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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
バラグルン共和国編

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エピソード 41

「へぇ~じゃあ、バラグルンの王様はノルグさんのお兄さんなんですね」


「そうだぞい。とは言え、ワシは十番目だから一番目の兄とはほとんど接点がなかったが」


休憩を終えて、グラウ・・・いや、グラント?って街まで歩きながら、ノルグさんに話を聞く。


ノルグさんのお家は偉い人の家系だったらしい。


「うちの国は共和国だからの。王の家系とは言え、国民に選ばれなんだらすぐに王は変わる。良い政治をし続けなきゃ王は務まらないんだぞい」


へぇ~。世襲制じゃないんだね。それはそれでメリットもデメリットもあるんだろうな。


「ドワーフって子沢山っすよね~ノルグさんも十番目って」


ナイトが歩きながら腰を折り、ノルグさんと同じ目線で話しかける。


「ワシの下にも十人おるぞい。ワシはちょうど真ん中だの」


「え~っ?!二十人?!すっご!」


お母さん大変だね!


「ドワーフは女があまり生まれなんだ。だから男ばっかり沢山生まれるんだぞい」


「・・・え?男ばっかり二十人・・・?!」


もう想像するのが男子校の運動部みたいな光景なんだけど・・・。


「すごく大きなお家だったんですね・・・」


「ふん?」


ノルグさんの顔はわからないけど、首を傾げられてる。


「・・・キトル様、ドワーフの寿命は人間の倍以上ありますから、多分二十人が一気に生まれ育ったんじゃないと思いますよ」


「あっ・・・な~るほど、ね!」


つまり、下の子が生まれる頃には上の子は独り立ちしてるような感じなのか。


でも、それでも大変だよねぇ。


「女の人は少ないんですね」


「そうだの。結婚できるのは一握りの男だけだから、みんな仕事と酒に生きるんだぞい」


「へぇ~職人!って感じがしますねぇ~!」


ヘブンもノルグさんの話に興味津々。


「ヘブンは前の使徒様とバラグルンには行ってないの?」


「ワタクシは一緒に行ってないですねぇ。それにワタクシまだ子供だったので、最初にお会いした時の事もうろ覚えなのですよ~」


そっか~確かに手記では最初に行ってたし、そのあとは行かなかったんだね。


「ほれ、そろそろグラントまで半分くらいだぞい。あの岩の下で今日は寝るから、準備を・・・」


ノルグさんが話してる途中で上を見上げた。


ん?どうした?同じように上を見上げる。


「・・・ぁぁぁぁぁぁぁああああああ」


黒い点が叫び声をあげながら落ちてくる。


人だっ!


両手を前に出し、大きな大きな大きな葉っぱを想像する。


「ナイト!勢いを出来るだけ殺して落とすから、ヘブンと落下地点に行って!」


「はいっ!ヘブン!」


「乗ってくださいっ!」


一枚、二枚、三枚・・・落ちてくるであろう場所に大きな葉っぱを重ねる。


出来るだけ柔らかく、跳ねるような弾力のあるやつ!


葉っぱが大きくなりきる前に、ボヨ~ンと一番上の葉っぱが揺れる。


一つ、二つ跳ねると、またその下の葉っぱでボヨンボヨン。


最終的に地上の岩の上に落ちた時には、ナイト達の助けはいらないくらいの速度になって、二人の目の前に落ちた。


「あいたっ!」


「「・・・」」


落ちてきた人を何とも言えない顔で見つめるナイトとヘブン。まぁそうなるよね・・・。


私とノルグさんが駆け付けると、落ちてきた人は体勢を整えて座り込んでいた。


「・・・なんで空から落ちてきたんだぞい?」


「あいたたた・・・あれっ?!ノルグさん、ですよねぇ?」


この高めの声と後ろで結んだ三つ編みに髭のない顔・・・。


「ドワーフの、女の人?!」


「あえ?あ、そうですぅ~」


「お前さん、どこの集落の娘っ子だぁ?」


あれ、女の人はノルグさんの事知ってるみたいだったけどノルグさんの方は知らない感じ?


「南の、エルドンの三番目の娘ですよぅ。三十年位前に一度だけお会いしてるんですけどぉ、忘れちゃってますよねぇ?」


「ん?エルドンのとこの?・・・あぁ!あの娘っ子かぁ!けんども、あの娘っ子はもう東のタルゴんところに嫁に行ったんじゃなかったんか?」


南やら東やらややこしいな。そしてそんなに顔見知りばっかりなのか。


「あ~・・・ちょっと、事情がありましてぇ・・・」


あら、何か言いにくそう。


「それに、なんで空から落ちてくるんだ?どっかの鳥の魔獣にでも食われかけたんか?」


た、食べられそうだったってそんなに軽く言う事なのかしら?


しかも、この女の人の後ろにある機械の破片や部品・・・。これって。


「もしかして飛ぼうとしてたんですか?」


二人が同時にこっちを向く。


「空なんて飛べる訳がないんd」


「なんでわかったのっ?!」


女の人に肩をガッシと掴まれる。ナイトとヘブンも、相手が女性で悪意もなさそうだから戸惑ってる。


「え、だってその羽っぽいのとか、アルミっぽい素材で軽そうだし・・・」


「アルミっ?!これアルミって名前があるの?!」


勢いのまま肩をガックンガックン揺らされる。


ええええええ何なのこの人ぉぉぉぉぉ。





「ごめんなさい、取り乱しちゃったわねぇ」


ドワーフの落下女性はグリンベルダさんと言うらしい。ドワーフの美的感覚はよくわからないけど、まつげも長くてぱっちり二重が可愛らしい。多分結構年上だろうけど。


上からだろうが下からだろうが来ちゃったもんは仕方ない。


その辺に放り出すわけにもいかないので、また簡易ツリーハウスを作って一晩ご一緒する事にした。


そのグリンベルダさんの話では・・・

ドワーフの気質を色濃く受け継ぎ、物作りや発明の道に進みたかったグリンベルダさん。

でも女性が少ないドワーフとしては女は子を沢山残すのが役目!と結婚して子をもうける事を強要された。

で、結婚前に家を飛び出し、砂漠に一人暮らししながら発明を続けていた、という流れらしい。


「しかしなんで空なんて飛ぼうと思ったんだぞい?」


「昔連れて行かれたドラム=カズンの神殿で、こっそり奥に入って見た壁画に空を飛ぶ人の絵が描かれていたんですぅ」


壁画?前の前の使徒様が描いたっていうアレか?


「で、一人で色々作ろうと思っても材料が何もないし、捨てられていたザルクのトゲを集めて生成したらすごく軽い金属が出来上がったので、これだ!って思ってぇ・・・。月のように軽くて白いし、魔力をよく通すからあたしはルナメタルって呼んでたんだけど、アルミって名前があったのねぇ」


アルミもこの世界で立派な名前つけてもらったのね・・・。じゃなくて。


「トゲもそんなに色々使えるんですね」


「使えないぞい」


ノルグさんがキッパリバッサリ。


「お前さんが考えるようにトゲも何かに使えないか、歴代のドワーフたちが考えて来たんだぞい。ただ、あれは柔らかすぎて熱に弱い。武器や道具に向いてないから、トゲのまま矢じりにするくらいしか使い道はないんだぞい」


腕を組んで当然のように言い切る。あれ?でも・・・


「あれがホントにアルミなら、他の金属と混ぜると確かかなり強くなりますよね?あと低温に強いはずだから寒い地方とかで重宝するだろうし、毒性がないから食品の保管にも使えたり、軽いからそれこそ飛行部品にも使えたはずだし・・・」


失敗した。


みんなの目が「なんでお前そんなこと知ってるんだ」って言ってる・・・。


「・・・って前の使徒様の手記に書いてあった気がするんですけど・・・」


セレナさん、ごめんよ・・・お名前、貸してもらおうじゃないの~!

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