エピソード 30
「と言うわけで、陛下、ブラン君はワシの家に来る事になりましたので」
「何が、と言うわけで、なんだっ?!」
王様声大き~い。
あの後、使いの人が呼びに来たから、謁見の間?みたいな王様が王座に座ってる場所に来たのだ。
映画のセットみたいだぁ〜。
広〜い場所なのに知らない貴族の人とかがいないのは、多分私とかブランに気を使ってくれたんだろう。
王様は玉座に、私とブランと宰相さんは玉座に続く階段の下に立っている。
ナイトとヘブンは少し離れて後ろの方。お仕事を終わらせたのか公爵様も一緒にいる。
ただ、ブランはガッチガチに緊張してて話せなさそうだけど・・・。
そして今。宰相さんが説明もぶっ飛ばして結論だけ言うもんだから王様オコオコ。
他に人がいないからか、かなりラフな感じでしゃべってる。
仕方なく、超〜めんどくさそうに説明する宰相さん。
って言っても、私が帰ってくるまで宰相さんのお家で保護してもらうってだけなんだけど。
「全く・・・最初っからそう言えば良いものを・・・」
ホントにねぇ?
「キトル様はそれで良いのか?」
「兄さんがそう決めたならいいと思います。それに、レオンおじいちゃんは私の兄だから、とは言いませんでした。だから任せられると思います」
王様が驚いた顔してる。
「貴様、キトル様におじいちゃんなどと呼ばせておるのか・・・」
あ、そっち?
「おじいちゃんの座は譲りませぬぞ」
何の話をしてるんだ。
ゴホン。王様が軽く咳払いをして続ける。
「キトル様と兄君。この国に限らず、緑の使徒様との繋がりを作りたい者や、自分の私利私欲の為に力を使わせたいと思う者は貴族や平民に限らず多い。兄君を捕えてしまえば、キトル様を良いように使えると思う者は少なからずいるであろう。そのような輩から守る為にも、宰相は確かに適任と言えよう」
「ワシならば不正や買収、派閥などとも無縁ですからな。大国の宰相ですので、警備や警護もその辺の貴族の比ではありませぬ。安心してくだされ」
その辺の貴族ってなんだ。
でも確かに、ブランの安全の為には宰相さんのお家に行ってもらうのが一番かもしれない。
「レオンおじいちゃん、兄さんをよろしくお願いします」
頭を下げる。
「うんうん。・・・キトル様も、使命を果たされた後はブラン君と一緒にワシの家にきt」
「今はまだ考えられませんので」
に~っこり笑ってお断りする。
まずは、目の前の事から片づけていかないとね!
「では王様、前の使徒様が書かれ」
「キトル様?」
後ろからナイトの声に遮られる。
「ん?どうしたのだ?」
「あ、いえ、それよりやはり前の使徒様の文献をはいけ」
「キトル様、パール様から言われてましたよね?王都に着いたら一番にそこに向かえ、と」
・・・くそぅ、覚えてたか・・・。
「おぉ、そうだった。色々あって忘れていたな。どうだ?ついでにブラン殿の服なども一緒に揃えようか」
「はっ!」
ブラン、名前を呼ばれて意識が戻ってきたね。
「え、い、いえ、僕、王都で買い物するほどのお金なんて持ってま」
「ブラン君の物はワシが買うのじゃ~!」
うぉぉぉぉぉと騒ぐ老人。もとい宰相。
この人厳しくて偉い人なんじゃなかったっけ?
「レオンハルト殿、その変わり身はどうにかなりませんか・・・」
公爵様と王様のため息が広間に響いた。
おぉ~。面倒だったけど、王都の街中まで来ると、これはこれでテンション上がるなぁ。
昨日は流石に遅いからって公爵家のタウンハウスにお泊まりさせてもらって、今日は丸一日買い物の予定。
宰相さんと公爵様も来ようとしたけど王様に怒られ、一緒に王都に来た公爵様の騎士さん数名が護衛として来ることになった。
とはいっても、大所帯でウロウロしてたら目立つから、離れて後ろをついてくる感じ。
公爵様と宰相さんと王様で、自分がお金を出す!って言い争ってたけど、結局私の洋服は公爵家、ブランの物は宰相さん、それ以外は王様、って形でまとまった。
お金は全部ナイト預かり。
「こんな大金持ったことないっす・・・」
って震えてたけど、どのお金がいくらかなんてわかんないもん。仕方ないよね~。
王都の繁華街は、雰囲気的には中世ヨーロッパ的な?
現代のヨーロッパもよくは知らないけど、石畳の道、レンガや木でできた家が並ぶ街並み、歩く人たちの服装や活気溢れるお店も、ファンタジーって感じで・・・ん~!イイネ!
「ねぇ、ナイト!小腹空いたし、何か食べたい!」
「いいですね!ワタクシも食べたいですっ!」
腕の中のヘブンもはしゃいで足をばたつかせてる。
「はいはい、あんなに嫌がってたのに楽しそうっすね~」
「いいでしょ!どうせなら楽しい方が!ね?兄さん!」
「えっ?!何か言った?!」
ブランも初めての王都で、キョロキョロしてる。
「兄さんは王都に着いてからブラブラしたりしなかったの?」
「乗せてくれた商人さんに、ブランって名前の子を探してるって教えてもらったから、すぐ王城に向かったんだ。そのあとはずっと王城に居たから、こんな、こんなお店がいっぱいの場所歩くの、初めてだよ・・・」
喋りながらも目線はずっと動いてて、楽しさと喜びが伝わってくる。
「んふふ~。兄さん、楽しいねっ!」
「うん・・・うん、すごいや。僕が、父さんや母さんから離れて、こんな所を好きに歩いてるなんて・・・まだ信じられないよ。キトル、ありがとう」
「・・・よし、ブランさん、食いもんは俺が出すんで、好きなもん言ってください!」
あらヤダ、ナイトってば太っ腹ぁ~。
「え、でもそんな」
「いいのいいの、ナイトが出すって言ってるんだもん、お腹はち切れるまで食べちゃおう!」
「・・・キトル様、屋台のやつにしてくださいねぇ~・・・」
せっかくだもんね!王都観光、しちゃおうじゃないの!




