エピソード 34
『私の従者が書け書けうるさいので、記録を残します。
他の人に読まれたくないから日本語で書くけど、次の人が日本語わからなかったらどうしよ~笑
っていうか記録とか書き方わかんないし、友達と回してた手紙みたいな感じで書きま~っす☆
いきなり転生スキルをもらってビックリしたと思うけど、あたしもビックリしたから大丈夫!
出来るだけ色々書いていくから、ちょっとでも助けになるといいな~』
前の使徒様、とっても明るい女の子だったご様子。
今、私は王城の中の禁書庫に一人でいる。
とっても広い禁書庫の中には危険な魔法に関する本や王族の秘密?が載ってる本とかがあるらしく、最初は王様が一緒に付いてきた。
私この世界の文字習ってないから読めないんだけど、念のため、ね。
禁書庫の中は内容が内容だけに整理されておらず、どこに何があるのかわからない状態。
とりあえず以前王様が前の使徒様が書いた手記っぽいやつを見たっていう場所を探してたら、色褪せて黄ばんだノートの表紙に前世で慣れ親しんだ文字を発見!
王様には読めないらしくて「やはり神の言語か・・・」とか言ってたけど、『前世のスキルを持った女の子専用♡男の子は読んじゃダメよ♡』の説明が面倒で、王様の独り言は放置。
で、結局、私にはその手記しか読めないことが確認出来たから、男の子の王様には退室してもらって、一人で読み漁り始めたってわけよ。
『あたしの従者はアイスエルフのエルヴァン。
世界会議の為に来てたフロストリアの王の護衛で、実は王弟殿下ってあとから知ったんだけどね。
見た目はカッコよくて頼れるお兄ちゃんなのに、喋るとおばちゃんみたいにうるさい。
次の子の従者さんはどんな子なのかな~』
探偵力と突っ込み力の高い傭兵です、先輩。
フロストリア。確か、花の大陸の一番上の花びらの国だよね。
極寒の雪や氷の国で、アイスエルフって言う種族が治めてるって言ってたな。
傭兵業で色んな国に行ってるナイトも、この国には行った事がないって言ってたっけ。
『これって最初っから書いた方がいい感じ?
あたしは女子高生だった事までしか記憶にないんだけど、みんなそうなのかな?』
いえ、人嫌いの在宅ワークOLでした~。
『今のあたしは子爵家の十三歳で、名前はセレナ・ル・ナイツレイ。
パパの仕事に付いて来た王城で池に落ちて、スキルゲット。
その時に助けてもらったのがエルヴァンとの出会い。』
水被ったらスキル貰えるのかしら・・・たまたまかな?
『で、植物が育たないから話し合おうって世界会議が開かれてたのに、あたしがスキルゲットした途端に自分たちの国に来いって喧嘩始まっちゃって、ムカついたからお城草ボーボーにして逃げちゃった!笑
とりあえずアルカニアから離れようと思ってバラグルンに向かってる途中で、これを書き始めてま~す。
思い出したら出来るだけ書くようにするね~ん』
セレナさん、なかなか豪快なお人だね。好感度高いな。
ページをめくると、別の日みたい。
『首都のドラム=カズンに到着~。
ドワーフのオジサンたちいつも酔っぱらっててオモロいんだけど、ヒゲが三つ編みなのだけは生理的に受け付けないぃぃぃ
バラグルン超暑い!
砂漠の国って習ったけど、石場しかない。
照り返しで超日焼けしそう!
SPF50の日焼け止めプリーズ!』
あぁ、そういえば王様が言ってたな。砂の国バラグルンって。暑いのか~。
『アルカニアでは歩くとモーリ草が生えてきてたけど、バラグルンではザルクってサボテンが生えてくるから気付かずに踏んだら痛いし気を付けてね!
あと、バラグルンに入った所にグラントって街があるから、そこに行ったら地下道でドラム=カズンまで行けるよ。
これからドワーフの人たちと歓迎会があるらしいので、また覚えてたら書きま~す。』
またページをめくる。
と、大きな文字が目に飛び込んできた。
『大スクープ!!
多分、ここに来たらわかると思うけど、もし壁画が消えてたら、ハルセリア大陸の形の石を探して!』
ハルセリア大陸?あぁ、この大陸の事か。
大陸の形って事は、お花の形って事?
『多分セイクリッド山に近い場所にあると思う。
これを読んでくれてる時にどうなってるのかわかんないけど、セイクリッド山に近い場所にハルセリア大陸の形をした石があるんだって!
これ、五つの国の全部にあるっぽい。
その石を触ったまま思いっきり力を出すと、その国全体が芽吹くって!
もうどこもかしこも全部歩いて回んなきゃいけないのかと思ってたから、良かった~!』
なんですと?
つまり、その石がある場所に行けば、その国は歩き回らなくても豊かに出来るって事だよね。
これはかなり重要な情報なのでは?
でも、なんでこんな重要な事、王様も知らないんだろう?
『ここから書くことは、私の前の緑の使徒になった人がドラム=カズンの地下通路の奥の神殿に壁画として残してたんだけど、やっぱり日本語だったし、これは従者にも秘密にしてね。
世界が痩せてくるとその石がだんだん姿を現してくるから、もし今これを読んでる時に世界が豊かなら、見つけられないと思う。
その石は国の地脈に繋がってて、その地脈を通してその土地を豊かにする植物を生やすんだけど、その国を壊そうと思えばその地脈を通して出来ちゃうんだって。
だから、緑の使徒にしか扱う事が出来ない、って思わせるためにも、その石に力を注いだ後はその石を草とかでぐるぐる巻きにして隠しておいてね!』
はは〜ん?悪い奴が狙うって事だな?
というか前の使徒様のさらに前って、千年くらい前って事だよね?
壁画が残ってたんだ・・・まだあるかなぁ〜私も見てみたい。
『バラグルンでは、ドラム=カズンの壁画のある地下道から出て、セイクリッド山に向かって真っ直ぐ一日くらい歩いた場所にあったよ!
近付いたらスキルの力で、何となくわかると思う。
でも、初めて力を石に込める時は気を付けて!
一気に全力を注ぎこむと、しばらく意識がなくなっちゃうよ!←超大事!
スキルが上がって植物が操れるようにはなるけど、エルヴァン激おこだった笑
じゃあ、国王陛下から連絡が来たし、これからアルカニアに戻って向こうでも花の形の石を探すから、また思い出した時に書きま〜す!』
すごい・・・読みに来て良かった!
スキルアップの事もやっぱり書いてあったね。それに・・・
この石を見つければ、目に見える場所だけじゃなくその国全体を癒せるんだ!
バラグルンは壁画のある場所から山に向かって一日歩いた所ら辺・・・覚えておかなきゃ。
今いるアルカニアではどこにあるんだろう・・・
早く行けば、それだけみんなが早く楽になるんだ。
逸る気持ちを抑え、ドキドキしながらページをめくる。
パラリ。
と、ページ一枚を使って大きく描かれた・・・ハートマーク。
『ヤバ~い!!超かっこいいんですけどぉ~?!王太子!だいいちおうじさまっ!!
名前聞くの忘れちゃった~!!王様謝ってたし別にいいよ~ってやってたら、横に!!
超イッケメェン!!!
もう心臓止まるかと思ったんだけど、目が合った時に止まっちゃったかもっ?!笑
明日はエルヴァンと石探しに行く予定だったんだけど、王子も来ないかな~
ちょっと明日の洋服決めて寝るから、今日はここまでっ!
あ~夢に出て来て欲しすぎるぅ~!』
・・・ご丁寧に、少女漫画風の王子様の絵も描いてある。
っていうか、手記、これが最後のページなんだけど。
セレナさぁん?!
これはちょっとあんまりなんじゃないのぉっ?!




