何もない所でお願いするんだぞう・・・」


全く、諦めてるのか諦めてないのか・・・。





結局遅くなった晩餐会、最後の方だけ参加したら、ただの飲み会と化してたし軽くご飯だけ食べて部屋に戻ってきた。


ありゃただの呑兵衛の集まりだね。


何かしら理由を付けて飲みたいだけ、ってやつ。


緑の使徒の歓迎晩餐会で主役が居ないのに皆出来上がってるってどういうことよ、もう。


「どうします?湯浴みされるんでしたらメイド呼びましょうか?」


お酒が残ってなくてあんまり飲めなかったナイトは、お腹いっぱいでピスピス鼻を鳴らして寝てるヘブンをソファにそっと置く。


メイドさんに洗ってもらうの、気持ち良いけどまだ恥ずかしいのよね〜。


「ね、ナイトは今日の話聞いて何も思わなかった?」


「え?あぁ、八歳になったし、何かお祝いします?」


違う違う、そっちじゃない。


「も〜!他の世界の記憶があるって方だよ!何とも思わないもんなの?」


「?」って顔で首を傾げる。


「キトル様はキトル様なんじゃないっすか?俺が知ってるキトル様はもう今のキトル様だし・・・」


・・・まぁ、それは確かに。


会った時はもう前世の記憶あったしね。


「ナイトがいいなら別にいいんだけどぉ。子供なのに、大人の記憶があるのってなんか嫌かな〜って心配してたからさ!」


「えっ?!」


えっ?!何にビックリしたの?!


「大人の記憶があってコレなんすか?!」


「・・・コレって、何よ」


「あ、いえ、何でも無いっす」


おい、目を逸らすんじゃない。


でもナイトの中では前世の記憶も知識も、私が私なら別にどっちでもいいんだね。


「ウォフッ」


ヘブンがソファの上で手足を動かしながら小さな声で寝ぼけ吠えをする。


ふふっ。そうだね、ヘブンも。


前世の記憶があるなんて、どう思われるのかなってちょっと不安だったんだ。ちょっとだけね。


でも全然気にしないみたいだし、良かった!


安心した〜!!


「それはそうと、お祝いは気になるからして欲しい!!」


んふふ。この世界で誕生日のお祝い、してもらった事ないんだもん。


初めてのお祝い、してもらおうじゃないの〜!

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