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エピソード 40

あっつう~い・・・


「あつぅ~い・・・」


「暑いですねぇ・・・」


ヘブンは毛が黒いから余計に暑いだろうねぇ・・・。


「ほら二人とも、ちゃんと歩いてくださいよ」


鎧?装備品?とかで一番身に着けてるものが多いはずのナイトが一番涼しそうなのは何故なんだい・・・?


王都を出た後、豊かな緑を横目にヘブンに走り続けもらって、三日で一気に国境まで来た。


無理させてないか心配で、リクエストされたフルーツを毎日作ってあげてたら、前の日よりも元気になってどんどん走ってくれた。


夜?夜はもちろん野宿。


って言っても、その辺に大きな大きな木を生やして、枝を伸ばしてツリーハウスを作ってたから、正確には野宿じゃないかも。


ちなみに中はフカフカの葉っぱのベッドに根から地中の水分を汲み上げたぬるめのお風呂、甘い樹液が出てくる蛇口まで着いた快適仕様。


ナイトも「もう傭兵には戻れないっす・・・」って言うくらいだし、なかなか良い感じだったみたい。


ツリーハウスはそのままにしてきたから、旅人とかの無料の宿的な感じになってくれたらいいな~。


で、思ってたよりも早く国境を越えてバラグルン共和国に入ったのはいいんだけど・・・


「なんでこんなに気候が違うのぉ~?」


国境を越えた途端に、とんでもなく暑い!!


ずっと続いてる道を歩いてだけなのに、ポカポカ陽気の草道が灼熱でゴツゴツした道になってたし!


セレナさんが書いていた通り、砂の国なのに岩ばっかりで照り返された日差しが暑いし、湿度も高いせいでムワッとした熱気で汗が止まらない。


「大陸の形覚えてます?あの右下の部分がバラグルン共和国なんですけど、南東から吹く熱風をこの国が受け止める形をしてるんで、その分アルカニアは過ごしやすい気候になってるらしいっすよ」


「そっか~・・・つまり暑いのね・・・」


「ワタクシ、毛皮があるから余計に暑いですねぇ・・・」


「あれ?二人とも常春バングル付けてないんすか?」


ナイトが袖をめくって手首を見せると模様の入ったシルバーの腕輪がある。


「え・・・?何だっけそれ」


「王都で買ったじゃないっすか!ドレスの店の、次の次くらいの店で!そりゃ付けてないと暑いっすよ」


ナイトの声を聞きながら魔法バッグの中に手を突っ込む。常春バングル、とこは・・・あった、これだ!


手首に付けると、スルル・・・と私の手首にちょうどいいサイズに縮み、全身をひんやりとした空気が包み込む。


「うっ・・・わぁ~・・・!なにこれぇ・・・!こんなのあるなら早く言ってよ~!!」


「いや一緒に買ったじゃないっすか・・・」


「キトルさまぁ~ワタクシのもぉ~」


ヘブンの分も探し出し、右足に付けてあげる。


「はぁ~・・・生き返りましたぁ・・・人間は便利な物作るんですねぇ」


「ちょうどいいや、休憩しよっか!のども乾いたし」


とその場に座り込もうとすると、ナイトが腕をガシッと掴んだ。


「いたぁ!何?!」


「キトル様、忘れてるんすかっ?!」


ナイトの目線を追うと、私が座ろうとした場所や歩いてきた道にも、コロンと丸っこい小さなサボテンが生えている。


「あ~・・・そうだった・・・」


ザルク、だっけ?この国ではモーリュ草じゃなく何故かこれが生えるんだよね。


仕方なく手を出して座りやすそうな木を生やし、さらに上に伸ばして大きな葉っぱを作って日陰を作り出す。


簡易的なパラソルチェアの出っ来上がりぃ~!


ついでにパラソルの柱に巻きつくように生やしたキュウリ(うす塩味)のサービス付き。


「はぁ~生き返るぅ~!」


バリボリときゅうりをかじって、塩分と水分を補給する。


「何というか・・・これ・・・癖になるっすね・・・」


あら、ナイトも結構気に入ったのね。

食いしん坊のヘブンは・・・言わずもがな。


「ここからグラウンドって街まではどのくらいあるの?」


「グラントっす。何年か前に一度だけ行った事あるんすけど、確か二、三日で」


「二日もあれば着くぞい」


私とナイトの間に、ニョキッと生えた黒い毛が喋った。


「うわぁ!!!何っ?!?!」


ナイトが素早く私の前に立ち、剣を構えている。


ヘブンは・・・反応してない。


「その人、さっきからいましたよぉ~?悪意はなさそうだし、多分キトルさまより弱いから大丈夫ですよっ!」


むしゃむしゃときゅうりを食べるのをやめないヘブン。


「ドワーフ、だよな?」


ナイトが尋ねると、コクリとうなづく。


「アルカニアの王様からうちの王様に連絡があってなぁ。多分うちの街を目指してるっつうから、お迎えに来たんだぞい」


ふん!と胸?を張っている。


いや、悪意はないにしても、もうちょっと登場の仕方ってもんがさぁ・・・。




「こらうめぇな。酒にも合いそうだ」


パラソルチェアをもう一個作ってあげたら、きゅうりがお気に召したみたい。


黒い毛はノルグさん、という名前のドワーフで、よく見るとちゃんと洋服も着てるし顔もある。


ただ、長く伸びた髪の毛が髭と一体化してて、薄目で見たら完全に黒い毛玉。いや丸くないから黒い毛の棒?


背の高さは七歳の私と変わらないくらいだから、ずんぐりむっくりしててイメージ通りのドワーフなんだけど・・・


「ドワーフの人ってお髭を三つ編みにするって聞いたんですけど、ノルグさんはしないんですね」


「あぁ、仕事と酒を飲むときはちゃんとするぞい。だが、最近はザルクが育たないからなぁ」


「ザルク?」


「あぁ。大きくなるとその兄さんよりデカくなるサボテンなんだが、そいつが生えないと金属も取れねぇんだ」


「金属が?」


「おぉ?知らねぇのか?ザルクってのはな、根っこが固~くて長~く伸びるから、ほれ、こんな岩も簡単に粉々に砕いて、地面のず~っと下にある水と一緒に金属の元になる栄養を吸い上げちまうんだぞい。んで、金属を含んだデカいザルクが一本あれば剣が十振りは作れるし、その皮は防具になるし、花からは酒が出来るんだぞい」


ぞいぞい言ってるのが気になるけど、ザルクってそんな万能なサボテンだったの?


「それにこの国は砂漠の国だから食い物も砂に出来るのばっかりなんだが、最近はザルクが生えなくなっちまって・・・。たま~に生えても、細っこくて中がスカスカのやつでなぁ。そのせいで、この辺も岩ばっかりになっちまった。あんたさんが本当に緑の使徒様なら、ザルクを生やしてくれるんじゃねぇかとみんな期待してるんだが・・・」


「ザルクって、これですよね?」


私の後ろに点々と生えてる丸っこいサボテンを指さす。


黒い毛の中に目玉が浮かび上がる。いや、目を見開いたのか?


「これだい!!これがザルクだぞい!!・・・まだ小さいが、あんたさんホントに緑の使徒様だったんだなぁ・・・!」


ま~見た目はお子様だしねぇ。そして何故かナイトとヘブンが嬉しそう。


「使徒としての役割を果たせば国中にザルクを生やせるのかもしれないので、まずはドラム=カズンまで続く地下道だっけ?そこまで案内してもらえませんか?」


「もちろんだぞい!王様にも頼まれてたし、あんたさんが国を救ってくれるなら、協力しないわけがない!グラントの街主として、立派にお役目を果たすぞい!!」


がいしゅ?


ちら、とナイトを見ると「領主みたいなもんです」と教えてくれた。


・・・えぇ~っ?!ノルグさん、そんな偉い人だったのぉ?!


その辺お散歩するみたいに来ちゃダメなんじゃないの~?!

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