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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
アルカニア王国編

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エピソード 36

「んぐんぐ・・・んじゃあ、もぐもぐ・・・姉ちゃんは・・・ゴクン!緑の使い手様なんだ?!」


お兄ちゃん、名前はテオルガ、というらしいのだが、野苺で口の周り真っ赤。


「もぐもぐもぐもぐ・・・ごっくん!あたし、緑の使い手様って初めて見た!」


妹ちゃんの方はミトリア、同じく真っ赤なお口周り。


「そりゃ初めて見ただろうよ・・・」


とナイトは呆れ顔で口に野苺を放り込む。


「キトルさまっ!コレ、もっと作れますかぁっ?!」


ヘブン、なんで君は毎回お口の周りが真っ赤になるのかな?


みんなでお腹いっぱい食べたあと、テオくんとミトちゃんが持って来てた木のカゴに野苺を沢山摘んで、二人の両親の家まで送って行くことにした。


ヘブンの背中に乗せてあげると、キャッキャと大喜びしてる。


「可愛いねぇ〜」


「キトル様、親戚のおばちゃんみたいっすよ」


なんだとぅ?さっきのパパ呼ばわりした仕返しか?


柵で囲まれた村っぽい集落が見えてくると、その入り口には人だかり。


もしかして二人を探してるのかな?


「父ちゃ〜ん!」「母ちゃ〜ん!」


二人が手を振ると、人だかりの中から両親らしき男女が走ってきた。


「テオルガ!ミトリア!」


ヘブンの背から降りた二人と抱き合う、感動的なシーン・・・と思ったら。


子供二人を後ろに追いやり、両親二人はスライディング土下座!


は?え、コレ何?


「子供達の代わりに私が!」


「妻は子供を育てる役目があるので、俺が!」


何の話してるの?


「・・・多分、強い魔物を使役した盗賊とか奴隷狩りとか、そういうのだと思われてるんじゃないすかね」


ん?じゃあアレか?私は盗賊の姉御だと思われてるのか?


どうしたもんかと思案してる間に、ナイトがさっさと事情を説明し始めた。


ちょっと姉御感出してみようかと思ってたのに〜。


「そのお嬢ちゃんが緑の使い手様?!ウ、ウチの子らが、大変なご迷惑を・・・!」


結局普通に土下座しちゃってるし。趣味か?


「あ〜いいですいいです。その子達、もうウチの従者に叱られてるんで、程々に叱って程々に褒めてあげてください。あ!お母さんお誕生日おめでとうございます!」


「は、はい!ありがとうございますっ!」


子供達がニコニコでカゴを渡すと、一粒野苺食べて「!!」って顔してる。


あ、そうだ、せっかくだしついでに。


「実はこの辺で、ちょっと探し物してまして・・・変わった形の、こう、花みたいな石って見た事ありませんか?」


「花?っつったらアレか?あの、森ん中にある・・・」


「ありゃ花っつうより葉っぱの形じゃねぇか?」


「花だよ!」「花の形だよ!」


後ろにいる村人達も一緒になって、色んな所から声が上がる。


とにかくそれっぽい形した石があるのね!


それだけでも有力な情報だ。


「どこにあるんですか?!」


「森ん中だけど、結構奥に入って行った所でなぁ・・・案内してやりてぇが、あそこは今でっかいヘビの縄張りになってるから危険なんだ。悪ぃ事は言わねぇからやめときな」


「あ、大丈夫大丈夫。そのヘビ、さっきご飯あげたら帰ってったから」


村人達の目が一斉に見開かれる。


「凄かったんだぜ〜!」「目の前で見ちゃったもんね〜!」


ドヤるテオくんとミトちゃんが、お母さんにポコポコと頭を叩かれた。




「この道を真っ直ぐ進んだ所に前まではあったんですけど、ヘビが現れてからは誰も立ち入らなくなっちゃって・・・今もあるかどうかはわかりませんが」


さっき子供達を助けた森の入り口、まぁ森って言っても枯れ木の森なんだけど、そこまで村人達に案内してもらった。


「ここからどのくらい真っ直ぐ行った所ですか?」


「多分、大人の足で一時間もかからないくらいですかねぇ・・・枯れ木とか動物も出るんで、歩きにくいですし」


まぁそりゃそうか。


「じゃあ、行ってき」


「うわぁ〜!」「で、出たぁっ!!」


村人達が見上げた方を見ると、さっきの大蛇が枝に絡みついてる。


「あら、さっきのネズミクチちゃん」


「ネズカグチです」


「そうそうそれそれ」


ネズカグチは口からチロチロと真っ赤な舌を出しながら、綺麗な黄色のお目目でこっちを見てる。


「ヘブン、何て言ってるの?」


「森に用があるなら案内しますよ〜って言ってます!」


「わ!助かる!お花の形をした石を探してるんだけど、わかる?」


ネズカグチの黄色のお目目が細くなる。


ヘビってまぶたが無いって聞いた事あるんだけど、魔物だし関係無いのかな?


地面に降りて来たネズカグチが、シュルシュルと移動し始める。


「大丈夫なんですか・・・?魔物だし、騙されて喰われたりとか・・・」


テオミトのお母さんが心配してくれる。


「大丈夫っすよ。あの人、多分ドラゴンにも勝てるんで」


ナイト、そのやたらとドラゴンと戦わせようとするの、何なのさ。


ナイトを無視して、森に入った。


木々が枯れてるからか、日差しが注がれてて森の中とはいえ意外と明るい。


ネズカグチは枝や石ころがない歩きやすい道を選んでくれてるのか、それほど疲れずに歩けてる。


「キトルさま、途中で自分の卵も紹介したいって言ってますけど、どうしますかぁ?」


「ん〜・・・それは別にいいかな・・・」


「あ〜あ、ネズカグチしょんぼりしてるじゃないっすか〜」


と、どうでもいい会話を繰り広げながら歩く事約一時間。


自分でも不思議なんだけど、向かっている方向に、ナニかがあるのがわかる。


「すごい。確かに、こっちにあるのがわかる。何だろ・・・早くそこに行かなきゃ、って感じがする・・・」


「あ〜漏れそうで便所探してる時みたいな感じっすか」


「・・・嫌な例えしないでくれる?」


足が自然と止まる。


「この辺だと思うんだけど。どこだろう?」


「・・・キトル様、多分、コレっすね」


ナイトが手を付いた。


大きな石・・・もとい、岩に。


・・・いや、岩じゃん!!!


デカいって!!石と岩の違いなんて知らないけどさ!


直径三メートル以上はあるでしょ?!


こんなにデカいと、石とは言わないんじゃないかなぁ?!


心の中で激しくツッコミ続けて、ため息を吐いた。


「岩だね」「岩っすね」「コレは岩ですねぇ」


なんで村人達もみんな石って言ってたんだ?


ネズカグチがシュルシュル鳴いた。


「ん?そうなんですか?」


ヘブンが何か聞いてる。


「これ、前より大きくなってるそうですよっ!」


大きくなってる?成長する石、なのか?


よくわからないけど、そんな不思議石なら、多分間違いないんだろう。


「よし、とりあえず書いてあった通りにやってみるか!」


近付いて、岩に両手を付く。


近づくと余計わかりにくいけど、確かに花の形をしてるっぽい。


今手を付いてるのは、アルカニア王国の辺りかな?


ん?どっちが北だ?


あ、そうだ。


「ナイト、ヘブン。気をつけるけど、もしかしたらまた寝ちゃうかもしれないから、その時は連れて帰ってね!」


「はっ?!何で今言うんすかっ!」


「わかりましたっ!ワタクシに任せてくださいっ」


ふははは!先に言ったらナイトは反対するからさ!


さて、いっちょやってみようじゃないの!

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